【赤月ゆむの「この選択肢、正解ですか？」】人気声優・赤月ゆむさんによる連載コラム・第4回!!　自信を持って、このソフトをおすすめする？【第4回】

今回は前回に続いて「エロゲー声優、エロゲーショップで働く！ 後編」」です

　私はその日、エロゲショップで新商品のディスプレイをしていました。今まで色々な新作エロゲを売ってきましたが、今回は気合の入り方が違います。ヒロインの立て看板を用意し、デモ画面を流すモニターの電源を入れ、声優さんのサインの入った色紙を見やすい場所に配置します。みなさん、お気付きでしょうか？　そう、このソフトは……。

自信を持って、このソフトをおすすめする？
▶ はい
　いいえ

　はい、ここで説明っ！　このコラムはエロゲ声優の赤月ゆむが、これまでの人生で選んできた選択肢が、正解だったか不正解だったかを、みんなに判断してもらいます！　今回のテーマは「エロゲー声優、エロゲーショップで働く！ 後編」。ちなみに、コラムの内容は赤月の記憶を基にした創作です。信じるか信じないかは、あなた次第！
　前編をまだお読みになっていない方は、コチラからどうぞ！

　某年某月。私はエロゲショップで、コスプレ店員として働いていました。コスプレスタッフなのでチヤホヤされるかと思いきや、重いソフトを大量に運んだり、発売日には朝から晩まで大忙しだったりと、普通に体育会系な職場でした。
　店員としての作業に慣れてきた頃、声優のお仕事も徐々にいただけるようになりました。しかし脇役がほとんどで、まだまだ物足りなさを感じてしまう日々。そんな気持ちとは裏腹に、エロゲに対しての知識はどんどん増えていきます。
　原画家さんや、シナリオライターさん、主題歌を担当されるアーティストさんなどに詳しくなりました。実際に発売イベントでショップにいらっしゃるクリエーターさんも多く、ご挨拶をさせていただき交流を持つこともありました。
　私はショップのSNSプロモーションを任されていたこともあり、そこで知り合った方々にインタビューを行うことを思いつきます。
　そうして始まったのが「クリエーターブログ」。
　エロゲメーカーの代表さん、原画家さん、ライターさん、アーティストさん、その他様々なクリエーターの方へインタビューをする連載を開始します。
　具体的には……

　・原画家さんのデスク周りの写真、使用してるソフト等
　・ライターさんが使用しているキーボードについて
　・声優さんがスタジオ収録の際に持っていくバッグの中身の写真

　かなり豪華な皆様にご協力を頂き、そこでしか読めない貴重な内容をユーザー様にお届けできたと思います（現在ではブログは閉鎖され、読めなくなってしまったのが残念）

　他にも色々なことをしたくて、お願いして発売イベントの司会をしたり、店内放送のための収録をしたり、意欲的に働かせていただきました。

　時は流れて7月。七夕イベントがあり、お客様が自由にお願いを書ける短冊が店内に設置されました。その中の一枚に書かれた文字を見て、私は強く胸を打たれました。

▲エロゲショップの七夕イベントにて

　「赤月ゆむさんが　メインヒロインのゲームが　出ますように」

　まだサブヒロインまでしか演じたことのなかった私を、応援してくれるお客様の気持ちに「より一層頑張らなくては！」と、さらなる努力を決意したのでした。

　さらに時は流れ……ついに私がメインヒロインとして出演するエロゲの発売日がやってきました！　ようやく巡ってきたチャンス！　これはエロゲ店員としての立場を最大限に利用しなくては！　いやいや、公私混同でも職権乱用でもありません、純粋なプロモーションなのです！（だって台本を先に読んでるんだもん。内容が面白いって知ってるんだもん。だからおすすめしたいだけだもん）

　まず私が演じたキャラクターの、巨大な立て看板の作成からスタート。メーカー様にお願いして素材をデータでいただき（タイトルロゴ、立ち絵、イベントCGなど）、PCで立ち絵を配置した看板をデザインします。それを業務用のプリンターで印刷し、ボードに貼り付けます。丁寧に手作業でカッティングしたら完成！　ほぼ等身大ヒロインの誕生です。
　次にSDカードにゲームのムービーを入れ、デモ機と呼ばれる小さな液晶モニターにセット！　店内に大音量で主題歌を響かせます。そして自分で「〇〇ショップさんへ」と書いたサイン色紙を作成。さきほどの立て看板に貼りつけ「声優さんがお店に来たよ！」というポストをSNSで発信（本当は、来たどころか働いているんですけどね）
　もちろんコスプレは、担当した自分のヒロインのキャラクター衣装を発注。完成して着た時は、感動しました！

　いよいよ発売日！　ヒロインに扮した私は、お客様にソフトを販売していきます。
　「そのゲームの声は、私が担当しとるんやで」と思いながら、レジでの業務を続けます。次々と売れていくソフトを見ながら、七夕の短冊を思い出し「私、メインヒロインになれたよ……」と小さく呟くのでした。

　プロモーション期間も終わり、ゲームの飾りつけを撤収します。その際に自分のサイン色紙も片付けるのですが、ショップ店員仲間に「これ、私のサイン色紙。いる？」と誇らしげに聞いたら「いらない」と真顔で返されました。私は涙を流しながら、そっと引き出しにしまいました。

　その後、声優の仕事も徐々に増えて忙しくなり、エロゲショップを辞めることになりました。あんなこともあった、こんなこともあった、そういえばクリエーターブログで、自分で自分にインタビューして、それを記事にしたこともあったな。私だけ知名度足りてなかったなぁ……。
　愛着のある職場が名残惜しく、写真に撮った青い制服が今でもカメラロールに残っています。

　あれから数年。挨拶周りで色々なエロゲショップさんを訪れた中に、私が働いていたお店もありました。壁の大きなキャラクターのポスターにサインをしました。売り場には、デモ機から私が担当したキャラクターの声が聞こえてきます。あの頃は自作自演で頑張っていたけど、今はショップ店員さんと一緒に協力して宣伝できている実感があります（もちろんメーカーさんも、流通さんも！）

▲『PureCaf e～癒やしのカフェに通い詰める、僕の地方転勤生活』（WendyBell）のプロモーションにて

　ショップで5年ほど働いた私にとっては、エロゲショップは青春そのものです。発売前の忙しさなどを身をもって知っているため、あまりお邪魔にならないようにしたり「むしろ同志」みたいな気持ちで店員さんにご挨拶させていただいています。
　当時はレジでお客さんと向き合い、直接ソフトを販売していたので、今もスタジオで収録する際はお客さんのことを一番に考えます。発売の行列に汗をかき並んで、やっとソフトを手に入れた時の嬉しそうな笑顔。その場面に立ち会えていたことを、私は今でも忘れません。あの経験があったからこそ、辛い時も頑張って演技を続けることができています。エロゲショップ大好き！

　というわけで、第4回目のコラムいかがでしたでしょうか。感想や、赤月に聞きたいことなどありましたら、Ｘをフォローしてリプをください！
　そして次回「声優事務所に所属する！」お楽しみに！
　それではまたお会いしましょう。あなたの選択肢は間違っていない！

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