『発注書』の作成もライターがやるものだとは思っておりませんでした
シナリオライターは文章を書くだけの仕事だと思っておりました。
文章だけ書ければどんな社会不適合者でも生きていけるのかなーって。
もしかしたら業務上で他の人と一言もしゃべらずに働けちゃうかも、とか考えていました。
人と会話するの苦手なんです。コラム第1回で旅館勤務だと言いましたが、その旅館も別に将来の夢だったから務めはじめたーってわけでもありませんでしたからねえ。丁稚奉公として親に売られました。嘘です。公務員試験に落ちた次に入社試験を受けた結果採用されました。就職が決まったときに親は泣いて喜んでおりました。
で、その旅館ではフロントに立って受付をしてみたり、バスでお客さんの送迎をしたりするわけですが、まあとにかくお客様と会話する機会が多いのです。
はじめての送迎のときに至っては何故か「運転手さんちょっとなんか歌ってよ~」とお客様に言われて『吾亦紅(われもこう)』という曲を運転しながら熱唱しました。そのお客様っていうのは御婦人5名様でしたが、まさか本当に歌われるとは思っていなかったのでしょうね、1人2千円ずつで総計1万円のおひねりを頂戴しました。
中島、文章よりも先に歌でお金を稼いでおります。
まあそんな話はともかく、会話が苦手なはずなのに、それをしなければならないという業務環境だったので、まあまあキツくはあったのです。
旅館を辞めたあとにライターという仕事を志したのも、第1回で書いたゲームシナリオへの憧れはありつつ「誰とも会話しないまま仕事できるんじゃね?」って思惑もあったからです。
ということで旅館を辞めて美少女ゲーム業界へ飛び込みました。アダルト系の仕事という点は包み隠さず話しましたので、旅館に就職したときとは逆の意味で親は泣いておりました。
ここに書いているのですから皆様お察しだと思いますが、当然「誰とも話さない」わけにはいきませんでした。
ゲーム1本作るうえでもまず企画会議です。こちらが企画を作成した場合はそれを通すためにいろいろとプレゼンをしなければいけないですし、他の方が作った企画の場合は説明を受けて不明点を質問……とかもしなければいけません。
無事に通ったとしても次はディレクター様やら各セクションのチーフ様やらとのやり取りが発生します。シナリオのこの部分はどうなっとんねんとか、この部分の色は何色にすればいいのかとか、ここに入れるBGMはどんなニュアンスにすればいいのか、などなど……。
当然っちゃ当然ですが、ここでも無言でいるわけにはいきません。
フリーランスになったあとはチャットとかの文面だけでのやり取りも増えたりしましたが、声と文字の違いがあるだけで、意思疎通をすることには変わりありません。
まあ、もちろん何から何まで口頭またはチャットで伝えるわけではありません。
絵とか音楽とかシステム周りとか……ゲームを作る上で必要な『素材』を制作していただく上では、きちんと正式に『発注』をする必要があります。
この『発注』というのも、ライターがやるものだとは思っておりませんでした。
再三言いますが、ストーリーの文章を書けばいいだけだなーと考えていましたので。
たとえば、いわゆるスチル……CGですね。これもイラストレーター様の素晴らしき技術によってこちらが黙っているうちに完成するもの、と思っておりました。
しかしゲーム用CG絵を仕上げていただくには『発注書』というものが必要なわけです。
で、企画まで担当したライターの仕事には、それを書くというのも含まれます。
発注書というのは……まあここを読んでくださっている皆様には説明しなくてもいいかなとは思いますが、まあざっくり言うと「こんなCG書いてくださいお願いします何卒何卒」という依頼文章ですね。
絵に限らず全体的に発注書を制作しますが、ここではとりあえずCGに絞って話します。
どこまで細かく書くか、というのは人によるかと思います。
私自身も状況に応じて変えます。
共通して記載するのは
・キャラクターと服装(誰が映り込むのか)
・概要とかシチュエーションとか(何をしているのか)
・背景(どこにいるのか)
・Hシーンの場合はプレイ内容
ってところかなーと思います。
当初はもちろんイラストの発注なんかしたことありませんでした。
中島には絵心がありません。通信簿での美術の評価は大体2、たまに3という程度です。
そんな人間が絵の発注なんかできるものなのか──というか、していいものなのかと本気で困った記憶があります。とはいえ発注をしなければ制作が進みません。
ってなわけで、このコラムのタイトルどおりのことを思いながら、イラストの発注書というものに着手してみました。
……なーんて文字だけで書き連ねてもちょっと分かりにくいですよね。実例出します。
まずはこちら、最近発売された『リルカは幾重に夜を彩る』の1シーンです。
丸森リルカちゃんという女の子が、夜の公園で主人公と出会うという場面です。
発注書ではもっと細かく書いていますが、ざっくり言うと以下のような発注をしています。
・登場人物:丸森リルカ(服装はリルカ私服)
・背景 :近所の公園 時間帯は夜 差分で雨
・概要 :主人公視点から見下ろし。出会いのシーン。
座って弱々しく見上げてくるリルカ(極限空腹状態)
家出少女なので近くにはキャリーケース。
……というような感じです。本当は表情差分とかの発注もあるのですがそれは省略。
基本的に、イラストはこんな感じで依頼をさせていただいています。
こちらの場合は展開上“主人公視点”にしたかったのでそのように記載していますが、場合によっては構図までお任せすることもあります。
続けてHシーン。今まで発注した中で一番印象に残っているものを出しましょうか。
かつて企画とシナリオを担当した『働くオトナの恋愛事情』の1シーンです。
ざっくり説明をしておきますとヒロインの1人である九十九紗夜子(つくもさよこ)さんと主人公が「ドラムを叩きながらヤっちゃう」というシーンです。ドラミングセックスです。
こちらは以下のように書いています。
・登場人物:九十九紗夜子&主人公(どちらも私服)
・背景 :音楽スタジオ ドラムセット周辺
・体位 :背面座位
・概要 :ドラムを叩きながら挿入してセックスします。
実際にSEでドラム音を入れため周辺にはドラム配置。
ただしバスドラム・スネアドラム等はアングル次第でオミット。
紗夜子はスティックを所持しています。
主人公は片手で乳揉み。
Hシーンの場合だと、体位の指定も追加します。
こちらの1枚は、ドラムセットの詳細……それこそタムとかフロアとか、どういったパーツが人物周りに配置されているかまで詳細に説明しています。
ただし、それだとカメラの角度次第では結合部(モザイクかける部分ですね)が見えなくなってしまう可能性もあったため、挿れている部分を隠しちゃいそうなドラムの部品に関しては省いてください──という感じで指定を出しました。
ドラムセットに関してはイラストレーター様というより、背景担当様への依頼ですけどね。
ドラミングセックスについて絵周り以外の部分でも話すと「挿入して喘ぎながらの部分では効果音でビートを刻んでください!」とかの音周り関係の指定とかも出しています。
他にも、声優様の演技に絡む部分でも「この辺りから喘ぎボルテージ上げてください!」的なお願いをしていたりします。
こうやって並べてみると、マジで文章書くだけの仕事じゃないですね、ライターって。
ってか、このコラムだって文章を書くだけじゃなくって「このCGを使ってください」みたいな依頼を担当編集様に出していますからねぇ。
文字だけで終わらせることもできたんですけど、それだけだとちょっと華やかさが足りないかもと思って画像も出させていただきました。こっちの方がこう……なんというか、目に止まりやすいですよね?
まあ今回のコラム、本当は全部文章で済ませる気だったんですけどね。
書いている途中で予定を変更して、慌てて画像も探してきました。
こんなはずじゃなかったんですけどねぇ。
というかこのコラム、親も読むんですよ。エロ画像出していいんか? って気もします。
まあ、私のデビュー作がはじめて掲載されたBugBug本誌様を普通に読んでいましたけど。
そのときは泣いていませんでした。「こーゆーの作るんだねぇ」的な感心をしていました。
もしかしたら内心では「こんな子供に育てたはずじゃなかったのに」とか思っていたかもしれませんけどね。
もしそうだったら親子共々「こんなはずじゃなかったのに」ですねぇ。
中島大河
フリーランスのシナリオライター・作家・漫画原作者。いわゆる物書き。美少女ゲームでは2014年に『できない私が、くり返す。』(あかべぇそふとすりぃ)でシナリオデビューして以降、純愛系・癒し系・感動系の名作を数多く手掛けている。代表作は、『働くオトナの恋愛事情』(あかべぇそふとすりぃ)、『なちゅらるばけーしょん』(hibiki works)、『はるとゆき、』(あかべぇそふとすりぃ)、『自爆カノジョ ~彼女は隠れて身悶える~』(Hending)、『Secret Agent~騎士学園の忍びなるもの~』(ensemble)、『まどひ白きの神隠し』(Lump of Sugar)、『僕と先生の個人授業』(あざらしそふと+1)、『俺の瞳で丸裸!不可知な未来と視透かす運命』(HULOTTE)、『ラブピカルポッピー!』(SMEE)、等多数。この3月には『リルカは幾重に夜を彩る』(シルキーズプラス)がリリースされ、圧巻のクオリティで美少女ゲームファンの話題を集めている。
▲発売後もまだまだ盛り上がる『リルカは幾重に夜を彩る』(シルキーズプラス)。公式HPでは中島大河氏の書き下ろしショートストーリーを公開中。ネタバレ要素を含むのでクリア後に読むのがオススメだ。また5/26(火)~5/31(日)には秋葉原のBAR&UNDERにてコラボBARの第2弾も開催決定!! 新ドリンク&フードのコラボメニューも登場する予定なのでお楽しみに♪
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