エロゲ会社が「株式会社」である意味を話していたら…エロゲ業界の闇サイクルの話に!?
まだまだ暑さが厳しい日々が続いておりますが、皆さんお元気でしょうか?
ごきげんよう! (株)ネクストンのまついさんです。
コラムネタないかなぁ…というところでいいネタありましたので今日はそちらを語ろうと思います。
1、エロゲ会社って上場しないの?
2、最近のエロゲ市場やタイトル本数が少ない理由は?
こちらの2点を語っていきますね!
▲8月は画像の『アマナツ+』(あざらしそふと)に加え、『戦国†恋姫BRAVE壱 ~四国の鬼若子、長曾我部編~』(BaseSon)と『光翼戦姫エクスティアコンチェルト4』(Lusterise)と『きら☆かの』(あざらしそふと × Lump of Sugar)の4作品が同時発売!! 統括プロデューサーのまついさん氏は目の回る忙しさだ
1、エロゲ会社って上場しないの?
①上場とは?
弊社でいうと「株式会社ネクストン」です。
株式会社は株式(株券)を発行し販売して、それを購入した人が株主となって会社のオーナーになる…というイメージですね。
そのため株式会社は何のためにある? と言いますと、出資している株主のために利益を上げるという答えになります。
今はNISAとかスマホでも色々な会社の株を買うことができます。
でもそこにはネクストンの株式は売っていません。購入できるのは証券取引所にて市場で売買することを認められた会社の株式のみです。
市場に商品として株式が上がる、これが「上場」といいます。
エロゲ会社は上場できないの? という問いかけへの答えとしましては、エロゲに関わらずアダルトコンテンツの取り扱い会社は証券取引所に申請しても通らない可能性が高いと思います。
アダルトが業務に含まれていたら一切ダメというわけではなく極小規模の一部の事業でアダルトに関連するものがある…くらいなら通るかもしれませんが、エロゲ会社だと相当厳しいと思います。
②上場できたら、したい?
「上場会社」というと、投資市場に認められた会社というステータスが魅力…というのが昔はあったかもしれません。お見合い相手が公務員とか上場会社員だと安定しているといった感じでしょうか(笑)。
上場するとそういった社会的なステータスの他には、会社で新規事業を作る為にお金が必要なときは株式を発行して売るという選択肢があります。銀行から借り入れをしなくてもいいというメリットがあります。ただ、株主がどんな人かわからないですし、色々制限がついてしまいますので、そこまで大きなプロジェクトで巨額の資金を必要とする会社でなければ上場する実際のメリットはないと思います。
③上場してないのに「株式会社」ネクストンの意味ってある?
普通に会社運営をするだけならば合同会社でもいいと思います。有名なところで言うと皆大好きDMMさんが合同会社ですね。
株式会社の場合は株主がオーナーで、経営者が業務執行者です。合同会社の場合はオーナー=経営者なので、「社長が株主」の株式会社と同じです。
株式会社は上場している、していないに関わらず、株式会社として登録して維持するためにたくさんの手続きや資料を提出しなければいけませんが、合同会社の場合はそのあたりが緩いので会社運営がしやすいという利点がありますが、逆にそれゆえに、会社を売却しにくいというデメリットもあります。
※上場していないと市場で売っていないというだけなので、市場と関係なくオーナーが株式を別企業に売却してオーナー変更ができます、これが「M&A」です。
④エロゲ会社の株式会社はお金の調達手段がちょっと違う
上場していない株式会社の資金調達は、「銀行に借りる」というとてもシンプルな方法となります。株式会社の方が合同会社よりもしっかりと管理されている(と推測される)ので株式会社を名乗った方が借り入れをしやすいと言われています。
ただ、エロゲ会社の場合は株式会社を名乗っていても別のハードルがあります。
そう、だってエロだもの…、ですね。銀行の担当者がエロゲユーザーで理解がある人でも、上役の人が「アダルトだろ!」ってなるとお金を出してくれません。
エロゲ制作にはお金がかかります。自分達の給料、会社の家賃や光熱費・設備費用、そして実際の制作にかかる原画やシナリオ、CG、スクリプト、音声、曲、印刷費などの「制作費」です。販売したらお金が手に入りますが、先に支払いがきますので、どうしてもまとまったお金が先に必要になる…でも銀行は出してくれない…ということで、流通会社さんにお金を出してもらうことになります。
でも流通会社さんもある意味「賭け」です。大きな金額を出せるかはメーカーの実績からくる信用度で変わってきます。メーカーも借りた金額よりも売れないと、発売後に流通会社さんからの支払いが一切入ってきません。店舗さんから仕入れたお金は最初に流通会社さんに入るから、そこの借金返済に充てられるので当然です。
もし、最初の開発費が足りなくてお金を借り、ゲームの売上が借りた金額よりも少ない場合…発売後に外注さんに支払う予定だった部分のお金が支払われなくなり、「未払い」問題が起こります。
こいつはヤバいぜ! ということで、次の企画書を作成し、また流通会社さんにお金を借ります。それは次回作の資金ですが、とりあえずは前作の未払い状態の外注さんに支払います。
もうおわかりですよね?
そう、どこかで予算を大きく上回るヒット作を作れないと、3~4作目で消えてしまいます。
流通会社さんも前作が赤字状態だと貸した分が補填できないので、次回作で取り返そうとまた貸して、この自転車操業に加担してしまう悪循環が起こります。ちょいちょいSNS上で出てくるエロゲ業界の闇がここにあります。
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2、最近のエロゲ市場やタイトル本数が少ない理由は?
はい! ちょうどエロゲ業界の闇サイクルの話になりましたので、このテーマに移行しますね。
先日、X上で発見したのですが、ソフ倫さんの審査本数と販売本数の年表みたいなのがありまして、定期的にでる「エロゲ業界の衰退」の話題がありました。そのため、このテーマを持ってきました。
そこに出ていたデータの説明として、ソフ倫さんはエロゲ以外にもアイドルビデオとか実写の審査もするようになりましたので、今回話題になった年表は、エロゲ業界を語るデータとしては不適切かなと思います。その数字の大半は実写が占めているからです。
実写コンテンツにも、審査を経ている商業ビデオと独自審査での「素人ビデオ」(出演者が素人というわけではないです)がありまして、後者の方が手軽に量産できるということで勢いがあるそうです。よって商業ビデオの数字が減少しているのが原因かなと思います。
エロゲに関して言いますと、パッケージの受注数というものは確かに下がっていましたが、5年ほど前までは落ちる一方だったのがついに底値にたどり着いたのか、この数年は上昇傾向にあると思います。DL販売については、ずっと上昇しております。(もっとも上昇率には波がありますが)海外販売については、海外で売れそうな作品をローカライズして販売しているからという戦略的な理由もありますが、販売すると本数は一気に伸びます。
多いものだと海外販売の初週で国内のパッケとDL合わせた数字を超えるものもあります。こちらは残念なことに国内審査団体であるソフ倫さんのデータには反映されません。海外販売している会社さんと、メーカーさんしか知らない数字になりますので公開されることはありません(笑)。 従来の販売方式ではなく、色々な販売方式に対応し、協業会社を見つけることで十分、戦える業界だなとは思います。
とはいえ、毎月の新作の本数が減っているのは事実です。当然、月によっては増減がありますし、年間何本も出せるメーカーは少ないので、固まる年と少ない年があるのはそういうものだとは思いますが、数字だけを見ている方は不安になると思います。
理由として、僕の意見を書きますね。
①メーカーが減った(業界の変化)
2000年代と比べると明らかにメーカーは減っています。理由は「簡単に稼げる業界ではなくなった」から撤退したのかなと思います。昔は低予算でそこそこ売れる、あわよくばめちゃ売れるというのが期待できました。「エロがある」というのは当時の魅力としては絶大でした。家庭用ゲーム機のような複雑なプログラムは必要とせず、エロがあれば売れるという「ビデオデッキが普及したのはエロビデオのおかげ」というような現象があったと思います。
不動産会社がエロゲ事業を別に用意するなど、明らかに稼げるコンテンツとして見ていた時代がありましたので、そりゃ毎月の新作本数も増えるよね…と思います。その時代と比べると…今の方が平和だと思いますよ。メーカー同士が争うこともなくなりましたので。
②メーカーが減った(スタッフの引退)
別の理由としては、スタッフの引退によるメーカーの停止があると思います。
1で説明した通り、エロゲ会社のほとんどがオーナー=社長のワンマン会社です。社長が一般的な定年を迎える年齢になったり、もう毎年新作を作っていくよりも静かに暮らそうかな? と思ったりした時、会社そのものを停止させようということになります。法人としての解散をする必要はありません。DL販売などを続けてその収入を受け取ることができますので。※販売権そのものを売却して完全に隠居する場合もあります。
この場合、問題となるのは社員さんその後です。他のメーカーさんに入るように交渉してあげたり、残った人達が新しい会社を立ち上げたりと、様々です。
たまに「この新作のブランド、何か聞いたことがないところだなぁ」と思って調べてみると、「元○○のスタッフさん達で立ち上げた新しいものです」ということがあります。
古くからあるメーカーさんの活動停止のニュースがでると、業界を悲観する方がおられますが、新しくできているところもあります。新しいところだとやはり知名度もありませんし、なかなか気が付かないかもしれませんが…。
個人的な意見としては、ソシャゲのアダルトはエロゲにカウントしないのかな? と思います。ネット速度と料金が安定した現代だからできるプラットフォームというだけで、出てくれるキャストさんも、原画さんもCGさんもエロゲスタッフと同じではないのかなと。
まぁ、審査本数や販売本数にどうカウントすればいいのだ? というジャンルになりますので、数字には反映されませんけどね。
僕たちメーカーとしては、ユーザーの皆さんが「業界の衰退だ!」と悲観するよりも、色々なエロゲに手を出してもらって楽しんでもらえればいいかなと思います。
メーカーのファンになってもらって、別ブランドや新規ブランドの作品にも挑戦してもらえることが、次世代スタッフを育成したいメーカーにとっても一番ありがたいと思います。
お、今月はめっちゃ長く書きましたね! また次回をお楽しみに!!
まついさん
BaseSon、あざらしそふと、Liquid、エムズトイボックス…等々、数多くの人気ブランドを抱える美少女ゲームメーカー・ネクストンの統括プロデューサー。精力的にリリースを続けるネクストンの中で事業のほとんどに関わっており、さらに広報やイベントの売り子など萬屋的な仕事もこなすなど、多忙を極めている。8月は『アマナツ+』(あざらしそふと)と『戦国†恋姫BRAVE壱 ~四国の鬼若子、長曾我部編~』(BaseSon)と『光翼戦姫エクスティアコンチェルト4』(Lusterise)と『きら☆かの』(あざらしそふと × Lump of Sugar)の、驚異の4作品同時発売。9月には『催眠性指導 -Secret Lesson-』(だーくワン!)と『双天†恋姫 -至源の王-』(BaseSon)、10月は『真・恋姫†英雄譚 コンプリートボックス』(BaseSon)と『真・恋姫†英雄譚45外伝+PLUS ~乙女耀乱☆三国志演義~』(BaseSonと)『真・恋姫†英雄譚PLUS弐 〜乙女後日談〜』(BaseSon)と『聖奴隷学園2 完全調教版』(Liquid)と『ボクが当主になるために今日からメイドとHします+』(だーくニャー!)、11月は『年上彼女』(あざらしそふと)、12月は『夢幻のティル・ナ・ノーグ』(あざらしそふと+1)と、年末まで話題の新作がてんこ盛りだ。
▲今月9月27日発売予定の『双天†恋姫 -至源の王-』(BaseSon)はすでにマスターアップ告知済み。体験版も公開中なので、『恋姫』ワールドの新展開を楽しんでほしい
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