様々なキャラクターを演じた16年のお話をロングインタビュー!!
美少女ゲームを彩る声優の中から、今活躍している旬の一人をピックアップし、出演作品の思い出や声優になるまでの道のりなどをあれこれ深掘りしていく「BugBug声優STATION」。
BugBug8月号では、多彩なキャラを演じられる奏雨(かなう)さんに7ページを使ってお話を伺ったぞ!!
ここでは、その中から見どころをピックアップして紹介しよう。
▲ほとんど独学で16年ものキャリアを積んだベテラン。あまり演じたことのないタイプのキャラに会うたびに自分の引き出しを開けてくれるという経験を何度も経て、幅広い技術を身に付けていった
小学生低学年で書いた声優の夢
紆余曲折あって声優事務所所属に
──奏雨さんが声優という仕事を認識したのはいつくらいだったのでしょう?
奏雨:一番古い記憶をたどると小学校低学年の時に作文で「声優になりたい」って書いているんですよ。なのでそれ以前に声優という仕事を認識していたと思います。
──その後、「声優になりたい」という気持ちは持ち続けていたんですか?
奏雨:はい。高校時代に演劇部に入ったんです。そこは少し緩めの部活だったんですが、改めて「演じるって楽しいな」と感じて、「声優になりたい」という想いが強くなりました。そして高校卒業後にとある声優事務所の養成所に通いました。ただ、我が家はデジタル化が遅れていた家だったので、どの養成所がいいのか調べ方も分からなかったんですね。で、とりあえず声優雑誌で最初に目についた養成所に通うことにしたんです。
──養成所にはどれくらい通われたのですか?
奏雨:3年です。結局事務所所属にはなれなかったんですが、その3年間で教わった声優の基礎の部分──発声とか滑舌とかは、今も大きく役立っていますね。そして3年間を終えて思ったのは、「この事務所は私のやりたい声優とはカラーが違うな」ってことでした(笑)。
──あ、よく調べないで入ったから(笑)。
奏雨:そうそう(笑)。それとちょうど短大に進んだ同級生が就職していた時期でもあって、声優という進路を考え直すべきかとも思って、一度そこから離れるんです。派遣社員として働いたりしていたんですが、結局戻ってきてしまいました。やっぱりずっと声優をやりたいと思ってきただけに、自分が納得するまでやり切りたかったんですよね。諦めきれなかった。
▲一度は声優の道から離れたという奏雨さんだが、諦めきれない気持ちがそこから16年続く美少女ゲーム声優へと繋がっていった
エロスを感じる絵って何とも
言えない魅力があるじゃないですか
──ちなみにその頃の奏雨さんは、18禁ゲームの存在はご存知だったんですか?
奏雨:プレイしたのは仕事を始めてからですが、存在は知っていました。というのも私は可愛い女の子の絵が好きなんですよ。で、ある日書店で表紙に可愛い女の子が描かれている雑誌を見つけて、「可愛い!!」って手に取ってみたら、美少女ゲーム雑誌だったんです。中はとんでもないことになっていて、「お…おおっ!? 私の知らない世界!!」って感じで(笑)。でも、エロスを感じる絵って、何とも言えない魅力があるじゃないですか。で、美しいな……て思って。
──思わず見入ってしまった?
奏雨:そうなんです。その雑誌に『顔のない月』(ROOT)の広告が掲載されていたんですよ。そのCARNELIANさんのイラストがあまりに美しくて…衝撃すぎて、雑誌に何が掲載されていたかとか雑誌の名前とかは覚えていないんですが、あのイラストだけは覚えているんです。今でも大好きな絵です。その時は美少女ゲームで声優をやるとは思っていなかったんですけど、今思えば運命の出会いだったのかもしれません(笑)。
──ということはアダルトゲームの仕事と言われても抵抗はあまりなかったのですか?
奏雨:そうですね。あまり感じませんでした。なんというか、一般の恋愛ゲームでも描写されていないところで、そういうことはしているよねって感じで考えていましたし。
▲それまでHシーンの演技を習う機会がなかったため、初挑戦の『むすめーかー』(Digital Cute)から頑張って体当たりで覚えていった奏雨さん。気合いがあればなんとかなる!?
デビュー作では頑張りすぎて酸欠に!?
──初めてのゲーム収録はいかがでしたか? エッチシーンもあるキャラですよね。
奏雨:エッチシーンは初めてで緊張もあって、最初からトップギアで演じちゃったんです。それでOKは出たのですが、実はブースの中でコッソリ酸欠になってました(笑)。軽いものだったので一瞬だったのですが、とにかく初めてだから「収録を止めちゃいけない」って気持ちばかりが強くて、気合いで乗り切りました。
──ちなみにエッチシーンはレッスンなどを受けたりはしていませんよね。
奏雨:全然ないです。初体験。無我夢中でした。お口のシーンがあったんですが、音をどうやって出すか知らないので、指3本を口に入れて音を出したんです。で、OKが出てホッとしたら、口の中に血の味がして。どうやら爪で口の内側を切ったらしくて流血していました(笑)。
──逆に今のキャリアになって、後輩の声優さんに相談されたりはするんですか?
奏雨:そもそもお仕事の現場で他の声優さんとご一緒することが少ないですからね。私がまだキャリアが浅かった頃、同期の声優さんが私に遅れて美少女ゲームの仕事をすることになって、「初めての18禁なんだけど、どういう心構えで行ったらいいかな」って相談を受けたんです。それでとりあえず「台本と水と心意気を持っていけ!!」「気合があればなんとかなる!!」って(笑)。
──男気溢れるアドバイスですね(笑)。
奏雨:だからデビューした頃の私のエッチシーンの演技は色気がなかったかもしれないです(笑)。恥じらいをもうちょっと持てばよかったかなあって後から思いました。
▲初めてのメインヒロインは『アザナエル』(ニトロプラス)。その前にも『装甲悪鬼村正』や『装甲悪鬼村正 邪念編』などでニトロプラスと関わりがあったが、この作品のヒロイン・フウリは純粋なオーディションで得た役どころだ
思い出深い作品ばかりで振り返りは大変
主題歌歌唱に念願の戦うヒロイン役も!!
──2016年、2017年あたりは出演作が非常に多い時期ですが、この中で印象に残っている作品はありますか?
奏雨:この時期は本当に絞り切れなかったので、いくつかお話しする中から選んでもらう形でもいいですか?(笑)
──承知しました(笑)。
奏雨:まずは『そして初恋が妹になる』(ALcotハニカム)なんですが、瀬尾順先生のシナリオが本当に楽しくて、ずーっと収録をやっていたい作品でした。瀬尾先生って収録中に声優のお芝居が大丈夫だなって安心すると、「キャラクターがお嫁に行きました」って言われるそうなんですよ。私の演じた忍も無事「お嫁に行きました」認定をいただけたそうで(笑)。でも、素敵な表現ですよね。「お嫁に来てくれてありがとう」って気持ちになりました。
──ほっこりできるエピソードですね。それ以外の作品はいかがでしょう?
奏雨:『シルヴァリオ トリニティ』(light)ではレインを演じさせていただいたんですが、lightさんにはデビュー当初から色々お世話になっていたんです。そんなlightさんのバトルもののメインヒロイン──実はゲームの情報が公開された時「このキャラ、やりたい!! でも、もう決まっているんだろうな」って思っていたんです。そしたらお話をいただけて、思わず部屋で踊りました(笑)。実はバトル系ヒロインが大好きなんです。しかもレインがいいキャラなんですよ。収録したらさらにレインと作品が好きになっちゃって、『シルヴァリオ トリニティ』発売前にlightさんの生配信番組「Happy light Cafe」に呼ばれたんですが、ヒロインの担当声優として呼んでいただいたのに、私の内心は「作品のオタクとして来ました」でした(笑)。レインちゃんは何かの形でまた演じられたらいいなあって思うくらい大好きです。
▲どの作品も語りたい思い出だらけで絞りきれないという奏雨さん、『シルヴァリオ トリニティ』のお話などは完全にファン目線に
「声優」へのリスペクト感じた代表作
──話が止まらなさそうなので、次の作品に行きましょうか(笑)。
奏雨:それじゃ『人気声優のつくりかた』(MintCUBE)かな。祐果子役で出演させていただいたんですが、取り扱うテーマが声優なのでオファーの際にも色々とご配慮をいただきました。結果的にお受けしてよかったなって、ご縁をいただけたことに感謝しているお仕事です。シナリオ全体から声優の仕事に対するリスペクトが溢れていて、「なんて愛に溢れた作品なんだろう」と思いました。
──確かに声優さんに対するリスペクトの強いメーカーさんではありますよね。
奏雨:声優にももちろんなのですが、その周囲のスタッフさんのお仕事へのリスペクトも感じられる作品でした。自分の仕事と同じ業界のお話なので、中には身につまされるシーンもあるんです。もちろんエンタメに昇華されているけども元ネタはリアルにあることだろうなってこともあって。収録の時も「今日はこのシーンの収録ですね、祐果子。苦しいけど頑張りましょうね」みたいな気持ちでスタジオに向かったりもしました。
──気持ちがリアルに分かるだけに、自分の心も苦しくなってしまう感じでしょうか?
奏雨:そういうシーンもありました。でも、いやだったわけではないんです。プレッシャーを感じながらの収録ではあったんですが、終わった時には肩の荷が下りてホッとしたのと同時に、「終わっちゃったんだあ」って寂しい気持ちにもなった作品でした。私はどの作品も収録が終わると寂しさを感じるんですけど、『人気声優のつくりかた』はやり切った安堵感と終わってしまった寂しさがより強かった作品でしたね。名作なので、まだプレイしていない方はぜひ遊んでいただきたい!!(笑)
▲声優を目指すキャラクターを演じるという難しい役どころだが、声優という仕事への愛に溢れたシナリオが素晴らしく、仕事が終わってしまうのが寂しいほどだったという
「一緒にモノづくりするために」の心意気
大事にしている「収録を楽しむ」という姿勢
──ここからは奏雨さんご本人についてお伺いしていこうと思います。まずは声優というお仕事について、一番大事にしていることは何でしょう?
奏雨:私自身、自分がやりたいことをするより、誰かがやりたいことをお手伝いする方が楽しい性分なので、作品がよりよいものになるお手伝いができたらいいなと考えながらお仕事をするようにしていますね。自分なりのアイデアも持っていきますが、それにしがみつくのではなく、現場でお話をしながら柔軟に対応していくことが多いですね。
──現場でスタッフをすり合わせて、ですか?
奏雨:そこで思わぬ情報が出てきたり、お芝居を進めていく中で予想外の表現が生まれたり。そういう現場の流れを楽しみたいというのはあります。台本がもう充分にすばらしいので、その台本の流れに身を任せて、作品に身を委ねるようにお芝居ができたら良いなと思って収録に臨んでいます。
──これまでの収録で、そういう意味で印象的だった作品はありますか?
奏雨:『ろけらぶ -Location Love- 電車×同級生』(フロントウイング)で、鳰というキャラを演じたんですが、台本に書かれている鳰が本当にかわいくて、読むだけでキュンキュンするんですよ。「これ、私の声いる?」って思うくらい(笑)。この収録では「私は台本の奴隷です。書いていることを一所懸命演じます」ってとにかく作品を台無しにしないように、という一心でした。
▲「作品がよりよいものになるお手伝い」の気持ちで柔軟に対応する奏雨さんだが、『ろけらぶ』は台本が良すぎて作品の魅力を損なわないように気を遣ったとのこと
初めての現場などでリラックスするため
「現場、皆、仲間」って思うようにしてみました
──では、奏雨さんの収録に向けてのルーティーンについてもお伺いします。
奏雨:ルーティーンは特にないのですが、初めての現場などで緊張してしまうのをどうしたらリラックスできるかなって考えて、「現場、皆、仲間」って思うようにしてみました。このお仕事って、特に経験の浅い頃は1回1回の現場で結果を残さないと次がないという側面もあるんです。でも、私は「なにがあっても爪痕を残す!!」みたいなのが苦手で、そう思うと緊張して空回りしちゃう。なので「この現場は、一緒の作品を作る仲間なんだ」「私の演技をよりよくしてくれる人たちなんだ」って思おう、と。「上手くやる」じゃなくて「一緒にモノづくりをするために、できることを頑張る」方が、私に合っているかなって思いました。
──ちなみに何か特別にブース内に持ち込むものってありますか?
奏雨:他の方と一緒だと思いますよ。台本、水、ペン、それとタオル。後は心意気かな(笑)。「今日も楽しく収録するぞ!!」って気持ちは大事ですよ。
──台本は紙ですか? データですか?
奏雨:私はずーっと紙の台本で収録してきたんです。タブレットだと目が痛くなっちゃうんですよね。でも軽いじゃないですか。なので揺れています(笑)。タブレットの良さは外出時にちょっと気になった部分をすぐ確認できることもあるんですよね。でも収録時には紙台本の方が馴染んでいるのでやりやすいんですよ。
▲「この仕事で結果を残す!」より「スタッフの仲間とモノづくりをする」という気持ちが奏雨さんのリラックス方法。『冥契のルペルカリア』(ウグイスカグラ)のメインヒロイン・架橋琥珀の演技にも注目♫
「理由は分からないけど好き」の大切さ
声優に関わる全てのことが楽しいから
──プライベートのお話ですが、オフの時はどのようにお過ごしですか?
奏雨:特にこれということもなく、散歩して、公園でぼーっとして、昼から飲んで(笑)。映画を観たり本を読んだり、意識的に緩みます。
──仲良くされている声優さんなどはいらっしゃいますか?
奏雨:よく遊ぶのは歩サラちゃんとか上原あおいちゃんとか和央きりかちゃん。それと羽鳥いちちゃんとかですね。他にも仲良くしてくれる人…頻度で言えばあの4人なんですが、意外と私、友達多いかもしれません(笑)。
──そういう方たちとリラックスするんですね。
奏雨:美味しいものでも食べて(笑)。頑張ったご褒美があると、次のお仕事も頑張れますしね。
──これからの素晴らしいお仕事に期待しています。それでは最後の質問になります。奏雨さんが感じられている声優というお仕事の楽しさとは、どういうところでしょう?
奏雨:なんで声優のお仕事が楽しくて好きなのかって自分でも考えてみたんですけど、「それも一つの理由ではあるけどでも核心ではないなあ」っていう答えしか浮かばなくて。でも、「明確な理由はないけどなんでか好き」って感じられることこそ「好きなこと」なのかなとも思いました。「好きなことなら、大変なことも込みで楽しい」って、まさにその通りだと思います。声優のお仕事に関わってくれること全てが楽しい。好きなことをやれているから楽しい。それでいいんだと思います。
▲夏の注目作にして彼女がメインヒロインを演じる『セレクトオブリージュ』(まどそふと)は大注目の作品!! BugBug8月号でも表紙を飾り、巻頭特集を組んでいるぞ
魅力的なキャラとの出会い、声優という仕事、奏雨さんの「好きなこと」への気持ちが溢れる7ページ!!
BugBug8月号に掲載された全7ページのインタビュー全文を見ると、関わった作品への愛が溢れるコメントばかり。
キャラの魅力、シナリオの素晴らしさを力説する姿は美少女ゲームの熱烈なファンのようだ。
今回その全ては掲載出来なかったが、ぜひ本誌で彼女の語る“声優という仕事”という「好きなこと」──それを魅力たっぷりに語る全文を読んでみてね!!
▲直筆サイン色紙を1名様にプレゼント!! 本誌アンケート用紙を使って応募しよう
関連記事
声優さんの仕事のことからプライベートのことまで!! 今回は葵時緒さんにお話を伺いました 美少女ゲーム作品で活躍する声優をピックアップしてお話を伺っていくBugBug本誌の人気コーナー「BugBug声優 ... BugBug6月号の「BugBug声優STATION」では鶴屋春人さんが登場!! 美少女ゲームで活躍する人気声優に、お仕事のあれこれをインタビューする「BugBug声優STATION」。 BugBug ... 妹属性を中心に声優の世界で幅広く活躍する秋野花さんにロングインタビュー!! 今をときめく美少女ゲーム声優に、お仕事を中心に語ってもらう「BugBug声STATION」。BugBug5月号では、『同級生 ... くすはらゆいさんに超ロングインタビュー!! パーソナリティとしても活躍する彼女だが最初は…!? インタビュー記事に強いBugBugのなかでも人気連載コーナーとなった「BugBug声優STATION」。 ... 夢に向かって一直線!! 挫折を経験しても諦めなかった彼女の軌跡を全8ページでロングインタビュー!! BugBug本誌の人気コーナー「BugBug声優STATION」。3月号では、昨年デビュー10周年を ... 様々な作品で魅力的なヒロインを熱演!! 名作リメイクでも引っ張りだこな白月かなめさんにインタビュー!! 美少女ゲームのヒロインに命を吹き込んでくれる声優のみなさんにスポットを当てて、お仕事のあれこれを ...
【BugBug】7月号の「BugBug声優STATION」は葵時緒さん登場!! 有名リメイク大作にも出演する彼女に7ページのロングインタビュー★
【BugBug】6月号の「BugBug声優STATION」は鶴屋春人さん登場!! ボーイッシュな役をはじめ様々な演技をこなす彼女に7ページのロングインタビュー★
【BugBug】秋野花さんに5月号「BugBug声優STATION」でロングインタビュー!! 『同級生2リメイク』鳴沢唯役が決定し話題沸騰中な人気声優の素顔に迫る
【BugBug】4月号の「BugBug声優STATION」ではくすはらゆいさんが登場!! 声優&WEBラジオで大活躍中の彼女に7ページみっちりロングインタビュー★
【BugBug】3月号の「BugBug声優STATION」では綾音まこさんにインタビュー!! 昨年にデビューから10年を迎え今年も様々な役を演じる彼女の素顔に迫る
【BugBug】レジェンド級ゲームのオファーに「頑張らなきゃ!!」と気合い一発★ 「BugBug声優STATION」、2月号では白月かなめさんにインタビュー!!