海外版とCS版のお話
みなさん、ごきげんよう! ネクストンの「まついさん」です。
会社ではゲーム制作から事務仕事まで幅広くお仕事させていただいております。
さて、今回は、ゲームの移植販売について語りたいと思います。
現在、ネクストン作品がスチームやCS(家庭用ゲーム)としてちらほらと皆さんも目にしていただけるようになったかと思います。
「このタイトル、翻訳版でないの?」とか「このタイトル、Switch版はでないの?」といったご要望もいただくようになりました。
まずは宣伝をぶっこませてください!
今回、12月22日発売の『ONE.』については「翻訳版・Nintendo Switch版」が国内PCタイトルと同時に発売されます。現在、ご予約受付中です!
体験版は11月9日午後6時に、弊社公式HPと、ニンテンドーeショップにて配信開始予定となっております。
はい、というわけで、今回の『ONE.』のように同時発売というのは我ら美少女ゲーム業界ではかなり珍しいことになると思います。
移植販売というものはネクストンでもいろいろと行っておりますが、かなりのタイムラグがありますし、自社で積極的に進めることはありません。
今回は、その理由や実情について語っていきたいと思います。
① 制作のノウハウ・システム・技術の有無について
PC用にゲーム制作をした後、Switch移植ができるゲームエンジンに乗せ換える必要があります。PC、Switchどちらにも対応しているゲームエンジンもありますが、UIデザインといった特定の部分についてはどうしても変更が必要になります。
PC画面の比率をそのままSwitchの画面には反映できませんので、文字の大きさや、矢印カーソルではないシステム面についても変更する必要があります。
翻訳版の場合は、当然ながら複数の翻訳家が必要です。そして、その翻訳された文章をゲーム内に組み込む作業が必要となります。画面下の会話文なども横何文字×縦何行といったルール付けをしているので、アルファベットの場合は文字数が大きく変わることもありますし、会話の中で笑顔を表示させるタイミングなども打ち直しになります。
社内でそれができるかというと、人員的にも、言語的にも難しい…ということになります。
その部分は、お外に依頼するしかないかなと。
② 製作期間の問題
PC版を制作してからSwitch移植版や翻訳版を作る…という流れになるため、移植・翻訳版はどうしても1年ほどタイムラグが発生してしまいます。『ONE.』でいいますと、翻訳用のマスターシナリオをお渡ししたのは2022年12月末なので、ちょうど1年近く前となります。
翻訳する会社もスタッフを準備していたこと、比較的に文字数が少ないタイトルということもあり、翻訳は滞りなく終了しましたが、それでも移植期間を考えるとギリギリの展開でした。移植や翻訳を自社でやってしまうと、その開発ラインは新作タイトルを作ることができなくなりますので、外部で制作してもらう体制がないところは難しいと思います。
③ お金の問題
シビアな話題です(笑)
もちろん、翻訳会社によって差はありますが、翻訳は一文字10円とかそういった換算をされるようです。「あえんびえん」で60円か…(笑)
エロゲは数十万~数百万文字なので、結構な金額になります。
次に必要なものでいいますと、音声の二次使用料となります。
これは声優事務所によりけりです。PC版の50%のところもあれば、25%のところもあるし、100%のところもあります。海外、CS版、CS版その2といったハードが変わるたびに請求されることもありますので、事前の契約が大事です。もちろん、声優事務所に払う使用料といっしょに、それを連絡して取り仕切る音響会社にも支払う必要がありますので、かなり高額になります。最初のキャスティングの際に、まとめて支払ったりすれば少しお安くなるときもありますし、最初から100%を要求される事務所の声優さんを起用しないようにする、といったことも考える必要があります。
そして当然、ゲームに組み込む際に発生する移植費用もあります。
なので、どのくらい売れるかわからない、販売する単価も安い翻訳版や移植版にそれだけの費用をかけてペイできるのかというとちょっと疑問となってしまいます。
下手すると、次の新作が作れてしまう費用がかかります。
④ その他
販売業者として、任天堂さんやソニーさんと友達になる必要がありますw
今回、『ONE.』は有限会社アレス(ういんどみる)のゲームエンジンを使用しています。
ネクストンは関連会社でNintendoDSなら販売できるかもしれませんが…え? お呼びでない?
そのため、ネクストンから発売されるCS版はアレスやエンターグラム名義での販売となります。
上記のような理由でなかなかに移植・翻訳版を制作するのは難しいということになります。翻訳費用や音声二次費用を抑えることができればもっと販売ができるかもしれませんね。
また、翻訳版については、なるべくゲーム発売から期間を空けずに販売したいというところもあります。海賊版の翻訳パッチとかでてしまうのも困りものですので…。
今回はこのような感じのお話とさせていただきます。
次回はコミケ直前ということで、その話題にしようかなと考えております。お楽しみに!!
▲ネクストン30周年記念タイトルとしてnovamicusより復活する伝説の泣きゲー『ONE.』。12月22日発売予定だが、PCだけでなくNintendo Switch™とSteam®でも同時リリースされることも話題なのだ。BugBug12月号でも表紙連動で大特集しているのでそちらもチェック!!
まついさん
BaseSon、あざらしそふと、Liquid、エムズトイボックス…等々、数多くの人気ブランドを抱える美少女ゲームメーカー・ネクストンの統括プロデューサー。精力的にリリースを続けるネクストンの中で事業のほとんどに関わっており、さらに広報やイベントの売り子など萬屋的な仕事もこなすなど、多忙を極めている。10月27日に『アイコトバ -Silver Snow Sister-』(あざらしそふと+1)が発売されたばかりだが、12月22日には今回の本文でも紹介してもらった『ONE.』(novamicus)に加えて、『アマナツ ~Perfect Edition~』(あざらしそふと)と『真・恋姫†英雄譚外伝 白月の灯火』(BaseSon)の3タイトルが同時リリース。さらに冬コミにも参加予定と、年末に向け猫の手も借りたい忙しさを迎えている。
▲12月22日発売予定の『真・恋姫†英雄譚外伝 白月の灯火』(BaseSon)はOPムービーも公開中。片霧烈火さんのカッコイイ歌声に期待度がブチ上がり!!
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