提供:âge
執筆:BugBug編集部
『âgeアーカイブス』で『君が望む永遠 〜Latest Edition〜』をプレイ!!
アージュが創立以来リリースしてきた20年分のソフトをパッケージングした『âgeアーカイブス』は、昔からのファンにとってのコレクターズアイテムとしての面だけではなく、その当時まだ美少女ゲームに触れられなかった若者たちにとって、Windows98〜XP時代に発売され、のちに名作として語り継がれている数々のアージュ作品を今のWindows10環境で遊べるという点で価値が高い。名作として語り継がれている…と言ったが、アージュも最初からこれほどのメジャーブランドだったわけではない。もちろん初期作品からとても質が高く玄人受けはしていたが、知名度が一気に上がって誰もが知るメジャーブランドとなったのはやはり『君が望む永遠』の大ヒットがきっかけだろう。
▲人にはどうにもならない問題や優しさだけでは救えない心に目を背けず、真摯に友情と愛情を描いた恋愛AVGだ
2001年当時の美少女ゲーム市場に現れた『君が望む永遠』は…というかこの作品の発売前に公開された体験版は、それまでの常識をぶち壊すボリュームと衝撃の引きで、多くのユーザーの心を鷲掴みに!! さらに製品版で本編に突入したユーザーは、心をえぐる怒涛の展開にぐちゃぐちゃになった感情をどうにかしたくてネットなどで口々に『君のぞ』について語り合った。当時の話題の中心は『君のぞ』だったのだ。そんな当時の大ヒットを振り返りつつ、『âgeアーカイブス』に収録されている『君が望む永遠 〜Latest Edition〜』をプレイしてみた。十数年ぶりの、そして今でも忘れられないこの作品を。
▲世は遙派、水月派、茜派の三国志時代に! もちろんあゆまゆ派も強い。えっ、マナマナ派? …どうだったかな
伝説の幕開け…それは衝撃の体験版から始まった
当時、ゲームの一部分や冒頭の10分くらいを遊べる体験版の配布は様々なメーカーが行なっていた。そんな中、『君が望む永遠』はプレイにざっと4時間くらいはかかる、物語の第一章をまるまる体験版として製品版発売の約3ヶ月前に配布して、業界に衝撃を与えた。主人公である鳴海孝之が涼宮遙と出会い、いくつかの出来事を経て恋人同士となっていく過程を丁寧に描いた、これだけで普通の作品の1キャラルート以上はありそうな密度の物語だ。恋人となる遙だけでなく、乱暴だけどたまに乙女チックな部分を見せる水月、遙の妹で生意気可愛い元気な茜など、この時点で登場する他のキャラクターも実に魅力的。ちなみにこれ以降、ボリュームのある体験版を出すのが美少女ゲーム業界の主流となり、これは現在も続いている。しかし『君のぞ』ほどインパクトを与えた体験版の存在はないだろう。
▲孝之を「お兄ちゃん!」と呼んで懐いてくれる茜の可愛さに、全国のお兄ちゃんの心は陥落!!
遙との恋愛も実にアージュらしいというか…多くの恋愛ゲームでは好きなヒロインと仲良くなって両思いになったらハッピーエンド、というのが定番なのだが、本作では先に恋人の面倒臭さを描く。バカやってられる友情の気楽さに対して、恋人という自由に振る舞えない関係の煩わしさ。これをプレイした時、「誰かを好きになるってのは付き合ってめでたしめでたしのような薄っぺらいものではないのだ」という、お手軽恋愛ゲームへのアンチテーゼのように感じられた。その上で、それを乗り越えた先にある恋愛の素晴らしさを描くのだ。本当の恋愛とは胸ときめく素晴らしいものだと丁寧に描き、感情移入させてゆく。
▲最初は内気であまり会話が弾まない子という印象だった遙だが、実は数々の面白伝説を持つ女の子であった
体験版でプレイできるその第一章のラストにて、幸せの絶頂だった主人公の孝之はデートの待ち合わせ場所に遅刻する。しかし遙がいた場所には…事故でひしゃげた車、走り去る救急車、現場検証する警官たち。そして事故を見ていた野次馬の言葉。
「……なんかもう……死んだみたいだよ」
当時プレイした人全てがあまりの残酷な結末に度肝を抜かれた。ほんとアージュはさぁ…『螺旋回廊』や『マブラヴ』もそうだが、こういう「気分を持ち上げておいて急展開で絶望に叩き落とす」構成が大好きなんだよな。しかもその落差を最大限に演出するために、体験版から発売までこの状態でプレイヤーにお預け状態をさせつつ、ぎりぎりまで情報を一切出さない徹底ぶり。こんな引きを体験版で見せられて、本編を買わずにいられようか!?
▲多くの人にとってトラウマとなった場面、そしてここからのOPムービー…あのショックは今も忘れられない
本編突入以降もプレイヤーの心を揺さぶる要素が絶え間なく襲いかかる!!
製品版でプレイできるようになる第二章。第一章で遙が事故にあってその後どうなったんだ!? という前のめりな気持ちで雪崩れ込んだ第二章は、いきなり濡れ場から始まる。そこでは鳴海孝之が、遙ではない女性…女友達だった水月を抱いている、そんなことが日常となっていた。細かい説明などなしにこれだけで、すでに時は流れ、人間関係は変わってしまったことを十の言葉より雄弁に語る実にセンスのある開幕演出。そこでは「で、遙はどうなった?」というプレイヤーの気持ちを知っててとぼけるように、遙のいない日常が普通に流れていく…が、病院から電話が入り「ずっと意識が戻らなかった遙が3年ぶりに目を覚ました」と告げられる。孝之たちにとっての、プレイヤーにとっての、真の物語の幕開けだ。
▲3年後、孝之のそばには裸の水月が。この3年間に何があったのかは、このあと少しずつ明らかになる
孝之の心に今も強く残る3年前の遙への想い。3年間支えてくれた水月への愛情。どちらも本物で、どちらも傷つけたくなんてない。結論なんて出せるわけがない…でも出さなければ誰も幸せになれない。この関係が、本作の骨子だ。ちなみに当時、美少女ゲームにおいてドロドロの三角関係や、選ばれなかったヒロインが傷つくような描写はほぼ無かった。プレイヤーが不快に思うから…という理由かもしれない。しかし本作は決して悪趣味などではなく、人の心の機微と成長を描く手段として、そしてプレイヤーの選択に対する覚悟を問うかのようにそこに全力で踏み込んでいき、それがユーザーの心を打ったのだ。翻って現在の美少女ゲームを振り返ると、そんなチャレンジングな姿勢は失われてしまった。活気を失っている美少女ゲームに今こそ求められているものが、『君のぞ』にはあるのかもしれない。
▲心が3年前のままの遙に「いまは水月と付き合ってるので恋人関係は終わり」なんて言えるわけない…でも嘘をつくたびに心が痛む
CHECK1
罪悪感が選択のたびに積もってゆく
視聴者として眺めるアニメなどと違ってゲームの「選択」はプレイヤーが行う。たとえそれが仕向けられた、展開が決まっているものであっても、選択には自分が選んだ意識がついて回るものだ。そこを『君のぞ』はえげつなく突いてくる。不安に怯える遙を安心させるために嘘をつく選択をした時、プレイヤーは良心の呵責を覚えるだろう。水月への気持ちが揺らいで返事をごまかす選択をした時、プレイヤーは後ろめたさを感じるだろう。こんな態度、側から見れば優柔不断だとか問題を先送りにしてるだけと言われそうだが、この孝之という男、良くも悪くも誰も傷つけたくないと苦しみを全部抱え込もうとしてしまう。そしてその選択を行なっているプレイヤーも共に罪悪感から逃れられぬ泥沼へ引きずり込まれるのだ。
▲遙と水月の関係をはっきりできないままでは、遙の妹である茜だって許してくれない。でも、選ぶなんてことができるのか…?
CHECK2
悩み苦しむ孝之を時に導き時に叱咤する人々
悩み事だらけで暗い表情が多くなる孝之だが、前述のように本作は、けっして鬱な気持ちをプレイヤーに与えたい悪趣味な物語ではない。悩む孝之に、時に優しく時に厳しい助言をしてくれる多くの人たちがいる。罪悪感に苛まれるあまり自分の人生が壊れてしまっては、今度はそうさせてしまった罪悪感を周囲に与えてしまう…だから自分自身を大切にすることは、周囲の人々を大切にするということ。自己犠牲でいくらか救われた気になるかもしれないが、それにより本当に苦しむのは周囲であること。誰も傷つけずに手に入る幸せなどないこと。自分が一番不幸だと思っていても、もっとつらい状況にもかかわらずそれを見せず頑張っている人がいること。孝之は周囲の人々によってそれらに気づき、自分の甘えを思い知り、成長してゆく。それは、目の前の事態に手一杯で視野が狭くなりがちな現代人たちに、落ち着いて周囲を見て考えて欲しいと言うアージュからのメッセージかもしれない。
▲バイト先「すかいてんぷる」の店長である健さんの、孝之の悩みを見透かすかのような助言にはいつも気づかされる
CHECK3
メインヒロイン以外もみんな濃すぎる!!
かように物語の主題は孝之、遙、水月の三角関係なのだが、本作は脇を固める女の子たちもピンでメインを張れるヒロイン力を持つ魅力的でアクの強いキャラだらけ。遙の妹の茜は体験版の第一章に登場した時点ですでにかなり人気が高かったし、第二章で孝之がアルバイトしているファミレス「すかいてんぷる」のバイト仲間たち、遙が入院している病院の看護婦たちもみんなキャラが立ちすぎていて、あとで彼女たちをメインにしたスピンオフ作品も作られたほどだ。彼女たちのルートへ進むことは、遙のために、水月のために、といつのまにか義務感に縛られて愛情が疲弊した孝之が逃げた格好になるが、それぞれのシナリオもひと筋縄ではいかない展開の転がしっぷりでプレイヤーの心を翻弄し、いつの間にか遙と水月を横に置いてそのヒロインに夢中になっていることだろう。
▲荒ぶる毒舌と愛想のかけらもないボイス、時に真理を突く言葉。彼女こそ大空寺あゆ、今では誰もが知る『ツンデレ』という言葉の発祥となったキャラだ
人の心に弱さと強さがある限り、胸に響き涙腺を刺激する珠玉の物語
三角関係とか、悩みを抱える人々の心に刺さる展開とか、魅力的なキャラクターとか、本作が当時のプレイヤーの間で話題の中心となり多くのファンを得た要素は数多くある。しかしそういった個々の要素を抜きにしても、純粋に物語として素晴らしい。改めて『君が望む永遠』というタイトルは完璧だと思う。本作は多くの望みの光と影が鍵となっている。望むものは友情の絆だったり、幸せのかたちだったり、大切な人が遺した夢だったり…時には拒絶が望みなこともある。そして永遠とは、未来への展望だったり、あるいは拭い去りたくてもつきまとう過去を意味することもある。奪われた望み、手にしたい望み。その過程の嬉しいことも辛いことも、全ての経験が未来へと繋がっていくシナリオの構成がうますぎる。切なく愛しい結末への伏線の貼り方や演出に隙がなく、これはもうどうしたって泣くしかない。だから多くの人々の心に今も残り続けるのだ。
▲3年という時間で変わってしまった関係は皆を傷つけた…だが傷を癒してくれるのも時間なのだ
昔話ではない。プレイした時がその人にとって初の出合いだ!!
『君が望む永遠』が発売された当時は、美少女ゲーム市場も活気があった。本作のように時間をかけて制作した大作が大ヒットし、多くの人が話題にしていた。しかし昨今、そのような活気のある話はあまり聞かない。世の中景気が悪くなり、フルパッケージ作品は価格が高いと思われるようになったと言うのもあるだろう。スマホの場所を選ばぬ手軽さに比べるとPCゲームの敷居が高い(そもそもPCを持ってない人も増えた)のもあるだろう。長い文章を読むのに慣れてない人が増えて、丹念な伏線を張った長編は面倒がられるのもあるだろう。しかし。名作は時が経っても、今の若い人がプレイしても、名作なのだ。『君のぞ』も間違いなくそんな名作の一つ。素晴らしい物語は時代を超える。『âgeアーカイブス』が若い人にとって「こんな面白くて感動的なゲームがあったのか!」という出合いになることを願ってやまない。まだ未プレイの若いユーザーにこそ、是非プレイしてみて欲しい!!
▲今どきのゲームと比べるとボリュームがある…というか長いよ、確かに。でも物語には必要な紆余曲折というものがあるんだ
COLUMN
ゲーム本編とは関係ない、ちょっとした余談雑談
本作にはアージュの他の作品をプレイしている人にはわかる登場人物ネタがいつくかある。例えば遙の主治医の香月モトコ先生は、『君がいた季節』の香月ミツコ、『マブラヴ』&『マブラヴ オルタネイティヴ』の香月夕呼の姉だとか。 第三章には涼宮茜の友人として『マブラヴ』の榊千鶴も登場する。ということは登場してないだけで白銀武もいるんだろうな、と思いを馳せるのも面白い。これらは知らなくても物語には影響しないが、『âgeアーカイブス』には『君がいた季節』も『マブラヴ』&『マブラヴ オルタネイティヴ』も収録されているので、そちらも併せてプレイすることでこういう小ネタもより楽しめるだろう。
▲香月先生も妹たちと同じくスーパーカーに乗っているが、妹に勧められて買っただけで乗りにくいと不満たらたら
それともう一つ余談というか雑談だが、本作が最初に発売されたのは2001年、作中の時間は1998年〜2001年なので、そこかしこに時代を感じる描写がある。遙の部屋に初代iMacがあったり、女性看護師を看護婦さんと呼んだり、スマホなどは影も形もなく携帯電話も普及し始めたばかりという感じだ。すかいてんぷる店長の崎山健三を大空寺あゆが「健さん」と呼ぶのは鉄道員っぽいからという説明も当時ヒットした映画を知っていればクスッとくるが今は少々通じにくいかもね。20年程度の昔だが、その間に起きた世の中の変化の多さを感じられてなかなか趣深い。3年間目覚めなかっただけで遙が浦島太郎状態になるわけだよ。
▲当時は携帯電話本体がコンビニで買えたが、犯罪に使われるため終了した。懐かしいと感じるのはオッサンかも…
『君が望む永遠 〜Latest Edition〜』の凄さについて
最初の『君のぞ』が発売されて以降、大人気を受けていくつかのバリエーションが登場したが、最終完全版と言っていいのが2008年に発売された『君が望む永遠 〜Latest Edition〜』だ。画面比率の変更やAGESによる演出強化などのほか、ファンディスクに収録されていた『君が望む第一章』…これは第一章の白陵大付属柊学園時代にもし違う選択をしていたら、というif作品だが、第二章の重すぎる物語に疲れた心には実に癒しとなる、救いのある物語となっている。また本編の第一章では描かれなかった出来事も補完され、作品全体をより深く理解できるようになっているのだ。
▲『君が望む第一章』より、白陵柊時代の水月と恋人になっていたかもしれないifの物語。本編では見られなかった、学園時代の水月と…
そして注目は、第二章ENDからエピローグの間にあった出来事を描く第三章が追加されたこと。第三章はそれまでと異なり孝之も登場人物のひとりとして第三者視点で描かれるが、ポイントは「親・彼女の家族」。若者たちによる恋愛AVGでは多くの場合、存在が無視されがちな親の存在だが、「いろいろな出来事があって一緒になったふたりは数年後に結婚しました」って話に至るには…結婚の話を真剣に考えるなら、親の存在は無視できないわけで。
▲水月が実家暮らしである説明はあったが、期待を背負っていた水泳をやめて孝之に尽くす水月に親が納得していないのは当然だ
第三章はそういった親や家族、社会性と向き合って自立した大人となるための、実に『君のぞ』らしいストーリーになっている。また、本編だけで察せるようにしてあったものの伝わりにくかった部分の補足なのか、孝之が優柔不断に見える事、事故の原因となった車の運転手に関して語られなかった事などに関しても触れられている。『âgeアーカイブス』に収録されているのはこの『君が望む永遠 〜Latest Edition〜』なので、そういった補完要素も揃ったパーフェクトな状態で『君のぞ』を一気にプレイできるわけだ。これから始められる人は幸せ者だね!!
▲孝之はいつも遙のことを第一に考えている。しかし自分のことを置いて尽くす人生を歩ませたくない遙は…
恋愛は楽しいことだけではなく辛いこともすれ違いもある、いやむしろそちらの方が多いかもしれない。そういったことから目を逸らさず、だからこそ信じて努力して共に得たものは素晴らしいとうたう『君が望む永遠』。その最終完全版とも言える『君が望む永遠 〜Latest Edition〜』と、ファンディスクである『君が望む永遠 〜special FanDisk〜』、『君が望む永遠 〜Latest Edition〜』の初回特典であり“あの丘”にまつわる書き下ろしストーリー『悲しみは風のように』。それらは全て3月27日に発売された『âge アーカイブス ~20thBOX Edition~』に収録されている。まとめてプレイした方が絶対楽しめるので、今からプレイするならこちらが断然オススメ。詳しくはこちらの『âge アーカイブス ~20thBOX Edition~』紹介記事を参照しよう。
『âge アーカイブス ~20thBOX Edition~』
アージュ
3月27日発売
AVG、DVD&CD、18禁、Win7/8/8.1/10
ボイス:あり、アニメ:あり
39,900円(税別)
【その他のEdition】
「âge アーカイブス ~20thBOX Silver Edition~」
限定 100セット
100,000円(税 / 送料別)※完売済み
「âge アーカイブス ~20thBOX Gold Edition~」
限定 5セット
200,000円(税 / 送料別)※完売済み
「âge アーカイブス ~20thBOX Platinum Edition~」
限定 1セット
300,000円(税 / 送料別)※完売済み
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