【本誌復活レビュー】Liar-soft『蛟みずちの巫女』をプロエロゲライターが徹底レビュー!!　テンポよく読み進むことが出来る1000年の因縁を描く伝奇AVG

※本記事はBugBug2024年12月号に掲載したレビュー記事の再掲載です。

孤独な少年が偶然訪れた島で因縁ある者たちと絆を紡ぐ物語

本作はノベルゲーの地平線を追求し続けるLiar-softの新作で、ちょっと“古き良き”テイストの混じった伝奇モノのAVGになります。主人公・鍔貴伊織が人口150人程度というひなびた離島・枕島を訪れることではじまる、島神・綿津蛟を巡る1000年もの長きにわたる「繋がり」の物語。伝奇モノらしくしっかりとした設定が施されていながら、序盤の時点で「魂が転生している」と判明するため、世界観がスッと入ってくるのは良かったですね。
物語は現代編・平安編・昭和編という3つの時代を渡り歩くことになるのですが、混乱することなくテンポよく進めることができたのはシナリオ・テキストの力だなと思います。

▲見知らぬ島に降り立った途端、互いに一目惚れをする伊織と志津香。この謎は!?

主要登場人物は主人公の伊織を含めて6人。そのうち「蛟の巫女」である湊志津香（静珂）、チャラい陽キャの親友枠の設楽飛鳥（アスカ）とは平安編からの因縁。また宮司の娘である冴白美純（透）とは昭和編からの繋がりとなります。

面白いなと思ったのは伊織の過去生である平安編の伊緒の存在。ある意味全編を通した主人公でありながら、目的を達するためには手段を選ばず人を駒として動かし、思い通りにいかないと癇癪を起こすという共感できない人格の持ち主!!　親友がミスをした時に「叫んでないでお前が対処しろよ身を挺して盾になってでもさぁっ！　そういう役割だろう、責任持てよ、なあっ、おいっ!?」とかなじっちゃうんだから最低ですよね。
そんな主人公らしからぬ彼がいたおかげで素直に先が読めない展開だったというのも本作の面白さ。ただ彼は彼なりに1000年もの間、静珂を救うという目的を果たすという一点でもがき苦しんできたわけで、それが最後の最後の「……う、ん……頑張った……。」というセリフに凝縮されていて救われました。

▲昭和編での錦戸透と宗の一幕。透の宗に対する強い恋慕と報われなさにも注目

ヒロインキャラでは現代編で飛鳥の幼馴染みとして登場する小鳥遊梨子がツボでした。彼女だけは1000年の因縁とは外れていながら、人を愛するという一念を成し遂げたところに涙。また平安編の静珂はかなり奔放で陽気でおちゃらけた性格ながら、しっかりと美味しいところを持っていったシーンは心が震えましたねー!!　そういう意味では主人公だったのかも!?

そして最後に親友のアスカ!!　伊緒に振り回され悪態をつかれ不幸な目に遭いながらも、最初から最後まで彼を見捨てずに寄り添う姿がたまりません。頼れる兄貴分として最高の相棒だったと思います。

ネタバレになってしまうのであまり内容には触れられませんでしたが、スンナリと入っていける伝奇モノというのは伝わったかと思います。1000年の「繋がり」に興味を持った方はぜひプレイしてくださいね!!

▲冴白美純は蛟の器として認められなかったためないがしろに。父である弥太郎によって性欲のはけ口にされ続けています

▲蛟の巫女として宮司の弥太郎に「精進」させられる志津香。自分は穢れを浄化できる存在だという弥太郎ですが…

『蛟の巫女』オープニングムービー

『蛟の巫女』PV

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