友人から「エロゲ会社で働きたい!」と言われたら?
みなさん、ごきげんよう! ネクストンの「まついさん」です。
今日はエロゲ会社の儚さについて語りましょうか。
エロゲ会社は普通の会社とは色々と異なる社会構造で生きています。
一番大きなところでいうとお金の調達方法です。
エロゲ制作に必要な人数でいいますと、数人でも可能です(勿論声優さんとか印刷会社さんは除きます)。「ゲーム」といっても「プログラム」ではなく「音声付書籍」のようなものなので、それほど複雑なプログラムは必要ではなく既存のシステムの上で組み立てます。
それでも一つのゲームを制作して販売するにはそれなりの費用が必要です。
販促に使う費用や特典などを除いて、ゲーム制作+パッケージして販売することを考えると、いわゆるフルプライスで3000万円~5000万円ほど必要になります。
というわけで、このお金をどこから捻出してゲーム制作をするのかということになります。
普通の会社の場合、「銀行からの融資を受ける(お金を借りる)」ことになります。
※上場している会社の場合は株式を増やすということもできます。
ではエロゲ会社の場合は銀行から融資を受けるかというとその選択はとれず、多くの会社は流通会社からお金を借りることになります。
エロゲ会社は少人数かつアダルト商材なのでなかなかに銀行から融資を借りるのは壁があります。そこで問屋である流通会社が開発資金を貸すということをしてくれます。
流通会社はお金を貸している側なのできちんと回収をするために販促営業もしてくれます。エロゲ会社は少人数な会社が多くあまり「営業の人」を社員として雇っていることは少ないので、店舗でのイベントや装飾品は流通会社にお任せすることが多いです。
よく、月末金曜日に予約者・購入者に対して配布会などを行っておりますが、そういうのは流通会社さんがやってくれています。(なのでメーカーさんに、「東京だけでなく〇〇でもやれや!!」と凸るのはやめてくださいねw)
さて、ここからがエロゲ会社の儚さのお話です。
一作品が売れるか売れないかで、会社が助かる・消え去るという一喜一憂のレベルでは済まない業種である…という話です。お金の流れを考えてみましょう。
① 流通会社から製作費を借りる。
② その製作費から販売に至るまでの自分たちの給料や会社の維持費(設備や家賃)をだす。
③ 外注さんや音響会社、印刷会社(パッケージする)さんに費用を支払う。
④ ゲームを販売する。お客さん→店舗→仕入先である流通会社(問屋)に支払いがある。
⑤ 流通会社からメーカーに支払いがある。
基本的にはこの①~⑤の繰り返しになります。
単純な流れではありますが、ゲームが赤字になると一気に破綻します。
ゲームの売り上げがメーカーに入ってくるのは「黒字」の時のみです。
店舗さんからのお金が流通会社からメーカーに入るということは、流通会社から借りている金額を超えないと振り込まれません。
これが①で借りている製作費で、②と③が完全に支払うことができる金額であればいいのですが、会社の維持費なんてものは製作費を借りるときには含まれていないことが多く、計画通りに進まない場合、金額が決まっている外注さんなどの費用は変わらなくても、自分たちの給料や会社の維持費は遅れれば遅れるほど増加します。
だんだん苦しくなると「③の支払いはゲーム発売後に…」ということをしてしまうことになります。ゲームがたくさん売れて黒字になれば問題なく支払えますが、そうでない場合は、支払い不能に陥ってしまいます。
そうなるとどうするかというと、流通会社にまたお金を借ります。次の新作ゲームを作るのでその製造費を貸してくれ!! ということで契約をします。
この状態で2作品目の①は、1作目で未払い状態のところに先に支払いをことに充てられます。本来の製作費の使われ方ではないお金を使ってしまうと、2作目が大きく売れない限り、かなりの高確率で事態が悪化するだけです。典型的な「自転車操業」ですね。
こうなってしまうと、ここから先はさらなる沼が待っています。
流通会社にまた、お金を借ります。そして前作の未払いから支払いをします。
「いや、流通会社も何度も貸すなよ、学べよ!!」
と思われる方もいるとは思います。
ただ、流通会社も最初に貸した分が赤字だった場合、それを取り返してもらうべく次回作に期待して貸すしかない! という選択をしてしまいます。
ただ流通会社から出してもらう製作費もちょっと安全策をとるために低めの金額しか貸してくれない…ということになります。
ここまでくるとトラブルはいろいろなところに飛び火します。
多くの金額を最初に借りるために、「まとめて数本分を作るから!」と契約をして多めに受け取って1作目が売れなくてそこで蜃気楼のように消える会社もありました。
音響会社や外注クリエイターに支払いをしないまま倒産や音信不通になる会社もありました。
エロゲ会社は、制作が楽しいですし、作業内容も楽しいですし、趣味の合う仲間とも会える楽しい職場です。
ただ、会社の存続としては、小さな会社ゆえの不安定さはあります。
皆さんに購入してもらい、楽しんでもらい、布教していただけるよう改めてお願いします。
僕の友人から「エロゲ会社で働きたい!」と言われたら?
「考え直せ!」といいますね(笑)。
ネクストンなら勧めるかもしれません(笑)。
(まったく不満がないわけではないですが)。同業以外と比べても、いい会社だと言えるのではないかな、と僕は思っています(笑)。
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まついさん
BaseSon、あざらしそふと、Liquid、エムズトイボックス…等々、数多くの人気ブランドを抱える美少女ゲームメーカー・ネクストンの統括プロデューサー。精力的にリリースを続けるネクストンの中で事業のほとんどに関わっており、さらに広報やイベントの売り子など萬屋的な仕事もこなすなど、多忙を極めている。9月29日に『光翼戦姫エクスティアコンチェルト2』(Lusterise)と『メガスキ!~Memorial Stories~ 咲良歩コンプリートパック』(GLASSES)が発売したばかりだが、10月27日は『アイコトバ -Silver Snow Sister-』(あざらしそふと+1)がリリース予定と、夏が過ぎても熱い毎日を送っている。
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