鈴木昭彦会長×マス編集長、美少女ゲーム業界を大いに語る!!
11月号で30周年を迎えたBugBugと来年2月に30周年となるネクストンは、日本的な感覚で言えば「同学年」。そんな両社の代表によるオンラインでクロストークがBugBug1月号にて実現!! 業界のこれまでの30年そしてこれからの展望について、長きに渡って業界を生きのびてきた者たちの話は昔を知っていても知らなくても実に興味深い。ここではその対談の一部をダイジェストにてお見せしよう!!
▲今回は業界年長者達によるTOP対談とでも言うべき内容。開発スタッフへのインタビューなどとは違う角度からの業界話が飛び出すぞ
美少女ゲームブームの中で綱渡りで生き抜いた最初の20年
マス:改めてですがネクストン30周年おめでとうございます。
鈴木:ありがとうございます。よく生き残ったなあっていうのが正直なところでね(笑)。『恋姫†無双 〜ドキッ☆乙女だらけの三国志演義〜』が出たあたりから会社的には大丈夫だと思うようになったけど、それ以前の20年くらいは、ずーっと「大丈夫かなあ?」って思いながらやってきたね。
マス:いえいえ、老舗メーカーという印象でしたよ。
鈴木:いやあ、綱渡り時代がずーっとあったんですよ。その頃にソフ倫の理事長に就任したんだけど、ソフ倫もソフ倫でなかなか安定していない時期だったでしょ。その頃はおっかなびっくりやっていましたよ。
マス:業界全体として不安定な時期……というわけではないですよね。
鈴木:業界的にはまだまだヒットを飛ばす強いメーカーも多い時期で、売り上げも上がっていましたよね。年間10万本という作品もありましたし、ヤンチャな若手がメーカーを立ち上げたりしていましたしね。
マス:実はBugBug創刊30年なのですが、僕自身は本誌の編集に関わって20年ちょっとなんです。なのでその前のお話も伺えればと思っているのですが。
鈴木:僕もソフ倫に入ったのは設立1年後なんだけど、ネクストンがソフ倫に入会した1994年はF&C、エルフ、アリスソフトといった強力なメーカーさんが活躍していて、我々のような新参メーカーはアウェー感を感じていましたよ。ソフ倫も「なんか怖い団体だなあ」って思っていたし(笑)。いつの世代でも新参者が感じることなんでしょうけどね。
▲新参者だった状態から30年間絶え間なく美少女ゲームをリリースしてきたネクストン。昔とは比べ物にならないくらい大きくなり多数のブランドを内包する会社になったが、ユーザーに寄り添う姿勢は変わっていない
ショップに流通に雑誌社美少女ゲームを取り巻く三大パワー
マス:市場全体はどうでしたか?
鈴木:当時はソフトバンクが流通業を仕切っていたんですよ。これがなかなかに高圧的でね。納期はいついつですと言っても「ウチだけは早く出せ」とか言ってくる。もうどこもかしこも強制的でね、新参メーカーにとってみたら針の筵みたいでしたよ。
マス:ソフトバンクが流通をやっていたんですね。
鈴木:そうです。そのうちソフトバンクが力を抜いていって、ヴューズが力を延ばしてきたんです。
マス:それはどういう流れだったんですか?
鈴木:分かりやすく言えば開発費の貸し付けを始めたんですよ。それでヴューズ専売にする。そこでシェアを伸ばしていったわけです。
マス:流通会社がゲーム開発費を貸し付けるというのは僕もいろんなところで聞くのですが、けっこう早い段階からあったんですね。
鈴木:僕たちはまさか流通会社が資金を貸してくれるなんて思っていませんでしたから驚きましたよ。
マス:ちなみに資金提供を受けるときに、「こういうゲームを作ってくれ」みたいなことも言われたんですか?
鈴木:それはない。だって流通はゲームの中身については分かっていなかったから(笑)。とにかく「専売で売る商材を作れ」って感じでした。
マス:そういう意味では1990年代は比較的自由に美少女ゲームを作れていたんですね。
▲忌憚のない業界話が実名でぽんぽん飛び出す!! ここにそのまま載せるには躊躇する生々しい話なので、フルで読みたい人は本誌で確認してほしい
『同棲』『ONE』が売れてうちの会社も大丈夫…と思ったら!?
マス:鈴木さんがソフ倫に入られた1995~1996年頃は、美少女ゲームもDOSからWindowsに切り替わり始めた頃ですよね。当時の開発状況ってどんな感じだったんですか?
鈴木:ネクストンは開発期間を短く作っていた。『MOON.』とか『ONE ~輝く季節へ~』なんかも、大体半年でした。
マス:会社として半年で作るというルールだったんですか?
鈴木:そう。なにせ「売れない」が前提だったから、期間と貸金をかけられなかったんですよ。エルフさんとかアリスソフトさんはもっと長い期間で作っていたんじゃないのかな。ただ、当時のメーカーは半年くらいで1本作っていたところが多かったと思うよ。
マス:そんな中で鈴木さんが「これなら行ける」と思ったきっかけは何だったんですか?
鈴木:1997年にTacticsから出した『同棲』がきっかけですね。このソフトが1万本売れたんです。それまでは本当に売れなくて、コンシューマに行こうかという話が出ていて。その時にTacticsの開発スタッフが「美少女ゲームをやらせてくれ」と言ってきて、そこまで言うならって任せたら『同棲』が出てきたんだよね。その頃は自社のゲームの発売日には必ず店舗さんに見に行っていたんだけど、正直買ってくれている人なんて見たことなかった(笑)。しかも『ToHeart』と同じ発売日で、レジに並ぶ人もみんな『ToHeart』を持っているわけなんだけど、その中の何人かが『同棲』も一緒にレジに持って行っているわけ。これは感動したなあ。
マス:おお、いいエピソードですねえ。
鈴木:あれは今でも記憶に残っているよね。初回出荷3000本だったのがすぐリピートが来て、あっという間に1万本出荷となったんだから。
マス:なるほど『同棲』が印象深い作品と言うのは納得です。そして『MOON.』の発売になるわけですね。
鈴木:そうそう。『同棲』が1万本出荷したわけだから『MOON.』も期待するわけじゃない。ところが7000本くらいしか売れなかったんだよね。それでがっかりしちゃってさ。そこに次の企画として上がってきたのが『ONE ~輝く季節へ~』なんだけど、ヒロインが盲目だとかかんしゃく持ちだとか鬱っぽいとか、「これ、売れるの?」って思うじゃない。しかも「初回版の特典に時計をつける」と言い出して、それが最低ロット1万個なんだよ。確かに『同棲』は1万本出たけど『MOON.』は7000本だから、こっちは腰が引けてるわけ。でもやるっていうから承諾したら、あっという間に初回1万本が売れて、すぐ通常版に切り替えたんだけど、こっちも動いたんだよね。
マス:その当時、けっこう豪華な初回特典が流行り始めた頃ですよね。
鈴木:そうそう、そんな時代でした。それで「これでうちの会社も大丈夫だ」ってホッとしていたんだよ。そしたらスタッフに逃げられちゃった(笑)。
マス:波乱万丈ですよねえ。あれは見ている側もハラハラしました。
▲「泣きゲー」の開祖とも言える大ヒット作『ONE 〜輝く季節へ〜』。開発メインスタッフはこの後ビジュアルアーツへ移籍、Keyブランドとして『Kanon』『AIR』などの名作を作ってゆく
新人原画家5人の成長が生んだ大ヒット『恋姫』シリーズの時代
マス:2000年代のネクストンさんといえば、BaseSonの『恋姫』シリーズが人気ですが、僕としてはその前に2006年に発売された『春恋*乙女 ~乙女の園でごきげんよう。~』が大きなきっかけになったと思うんです。
鈴木:実は『春恋*乙女 ~乙女の園でごきげんよう。~』は広告の力でゲームは売れるかという実験作でもあったんです。で、実際に売れた。BaseSon最初のヒット作なんですが、次にK.バッジョがあげてきたのが「女の子で三国志を作ります」という企画だったんです。当初は『春恋*乙女 ~乙女の園でごきげんよう。~』と同じくらいの予算で作っていたんだけど、「売れそうなので予算をかけていいですか?」と言ってきた。それで制作予算を増やして、広告もお金をかけて色々仕掛けていったら、ちょうど「三国志」ブームがやってきたのと相まって、大ヒットになったわけ。これが2007年の『恋姫†無双 ~ドキッ☆乙女だらけの三国志演義~』で、半年で5万本も売れたんです。
マス:そんなに売れたんですか。
鈴木:売れました。それで2008年の『真・恋姫†無双 ~乙女繚乱☆三国志演義~』に続くわけだよね。この頃が一番売り上げが出ていた時期じゃないかなあ。
▲今では誰もが知るネクストンの看板作となった『恋姫†無双』シリーズだが、信頼するスタッフの「売れそうなので予算をかけていいですか?」の声にすぐ予算を増資した鈴木氏の判断力もヒットした要因だろう
鈴木:なんで『恋姫』みたいなゲームが作れたかと言うと、『ONE2 ~永遠の約束~』なんです。『ONE ~輝く季節へ~』でスタッフが抜けてしまった後、原画家のオーディションをしたんですよ。その時に5人の原画家、片桐雛太や日陰影次らが入ってきたんです。その連中がその後メイン原画家に育ってくれたのが大きかったですね。当時のネクストンはスタッフも和気あいあい仲良くやっていたんですが、その雰囲気で原画作業の中で合わせ絵がやりやすかった。それが『恋姫』シリーズを作れた大きな原動力の一つですね。
マス:『恋姫』シリーズはキャラの多さが特徴でしたから、一人二人の原画家では無理だったでしょうね。
鈴木:そうそう。それとね、キャラが多いからその後のグッズ展開を通常の美少女ゲーム以上に幅広くできた。ゲーム本編だけでなく、グッズの売り上げもすごかったんですよ。まさにネクストンにとっての救世主。だからKeyがなかったら『恋姫』シリーズは生まれなかった可能性もあるよね。そういう巡り合わせが結果的にいい流れになったとも言えますよね。
▲初期のメインスタッフが抜けたことで『ONE2 〜永遠の約束〜』の際に新たに採用したスタッフたちがいたから、現在のネクストンの大ヒット作品群も生まれた。人の縁、人の巡り合わせとは面白いものだ
「ユーザーと直接つながる」をテーマにファンを巻き込む企画で盛り上げ続ける
マス:今年もネクフェスを開催されますよね。
鈴木:はいはい。うちは今、「ユーザーと直接つながる」をテーマにして、色々なイベントを展開しているんです。例えば食事会もそうですね。ネクフェスに関しては昨年コミケが中止になってしまって、それなら自分たちでオンラインイベントをやってみようと立ち上げたんだけど、アーカイヴを含めて1万5000アクセスくらいあったんです。これなら続ける意味があるということで、今年も開催ということになりました。
マス:この数年のネクストンさんはファンに様々なアプローチをされているのがすごいと思っているんですよ。ファンクラブも展開されていますよね。
鈴木:ネクストンパスポートのことなら、これはファンクラブとは違うんです。ゲームのユーザー登録をしてくれた人へのサービスなんだよね。なので会費などは一切いただいていないんですよ。
マス:そうなんですね。食事会もネクストンパスポートの企画ですが、毎回盛り上がるようですね。
鈴木:東京は冬のコミケの初日で、大阪は夏。もう10回くらいになるね。毎回100人くらい参加してもらって、うちのスタッフが20人くらいかな。10回全部に参加している会員さんも4~5人いますよね。そんな会員さんから直接作品の評価をいただけるというのは、スタッフにとって大きいよね。そういうお客さんの顔を見ちゃうと、間違っても手を抜くなんてできなくなる。
マス:そりゃそうですよね。それを会社単体でやっているのがすごいなあと思うんですよ。
鈴木:それはね、ちゃんと運営できるスタッフがいるから。少数精鋭ではないけれど、新しいことに挑戦したがる連中がいるんですよ。ネクフェスは広報のまくらが中心となって作っていますから。そういう人材がいるというのがネクストンの強みでもありますね。
▲オンラインイベントやライブイベントなど、ユーザーとつながるイベントを積極的に行っていくネクストン。様々な新しい試みにも挑戦していくとのことだ
とてもここに全ては載せられない対談の全文はBugBug1月号にて!!
30年前から現在にまで至る貴重な業界話がどんどん飛び出すクロストークはびっしり5ページに及ぶ大ボリューム。製作スタッフへのインタビューとは異なる経営者視点から見る業界話はとても興味深いが、あけすけな話も多く「そんなことまで載せて大丈夫!?」と読んでて心配に…。文章量と内容、どちらの意味でもここではとても全文は載せられないので、ぜひBugBug1月号133ページから始まるこの対談を読んでみてほしい。特に業界話に興味がある人は必見の内容だぞ!!
▲DL販売の売れ行きや今後やりたいこと、内包する様々なブランドのことなど、総合エンターテイメント会社を目指す鈴木氏の貴重な話は見逃せない!!












