業界を代表するクリエイター兼ブランド代表・片岡とも氏に新作や美少女ゲームについて直撃
創立20周年を迎えるねこねこソフトが、中国の開発スタジオYAMAYURI GARMESと手を組んでリリースする、20周年記念作品『神の国の魔法使い』。中国出身の兄妹が1000年前の日本にタイムスリップするという、日中共同制作ならではの物語が描かれていく一般向けAVGだ。そんな話題性抜群な本作を、絶賛発売中のBugBug1月号では、ねこねこソフト代表・片岡とも氏へのロングインタビュー付きで大特集。今回はそのインタビュー部分をダイジェストで紹介していくぞ!!
▲BugBug1月号では『神の国の魔法使い』をカラー6ページで巻中大特集。そのつい後半の4ページがロングインタビューだ
『Christmas Tina』は中国で50万本売れた!?
──本日はよろしくお願いします。1月28日に発売される『神の国の魔法使い』ですが、こちらは「ねこねこソフトの新作」という形でよろしいのでしょうか。
片岡:いえ、ねこねこソフトとYAMAYURI GAMESとの共同開発です。表記としては「ねこねこソフト/YAMAYURI GAMES」や「ねこねこソフト&YAMAYURI GAMES」みたいになるのかな。
──なるほど。そのYAMAYURI GAMESさんですが、こちらはどのような会社なのですか?
片岡:YAMAYURI GAMESは中国でのギャルゲーの先駆け的なブランドですね。もう設立から10年くらいになるんですよ。
──そうだったんですね。
片岡:さらに武漢市でイベントも主催しているんです。こちらもかなり規模の大きいイベントで、日本の大手コンシューマ系メーカーなんかも参加しているんですよ。
──そんなYAMAYURIさんとの共同開発ということですが、どのようにして繋がったのでしょうか?
片岡:きっかけは成都でのイベントなんです。そのイベントの主宰の方が私のファンでして、『ナルキッソス』の舞台を見に来てくれて、仲良くなったんです。その時に「成都のイベントに来て!!」とご招待いただきまして、成都に行ったんです。そのイベントの後にホテルでいろいろお話をしていく中で「一緒にゲームを作ろう!」となって出来たのが『Christmas Tina ‐泡沫冬景‐』なんです。
──『Christmas Tina』はそういう流れで生まれたんですね。
片岡:それが去年(2020年)です。中国ではパッケージやDLなどを含めて50万本くらい売れたんですよ。
──50万本!?
片岡:もう、市場規模のレベルが違いますよね(笑)。日本でそれだけ売れたら、アニメ化だなんだって大変なことになりますよ。
──コンシューマーゲームとしたってとんでもない数字です(笑)。
片岡:それで武漢のイベントにも招待されて、ねこねこソフトとして参加してサイン会をやったりしたんです。その武漢のイベントの主催がYAMAYURIさんだったんですね。それでこれまたイベントの後にいろんな話をしていたんですが、ちょうどそのタイミングで日本の流通会社との契約が切れるタイミングだったんです。それで「日本の流通との契約が切れるんだけど、YAMAYURIさん、一緒にやる?」と訊いてみたら「いいねえ、やりましょう」と(笑)。
──大きなプロジェクトが始まるというにしては、かなり軽い感じなんですね(笑)。
片岡:ビジネスパートナーというより、個人の付き合いから始まった感じです。そもそものきっかけが、中国の私のファンが舞台を見に来てくれたことだから(笑)。
▲『Christmas Tina ‐泡沫冬景‐』はSteamやNintendo Switchで発売中。1988年のバブル期の日本を舞台にしたAVGだ
『神の国の魔法使い』はどんなゲーム?
──そんな『神の国の魔法使い』ですが、東京に来た中国人の兄妹が、1000年前にタイムスリップするというお話ですね。
片岡:そうです。なので序盤は、結構なろう系の小説をパロっていたりしますよ(笑)。
──タイムスリップして現代の知識で無双するみたいな話も定番ですよね。
片岡:そうそう。しかも妹のシャー・ルーが、なろう系大好きで日本観光に来た女の子なんですよ。だから1000年前の日本と言われても、その知識がないんですよね。だから彼女にとってはまさに異世界転生だったわけです(笑)。
──資料では三部作でリリースということですが、かなりの大作になるのでしょうか?
片岡:三部作にしようと思っていたわけではないんですけど、何せ作中で1000年くらい経過するので、全部克明に書いていたら、それこそ『銀河英雄伝説』くらいのボリュームになってしまいますから(笑)。なので要所を3つ作って、分けています。トータルでテキスト量は1.2MBくらいです。日本でリリースする全部入りパッケージ版ではep.2とep.3はDLコードとして封入してあって、全部できるようになっています。元々分ける気があったわけでもないので、DL版も全部入りにしても良かったんですが、YAMAYURIさんからの意見もありまして。中国ではそういうやり方はあまりなくて、三部作なら1本ずつ販売していくのが普通のやり方なので、今回はそれに合わせました。
▲『神の国の魔法使い』は中国人の兄妹が旅行先の日本で1000年前にタイムスリップして巻き起こす長編和風ストーリー。こちらの速報記事で詳しく紹介しているのでチェックしよう!!
中国の規制は思ったよりも厳しくない
──今回は一般作ですが、これも海外展開重視ということでなのでしょうか。
片岡:これについては話すと長くなるのですが、元々私は「18禁=エロ」って考え方に懐疑的だったんです。むしろ私の中で18禁というのは、柔道で言うなら無差別級。なんでもできるのが18禁だという認識だった。もちろんエロもその中の一つということで18禁ゲームを作り始めたんですが、それがいつの間にか「エロいから18禁」みたいになっているでしょう。それはちょっとどうなのかなあって思ってます。
──そういう思いもあって一般作としてリリースするのに繋がった、と。
片岡:と言っても、今回については中国でも販売するというのが大きかったのも事実です。実は昨日もSteamに怒られたんです。イモウトさまとサツキが水浴びしているシーンがあるんですが、それがまずいと。というのも、サツキの子供時代のエピソードなんですね。子供ってのが特にまずいらしいんです。じゃあ、そっちだけ隠す? と言ったら、イモウトさまも未成年だからまずいと。だったら全部黒ベタにするか、とか(笑)。正直、日本のコンシューマでもこのくらいなら怒られながらもレーティングが上がるくらいのレベルなんです。
──それは大変そうですね。
片岡:まあ、言われたら「そうですか」って修正していくしかないんですけどね。欧米圏は宗教上の理由もあって、特に幼児はうるさいですから。
──例えば日本で発売するパッケージ版ではそういうCGを入れるとかはされないんですか?
片岡:それはしません。設定集のような紙媒体で発表するなら別ですが、製品としては同一にしたいんです。「日本では見られるのに、他の国では見られない」みたいなソフトにはしたくない。それに、そのCGがなければ成立しないってものではないですしね。
──では、そのシーンはどう表現されるのでしょう?
片岡:弊社にちょっと変な全裸SDみたいな絵を四コマで描いているスタッフがいるんですね。全裸っていうか肌色の棒人間みたいなレベル。なので黒塗りに「SOUND ONLY」って出して、その絵を隅っこに立たせたらSteamはどんな反応をするかなあって思っているんですが(笑)。でもまあ、そんなにこだわるところではないってことです。
──片岡さんとして譲れない部分はちゃんと守りながら、そうじゃないところは世界基準に合わせていく、ということでしょうか。
片岡:そうですね。ただ、『Christmas Tina ‐泡沫冬景‐』でも思ったのですが、中国の規制って、そこまで厳しくないんですよ。あの作品では文革にも触れたりしているんですがOKでしたし。まあ、有力者の固有名詞とかはアウトでしょうけど(笑)。
──そうなんですね。結構厳しいような印象がありました。
片岡:むしろ欧米での子供の表現とか宗教関連とかのほうが厳しい印象です。
──そのあたりは同じ東アジア同士っていうのもあるのでしょうか?
片岡:うーん、そこまで大きな違いがあるとも思わないですね。むしろ中国の人とアメリカの人の感性は似ているかなとも思いますし…。うん、やっぱり日本人の感性と近いっていうのは、あまり感じませんねえ。もちろん個人個人に色々あると思いますが。
──そういう意味でも、世界基準でゲームを作る必要があるのでしょうか。
片岡:そうですね…ちょっとその辺りを難しく考えたことはないです。まあ、今回の作品は中国のユーザーさんと日本のユーザーさんに向けてを考えて作っているということですね。あんまり言うとネタバレになってしまうんですが、今作はメッセージ性が強い部分もあって、そのあたりはYAMAYURIさんに上手にやっていただこう、と(笑)。
▲インタビュー記事中に掲載しているSekai projectの紹介。美少女ゲームの英語への翻訳を多数手掛けており、HPにはBugBug読者お馴染みの人気作の英語バージョンが満載なのだ
中国人が演じるキャストにも注目!!
──中国人のキャストの方もいらっしゃいますよね。
片岡:声優さんは日本在住の方なので大丈夫なのですが、中国側の音声担当者がコロナの影響で来日できなくなっちゃったんです。なので中国語のセリフを収録しようと思っても、それが正しいのかどうかとかジャッジできる人間がいなくなってしまったんですよ。
──ああ、なるほど。どう対応されたんですか?
片岡:とりあえず中国側とスタジオをネットで繋いで、オンラインで立ち会ってもらうようにしましたけど、日本で使うアプリが向こうで使えなかったりするじゃないですか。なので結構大変でした。
──セリフは日本語と中国語の両方が混ざっているのでしょうか?
片岡:両両方混ざってますが、テキストは固定です。環境設定で、日本語・中国語の言語選択が出来ます。
──イモウトさまの声優さんは可可味さんとありますが。
片岡:中国から日本の大学に留学している方で、中国語も日本語も喋れる方です。イモウトさまは漫画やアニメで日本語を勉強して多少喋れる設定ですので、両方をやってもらいました。
──主人公のキャストは文曄星さんと中村圭佑さんの二人ですね。
片岡:文さんには中国語を、中村さんには日本語を担当してもらいました。文さんも日本語は喋れるのですが、芝居となるとちょっとイメージが違ったんですよ。それで中村さんに日本語部分をお願いしたんです。中村さんは『ナルキッソス』でも主人公を担当してくれているんですが、今回も頑張ってくれました。特に片言の日本語とか、よかったですよ。
──その他のキャストもねこねこソフトファンも納得の人選ですね。
片岡:後藤邑子さんに能登麻美子さんにって感じですね(笑)。後藤さんは武漢のイベントに一緒に招待されたんですよ。私と一緒にサイン会をやりました。領主さまの日野聡さんは『Christmas Tina ‐泡沫冬景‐』のアペンドで主人公役をやっていただいたんですけど、本当にお上手で。なので今回もお願いしました。
▲『神の国の魔法使い』は魅力的なサブキャラクターも多数登場。日本と中国、さらに時代も異なる多彩な登場人物に期待大だ
デビュー当時の20年後のビジョンは…あるわけない!?
──そんなねこねこソフト20周年を振り返っていかがですか?
片岡:実は正確にいうともう22年くらいなんですけどね(笑)。一つ自慢できることは、デビューの『White 〜セツナサのカケラ〜』の時から20年以上、シナリオ・片岡とも、原画・秋乃武彦でやってきたということですね。これだけ長い期間、同じシナリオライターと原画家のコンビで作品を作り続けるなんて、他のブランドでできる? って思っちゃいますよ。普通だったら、どちらかが管理や経営に移行しているでしょう。まあ、私らは二人とも生涯現役ってタイプだからなんでしょうけど。
──片岡さんが感じる秋乃武彦さんの魅力ってなんでしょう?
片岡:絵が大好きなんですよ。そこが一番ですね。ただ手が遅いのだけはどうにかしてほしいんですけど(笑)。元々ねこねこソフトって新人を募集して、一人前になったら外に送り出して活躍してもらうって感じで動いてきたんです。それが上手くいって、ほとんどのスタッフがねこねこソフトの外で頑張っている。で、最後まで残ったのが秋乃武彦ですから(笑)。彼だけはずっと一緒にやらないとダメだなって(笑)。
──実際『White 〜セツナサのカケラ〜』を作った頃、20年後のビジョンなどはありましたか?
片岡:あるわけないですよね(笑)。私ら同人でゲームを作っていたところを当時のTGLに声をかけられて、仲間を集めて商業デビューして…って感じでしたからね。会社って感じでもなかったし。それに10年目くらいで一区切りをつけてますから。当時の美少女ゲームのお金のかけ方に納得がいかなくなったというか。ゲーム1本の広報費が1千万円とか、やってられないですよ。コミケも最初の頃は2コマ分の装飾を全部自分たちでやっていたのが、消防法の問題とかで専門業者にお願いするようになってその費用が百何万円とか。
──確かにあの当時、ねこねこソフトのイベントは手作り感満載でした。スタッフの動きはプロっぽかったですけど(笑)。
片岡:自分たちで同人イベントもやっていましたから(笑)。例えば、Leafさんが最初にコミケの企業ブースに出たとき、想定外に人が集まったんですよ。その時にうちのスタッフが手伝ったりしていました。彼らは今も人気作家さんとかの混対をしていますよ(笑)。
▲インタビュー記事中にはねこねこソフトが手掛けた名作も紹介。こちらは2001年発売の代表作『みずいろ』
誌面では『神の国の魔法使い』と“ねこねこソフト”について片岡とも氏にまだまだ直撃!!
1月号に掲載した片岡とも氏へのインタビューでは、作品の内容についてや、なろう系や同人ゲームについて、美少女ゲーム業界についてや、読者へのメッセージ…等々、今回紹介した以外にも注目の内容が超ボリュームで掲載。ねこねこファンは絶賛発売中のBugBug1月号を是非GETして、隅々まで読み込んで『神の国の魔法使い』のプレイに備えよう!!
▲ねこねこソフトは12月30・31日に行われる冬コミの企業ブースにYAMAYURI GAMESで参加予定。参加する人は是非立ち寄ろう♪
ねこねこ「神の国の魔法使い」ティザーPV
▲ティザーPVはこちら。豪華特典満載の「日本スペシャルパッケージ版」に加え、さらに超注目「ねこ20周年記念ディスク」も付いた「日本限定パッケージ版」もあるので、オフィシャル通販をチェック!!
神の国の魔法使い
ねこねこソフト & YAMAYURI GARMES
2022年1月28日発売予定
AVG、STEAM/Android/iOS、一般
日本スペシャルパッケージ版:6,800円(税込)、日本限定パッケージ版:9,800円(税込)STEAMデータ完全版:3,600円(税込)、STEAMデータEA版:2,100円(税込)
ボイス:あり、アニメ:なし
原画:秋乃武彦
シナリオ:片岡とも
▲BugBug1月号は紙版も電子書籍版も絶賛発売中。これ以外にもスクープ特集やインタビュー企画が満載なので、こちらの記事で確認してね♪