敗北者たちの1000年越しの奮起…強者の支配する世界をぶち壊せ!!
昨年11月に発売され、同人ソフト界隈で大きな話題となったタイトル『Demons Roots』。漫画家でもある紅唯まと(あかいまと)氏が「サークル深爪貴族」として4年間、全力を注ぎ込んで作り続けた超大作!! との触れ込みだが、せっかくなので予備知識がほとんどない状態で体験版をプレイしてみたところ、ストーリーにぐいぐい引き込まれる魅力ある作品であった。どのような展開か、紹介していこう。
▲荒々しく抽象的に描かれたオープニング映像…輝かしき栄光の足下に繋がれる無数の奴隷。すでに胸に刺さる強烈なメッセージを感じる
体験版はHシーンだけを手軽に見られる「R18体験版」とストーリーを楽しめる「ストーリー体験版」を、さらに本編もRPGとして楽しむ「ゲームモード」と、ストーリーメインの「シネマティックモード」をプレイできる。今回は「ストーリー体験版」「ゲームモード」を選択したが、体験版でレベルを上げてもセーブデータは製品版に引き継げないので体験版では「シネマティックモード」で進めていいかもしれない。
▲このあと序章スキップも選択できるが、本作ならではの魅力を味わうため最初はぜひ序章から始めよう
STORY
はるか昔、魔王が率いる魔族が世界を支配していた時代があった。しかし魔王が人類に討ち取られたことで魔族は総崩れとなり、次々と人類に殺され、暗黒の世界に逃げ込んだ。魔族たちが草も育たぬ土地で苦しんで1000年…何度も人間との和平を試みたが、人間に近づいた魔物は「白抜き」と呼ばれる白い幻影によって容赦なく殺された。やがてこの暗黒の世界も崩壊する。魔族という種族が生き残るためには、可能性が薄くても地上に出るしかなかった。
▲これまで幾度となく人間と友好的に接しようとした魔族は、魔族を排除する恐ろしき「白抜き」によって一瞬にして細切れにされてきた
魔族復活の日…それは魔族にとっての悲願そして人間にとって恐怖の始まり
物語は、明るく平和なボヘロス王国で行われている“ボヘロス建国百年際”から始まる。ここでは「金髪の女の子」「赤髪の女の子」たちを操作してのチュートリアルと共に、人間にとって魔族はとにかく悪いもの、おとぎ話に登場するやられ役…くらいにしか思われていないことが語られるのだ。
▲二人の少女の名前はここでは語られないが、サークル深爪貴族の前作「King Exit」をプレイしていればすぐに察することが出来るだろう
その頃、魔族達は長年計画していた地上侵攻をついに実行に移そうとしていた…のだ、が。普通のRPGでは恐ろしい魔族が人間を襲う雰囲気になりそうなものだが、この世界における魔族は身を寄せあいかろうじて生きる敗北者たち。地上侵攻をするのも、このままでは種族が滅びるという切羽詰まった状況で他に選択肢はなく、たとえ大勢が死ぬこととなっても地上に出るしかないからだ。そこには悲壮感が漂いまくっていた。
▲いきがってみせる魔族ラダデモンだが、正直言って生き残る可能性のほうが低い戦いを前に震えが止まらず…
▲トーデイラの指揮のもと、まるで特攻隊のような覚悟で地上に討って出る魔族達。死してもその魂は魔王様の元へ…!!
もはや生きているものは少なく、失敗は許されない最後の作戦。魔物達にとって作戦成功の鍵となるのは亡き魔王の忠実な下僕である“残滓“たち、そして主人公であるデスポリュカだ。デスポリュカは人間の少女そっくりな姿をした植物の魔物。彼女はこれまで十何年も地上に潜伏し、人間世界の情報を集め文化を学んできた。今回の作戦の参謀役であり、切り込み役のひとりでもある。
▲華奢な見た目に反して戦闘能力が高いデスポリュカ。争いは好まない性格だが魔族の未来のために覚悟を決める
多くの犠牲を払いながらも、ついにデスポリュカと魔族達は王の城を占領!! ボヘロス王国を魔物の拠点とするのだった。しかしこの世界は人間の…いや、「帝国」と呼ばれる大国の支配下。しかも帝国にはかつて魔族が交渉を行った際に「魔族の殲滅」を宣言されている。ボヘロス王国に篭っていてはすぐに攻め入られるだろう。魔族が生き残るには周辺国を奪って領土を拡大し、帝国を倒して世界を征服するほかないのだ。
▲人間への理解、それは戦いだけでなく、その後の世界維持のためにも重要なこと。デスポリュカの重要性を魔族の指揮官トーデイラもよく理解している
CHECK
魔族たちのなかには人間を虫けら同然、いくら殺しても構わないと思っている者も少なくない。そんな彼らをデスポリュカは諌める。1000年前に魔王が敗北した原因は虐げられた人間の怒りを軽んじていたため…同じ轍は踏まない。デスポリュカは魔族の誇りある未来のため非戦闘員である人間を襲うことを禁じるのだ。しかし、もし彼女が戦死してしまったら、魔族の暴走は止められないかもしれない…。
▲人間をゴミのように見る魔族もいるが、今のところはデスポリュカの意思を酌んでトーデイラが押さえてくれているようだ
地上を取り戻した魔族達が目にした人間世界は奴隷制度が急速に進行中!?
ボヘロス王国に続き近隣国を陥落するため密かに潜入したデスポリュカが見たのは、弱者が人権のない奴隷として権力者たちに虐げられる奴隷制の世界だった。ボヘロス王国は奴隷制度に反対していたので平和だったが他国はどこも奴隷だらけ、泣き叫ぶ新人奴隷を笑いながら凌辱する兵士達。「魔族のために人間のことには関わらない」と無視したいデスポリュカだが…敗北者として1000年も世界から虐げられてきた魔族としてその光景はあまりにムカつき、思わず奴隷を助けてしまうのだった。
▲魔族と人間の違いはあれど、虐げられてきた者として見てはいられず…思わず熱くなってしまった
想定外の事態に見舞われながらも隣国を奪い、魔族にとっての宿願…人間に接近した魔族をことごとく鏖殺した魔族の天敵「白抜き」の撃破を、まさかの人間の協力によって達成したデスポリュカ。数百年も魔族に不可能だったことが人間との共闘によりかなえられた事実に、これからの新しい世界の姿、そして希望を感じた彼女はさらなる計画を進めていたが…そこに、ボヘロス王国にいる仲間から急な報せが届いた。
▲情報集めのためデスポリュカは、なんか変態王国で人気ありそうな身体してる奴隷騎士アンジュを連れて行くのだが…
▲アンジュが駄々をこねたこともあり、仕方なくデスポリュカも変態王国での通貨稼ぎを手伝うことに
▲変態王国ドレミファッキングダムでお客に奉仕。どんなお客にあたりどれだけ報酬が貰えるか、つまりHシーンの派生バリエーションはガチャによって選ばれる
ボヘロス王国からの報せの内容は、一夜にして大量の人間たちが脱走したというものだ。調査に出たデスポリュカは、多くの奴隷兵を抱えるシンガナ蛮勇諸国によってボヘロス王国の国民たちが皆殺しにされた惨状を見せつけられた。これでまんまと世界は「魔族がボヘロス王国の民を大量虐殺した」と思うだろう。さらに良心に耐えかねて虐殺を拒んだシンガナの奴隷兵たちはシンガナ王によって地獄のような“奴隷収容所”に送られると告げられる。この蛮行を止めるには一刻も早くシンガナを制圧するしかない!!
▲ボヘロスの民を殺したシンガナ王。さらにアンジュの故郷である華の国レイスはシンガナによって滅ぼされレイスの騎士達はシンガナ王の奴隷になっていた
▲デスポリュカについてきた奴隷騎士アンジュは、かつての仲間であるレイスの騎士たちの悲惨な姿を見て覚悟を決める!!
CHECK
本作のいわゆる「敗北H」はストーリー進行により“奴隷収容所”の存在が明かされたところで開放される。一度入れられたらひたすら尊厳を奪われる拷問を繰り返され、生きて出ることはかなわぬ奴隷収容所…敗北してそこに入れられると「BAD ENDモード」となりスキルも装備もない、でもぎりぎり足掻けるようには出来ている生殺しな処刑用ダンジョンに挑まされた後に凌辱されてBAD ENDとなるのだ。
▲敗北はただのBAD ENDではない。奴隷にされる理不尽さと屈辱を味わいながらの、すぐには終わらないBAD ENDなのだ
敗北者である魔族と奴隷が手を組み世界征服を目指す熱い展開!! ここから先は製品版にて!!
シンガナ王との決着の後、デスポリュカは行き場のない多くの奴隷達をボヘロス王国で預かることにした。虐げられてきた魔族と虐げられてきた奴隷達は、強大な力とカリスマを持つ帝国とその頂点の「皇帝」を打倒して世界征服をなすことが出来るのか!? …体験版でプレイできるのはここまでとなっている。
▲シンガナ王の虐殺行為もすべて裏で手を引いていたのは帝国だった。帝国のからめ手により魔族の戦いは一層苦しくなる…だが魔族の生存のためには戦い勝利するしかない!!
体験版をクリアしたあとに公式サイトを見ると(普通逆だって?)、本作『Demons Roots』は、サークル深爪貴族の前作『King Exit』とストーリーが繋がっているとのこと。では先に前作『King Exit』をやった方が良かったのか? とも思ったが、『King Exit』は本作『Demons Roots』の10年後を描いているということなので、作品世界の歴史をなぞるという意味では本作『Demons Roots』から始めた方がネタバレ回避にもなっていいかもしれない。順番はともあれ、ストーリーが繋がっているこの二つの作品、片方をやればもう片方もやりたくなるのは請け合いだ。なにせ、どちらも虐げられ続けた敗北者たちの意地を見せるストーリーなのだから…これは熱くならないわけがない!!
▲『King Exit』ではチュートリアルで登場した少女たちを含めてボヘロス王国の10年後の姿が描かれる
そして魔族が敗れれば平和な世界が訪れる…多くの奴隷の屍で築かれた勝者のための平和が!!
▲これが勝者と敗者の立場の違い…いまでもこの男への憎しみは消えないが、抵抗することもできない
▲命令に従わなければ仲間の命がない…屈辱にまみれながらもデスポリュカは懸命に耐えようとする
深爪貴族『Demons Roots』デモムービー
Demons Roots
深爪貴族
2021年11月19日発売
RPG、DL、18禁、Win7/8/8.1/10
2,420円(税込)
ボイス:なし、アニメ:なし
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