原画・すめらぎ琥珀氏の参加など新しい魅力が満載な『マガツバライ』の秘密に迫る!!
熱いバトルモノの名作を数多くリリースしてきたlightから、待望の最新作が公開。今作は今までのシリーズとは違う新たなバトルAVGで、何とPCではなくNintendo Switchでの発売なのだ。スタッフに人気絵師・すめらぎ琥珀氏が参加しているのも注目で、新たな作風のバトルは期待感バツグン。絶賛発売中のBugBug12月号では、そんな新作『マガツバライ』の狙いや経緯について、プロデューサーの服部道知(はっとり みちさと)氏へ直撃ロングインタビューを敢行。今回はそのインタビュー内容をダイジェストで大紹介するぞ!!
▲BugBug12月号では『マガツバライ』をモノクロ5ページのインタビュー特集に加え、カラーでも4ページで特集。総計9ページで紹介しているぞ
新作がなぜ18禁でないのかを直撃!!
──新作『マガツバライ』についてお聞きします。まずは「なぜ18禁ではないのか?」「なぜ東京ゲームショウでの発表になったのか?」「なぜハピネットなのか?」という点ですが…。
服部:ああ、「lightはエロゲーを見捨てるんじゃないか?」みたいな感じですか?
──そうともとれるんですが、ところが発表されたCVのキャストを見ると、みなさんエロゲー業界で活躍されている方ばかりなんですよ。これはどういうことだ!? と(笑)。
服部:そうですよねえ。まあ、答えられる範囲でお答えしますので聞いてください。
──まず、ハピネットから東京ゲームショウで発表された狙いはどこにあったのですか?
服部:そもそも僕はNintendo Switchをとても評価しているんです。テキストAVGを遊ぶのに適したハードだ、と。実際、美少女ゲームをPCでは遊ばずに、Switch移植版で遊んでいる人も多いんですよ。PCゲームを遊べる環境を持っていない人がメインだと思いますが、一方でPCゲームにめんどくささを感じている人とかもいて。
──「PCゲームのめんどくささ」ですか。
服部:例をあげるなら、コピーガードやアクティベーションに忌避感を感じる人とか…僕は正規ユーザーの権利を保護するものだと思っているので積極的に取り入れたいのですが、それが嫌だというユーザーさんもいます。あとはやはり保管の問題。実は僕もモノをなくすことが多いので気持ちはわかるのですが、Switchでは登録しておけばなくすことはないし、保管も簡単ですよね。他にも理由はあると思いますが、そこが大きいかな、と。
──なるほど。でも2点目に関しては、FANZA GAMESのDL販売なども同じようなシステムですよね。
服部:なので僕はとても評価しています。万が一ソフトを消してしまったりパソコンが壊れてしまったりしても、アカウントさえ保持していれば再DLできる。これは素晴らしいシステムですよ。なくさないんですから。
──確かにそうですね。
服部:同人誌ファンの中には保管のために蔵を作ったりしている人もいます。僕の友人でも千葉の山奥に別荘を買って、そこに並べている人もいるんです。それはもう文化なので、それが楽しい人はそれでいい。でも、中にはもっと手軽に楽しみたいって人もいます。そういう人がモノではなくデータに移行するのは理解できますよね。
──それは美少女ゲームでも同じですね。
服部:そうなんです。だから僕はパッケージも出しますがDLも出しますよ、というスタンスなんです。そしてそのシステム面ということで考えると、Nintendo Switchのシステムはよくできているんです。ハードをプラットホームとしてシステムを構築している。さらにインディーズにも門戸を開いている。なので『マガツバライ』をSwitchで出そう、と考えたわけです。それが春ぐらいですね。
▲こちらはカラー4ページでの特集部分。ビビッドな色使いのグラフィックが新感覚で目立つのだ
『マガツバライ』はもともと18禁の企画だった!?
──春、というと開発は進んでいましたよね?
服部:エロゲーとして開発していました。なので「Switchで出す」と伝えたときには、スタッフも「マジ?」ってリアクションでしたね(笑)。──じゃあ、『マガツバライ』はもともと18禁の企画だったんですか?
服部:そうですね。でもlight作品ですから。お察しの通り、そもそも全体におけるエロシーンの割合は少ないんですよ(笑)。なのでストーリーを大幅に変更するようなことはなかったんです。
──言われて見れば、一部のCGには18禁作品だった名残みたいなのも感じます(笑)。
服部:名残と言いますか、18禁シーン以外はそのまま使っています。まあコンシューマー作品でもこれくらいの表現はあるから、いいかな、と。
──そうなってくると、ますます聞きたくなるのが、なぜ『マガツバライ』は18禁ではなくコンシューマで発売するのか? ということなんですが。
服部:突っ込んできますねえ(笑)。僕はずっとエロゲーを遊んできて、20年以上エロゲーを作ってきたわけで、エロゲーの良さも理解しています。それは何かというと、2000年代初頭のエロゲー業界は入りやすく利益率のいい場所だったので、様々な才能が集まってきたんです。そういう場から、いろんなエロゲーが出てきて、その結果、面白いエロゲーも多かったわけです。アニメ化される作品が多かったのも、面白かったからに他なりません。
──確かに入りやすい業界だというのはわかります。極端な話をすれば、パソコン1台あればいいわけですもんね。
服部:そういうことです。もちろん参入しやすいということは、そこから酷いゲームも出てくるわけです(笑)。でも僕は、その玉石混交が良かったとも思っているんです。最初からすごい作品を作る才能の人もいれば、失敗しながら才能を磨いていく人もいる。そういう幅の広さがあったんですね。そういう選択肢がユーザーさんに提示されていたから、美少女ゲームを探すお客さんが集まって盛り上がっていたと思っています。
──なるほど。確かにそうかもしれません。
服部:大事なのは、“場”なんです。今だとクラウドファンディングがそうですね。いろんなアイデアが集まってきているから、それを探す楽しさを感じる人が増えている。その結果、様々なアイテムや企画にお金を出す人も増えているんです。これは2000年代のエロゲーと同じ状況だと思っています。
──確かに似ていますね。
服部:僕はエロゲーの売りは「エロ」だけじゃないと思っています。その上で「エロ」が禁止じゃないことが大きい。男女の恋愛を描こうとしたらエッチもするよね、エッチってそんなに後ろ暗いものじゃないよね、と。
──ああ、なんかわかりますねえ。
服部:僕はエロゲーについて語るとき、そこを起点にしています。「キミたちが好きなエロゲーってどんな作品だった?」って。エロがメインの作品を含めて、美少女ゲームは「エロはOKだけどエロだけじゃない」んですよ。
──確かにそんな2000年代のエロゲーに影響を受けたクリエイターが、美少女ゲーム業界や同人ゲームにも多いです。その上で「新しいAVGの可能性」を求めているように思えます。
服部:そうですね。その中で僕の考える美少女ゲームというのは、「18禁だからより幅広い表現ができる」のが魅力で、そこにこだわって作ってきました。つまりエロありきじゃないんです。『マガツバライ』は、そんな面白いAVGをより多くの人に遊んでほしいという思いから、Nintendo Switchでの発売ということになったんです。
▲カラー特集ではlightスタッフへのコメントも掲載。こちらはシナリオ・高濱亮氏&森間まりも氏に聞いたもの
Nintendo SwitchだとPCと違って色々大変な事も…
──改めて質問なのですが、Nintendo SwitchでAVGを遊ぶ層というのは、やはり大きいのですか?
服部:ネクストンさんの作品はもちろん、それ以外でもNintendo Switchに移植されている美少女ゲームは増えていますよ。さらに業界の分析では、Nintendo SwitchとPCのDLリピート本数を比較すると、ものによってはNintendo Switchの方が数倍のレベルで多いという数字が出ているんです。
──それはちょっと驚くべきレベルですね。なるほど、こうして話してもらうと納得なのですが、そういった理由が、東京ゲームショウのハピネットのムービーでは語られていませんでしたよね。なので不安に感じたファンもいるのかな? と思ったんです。
服部:でも、あのムービーを見てくれたファンからは、温かいお言葉をたくさんいただきました。もちろん「Nintendo Switch持ってない!!」とか「PC版も出るよね、信じてるよ!」みたいなコメントもいただきましたが。
──服部さんとしてはNintendo Switchでの販売数には手ごたえがある感じですか?
服部:うーん、Nintendo Switchだと粗利が下がっちゃうんですよ。なので売り上げ目標を立てたんですけど、みんな「そんな出るわけないじゃない」って笑うんですよ(笑)。
──ソフトの単価がPCより低いからですか?
服部:単価の安さだけじゃなく……いや、これ以上はちょっと言えないんですが(笑)、DLだけならなんとかなるんですけどねえ。
──それなのにNintendo Switchで出して、多くの人にアピールしよう、と。
服部:そうなんです。実は利益率だけでなく、開発期間にも問題がありまして、PCゲームだと11月末発売なら、11月上旬にマスターアップすれば間に合うんですよ。でもSwitchだと2か月前にマスターアップしなくちゃいけない。これが大変なんです。でも、そこまでしても、今回はたくさんの人にプレイしてもらえる可能性の高さを取ろうと考えたんです。なのでPCゲームが売れないからNintendo Switchに乗り換えたわけじゃないんです。儲けだけ考えたらPCで出しますよ。
──ぶっちゃけましたね(笑)。
服部:真面目な話に戻しますと、制作チームとしても、新しいものに常に挑戦していかなければいけないというのがあります。それが今回はNintendo Switchだったということですね。そして先程増えていると言いましたが、やはりNintendo SwitchのAVGは多くはないんです。Nintendo SwitchがAVGに向いていると思っているからこそ、ここをもっと盛り上げたいという気持ちもあります。
▲YouTubeの「light&Campus officialチャンネル」では体験版プレイムービーも先行公開中。なお画面は開発中のもので実際の体験版とは異なる場合があるので注意しよう
新作は『シルヴァリオ ラグナロク』の反省から生まれた
──それではここからは『マガツバライ』の内容についてお話を伺っていきましょう。今回の企画は、どのように生まれたのですか?
服部:わかりやすく言えば、「『シルヴァリオ ラグナロク』の反省からできた企画」ということです。
──それは『シルヴァリオ ラグナロク』に不満があったということですか?
服部:違います。作品として、『シルヴァリオ』シリーズ最終作としてやりきったんです。『シルヴァリオ ラグナロク』は胸を張って「いい作品だ」と言える作品で、みんなに遊んでほしいと勧めることができるゲームになりました。
──そんな中での反省点とは?
服部:平たく言うと、セールスが思ったレベルに届かなかった。遊んでくれた人の評価は高いんですが、多くの人に届けられなかったんです。
──それでコンシューマに。
服部:それが第一ではないんですが、最終的にそこに辿り着いたということですね。企画、絵柄、塗り、そしてもちろんシナリオなどを変えていくのが先でした。
──中でも重要だったのは、どの部分でしょうか?
服部:やはりシナリオですね。過去のlight作品…特に『シルヴァリオ』シリーズは、キャラクターの魅力に「ブレない」というのがありました。そういうキャラが実際に人気だったので、『シルヴァリオ』シリーズの主人公や登場人物は、とにかく自分の信念や目的のためにブレない“強い”キャラばかりなんです。それがファンにはたまらないわけなんですが、もっとライトなユーザー層からすれば、個性が強すぎたわけですね。
──でも1作目『シルヴァリオ ヴェンデッタ』の主人公・ゼファーは強くはなかったですよね。
服部:弱くて情けないけど、ケツを叩かれながら頑張る主人公で、実は意外と幅広い層に受け入れられたんです。でも、そこからシリーズが深まるにつれて、主人公が強くなっていき、全体的にガチが極まっていった。そうなると、好きな人はどんどんハマっていくけれど、取りこぼしていくユーザーさんも出てくるし、入ってこれなくなる人も増えてしまうんですね。強すぎる主人公はあこがれの対象にはなるけど、自己投影できないんです。美少女ゲームの主人公の楽しみのひとつが主人公への自己投影である以上、そこにハードルがあるゲームは広く受け入れられにくいですよね。
──確かにそうですね。
服部:さらにこれもシリーズが進む中で強くなった傾向なんですが、ユーザーさんが休む間もなくシビアなシーンが続くんです。「正座して、高濱さんに説教されている気分です」って感想をいただいたことも(笑)。それが極まったのが、シリーズ最終作の『シルヴァリオ ラグナロク』だったんですね。
──その感想自体はポジティヴなものだと思いますが、確かにファンがそう思うくらいですから、ライトなユーザー層は大変でしょうねえ。
服部:緊張するシチュエーションやシーンが長く続くと、やはり辛い人の方が多いんです。例えばマンガの『トリコ』では、食材を探しに冒険に行くけど、帰ってきてうまい料理を食える家があるから楽しみ続けられるんです。『銀魂』でも銀時は「万時屋」ではだらけているけど、何か事が起きると出ていってカッコよく解決してくる。この緩急があるから長く楽しめる。実は『銀魂』終盤では「万事屋」になかなか帰ってこなくなるんですけど、そのタイミングに合わせたように人気が落ちていった。つまり『銀魂』の人気には「万事屋」が不可欠だったんですね。大冒険だけしていると、読者は疲れて、ついていけなくなる人が出てくるんですね。『魔法先生ネギま!』も最終章で異世界に行って学園が登場しなくなると、人気が陰りました。もちろん僕みたいに「『魔法先生ネギま!』の最終章は構成もバトル理論も完璧で面白い!」というのはガチ派の意見です。明らかに人気は低下していました。つまり『シルヴァリオ ラグナロク』もそれと同じことが起きていたわけですね。
──なるほど。
服部:で、僕にはそうなるなってことは、『シルヴァリオ』シリーズを作っている時からわかっていました。でも、いいものができている。ならば少数のガチ派にしか受け入れられない代わりに、ガチ派にとって最高のシリーズにしようと考えたんです。その結果、胸を張って「いい作品だ」って言えるんです。
──最初に服部さんが、「light作品はリピートがいい」と言われていましたが、理由がわかりました。そういう制作姿勢で作られているから、その一瞬では大ヒットにならなくても、常にlight作品を求めるファンが出てくるんですね。
服部:そうですね。そういうことはあると思います。そしてそれこそ2000年代のように美少女ゲーム自体にお客さんの多い時期なら問題なかったんです。それなりに売れただろうし、評価してくれる人が増えれば名作として残ったでしょう。
▲インタビュー特集中ではlightの過去作も紹介しているぞ。こちらは上のインタビューダイジェストでも語られている『シルヴァリオ』シリーズ最終作の『シルヴァリオ ラグナロク』
グラフィックを筆頭に新しさ満載の『マガツバライ』に注目!!
──グラフィック面でもお聞きしたいと思います。現在公開されているCGを見ると、原色が多く、彩度が高い印象があります。
服部:キャラの塗り方は基本的にこれまでのlightと同じなんです。ただ、より目を引くCGにしたいとグラフィックチーフと相談して、キャラの放つオーラに原色を多く用いることになりました。実際の塗りは外部に、といってもこれまでと同じ会社なのですが、お願いしているんですけど、大変だって言ってましたよ。4人体制なんだけど、一人がキャラを塗って、残り3人がオーラ1、オーラ2、オーラ3って分業しているらしいです。4人で1枚を仕上げているようです。
──なるほど、このキャラの周りのもくもくはオーラなんですね。
服部:オーラと呼んでいます。最初は土埃とかいろいろあったんですけど、統一されました。
──彩度の高さはなぜ?
服部:これも印象度を高めるための方法です。ちょっと目に痛いでしょ?
──ちょっと痛いです。
服部:正解です(笑)。あと、グラフィックではもう一つこだわりがありまして、今回は主線が赤なんです。
──なぜ赤だったんですか?
服部:バトルシーンにより馴染む主線を考えていたんですが、ある時、赤はどうだ? って閃いたんです。で、グラフィックチーフに「主線、赤でどうかな?」って描いてもらったら、「黒より馴染みますね」ということで、赤になりました。
──それと、『マガツバライ』ではキャラの目力が強い印象があります。もちろん原画の特性もあると思いますが、塗りなども影響しているのでしょうか?
服部:塗りと言うか、今回は今までより瞳をシンプルに描いてもらっています。さらに一度塗った後に、全キャラ瞳の彩度を上げました。それが「目力が強い」というイメージになったのかもしれません。今作では人間と「マガツ」という魔物が登場するんですが、マガツの魔物感は強くなりました。人間にも同じような処理をしたので、「このキャラ、マガツだっけ?」みたいな雰囲気を出しているキャラもいますね。僕は今でも翼はマガツじゃないかと思っていますけど(笑)。
──新しさ満載の『マガツバライ』ですけど、その新しさをこれまでのlightスタッフが作り出しているというのがいいですね。ファンとしても安心できると思います。
服部:そうですねえ。『シルヴァリオ ラグナロク』の時もそうですが、外部スタッフも同じ人たちが参加してくれているのはありがたいです。
──期待が高まりますね。
服部:もちろんlightですから、ストーリーも楽しんで読んでもらえるようにグレードアップしています。特典のドラマCDも面白いものができあがっていますので、併せて楽しんでもらえればと思います。
▲lightスタッフへのコメント第2弾は、原画担当のKeG氏&六時氏&すめらぎ琥珀氏に直撃。すめらぎ琥珀氏は何と描き下ろしイラストで答えてくれたぞ!!
『BugBug』12月号では『マガツバライ』の秘密についてもっと詳しくインタビュー!!
シナリオと原画について、すめらぎ琥珀氏が原画として参加した経緯、lightの今後の展開について、読者へのメッセージ…等々、誌面に掲載したインタビューは読み応えのある内容がまだまだいっぱい!! バトルモノ好きなら絶対注目の期待作なので、絶賛発売中のBugBug12月号をGETして、特集記事&インタビューを隅々まで読み込んで、『マガツバライ』の発売を楽しみに待とう!!
マガツバライ オープニングムービー『Stand Straight up』
▲OP主題歌「Stand Straight up」を歌うのは新海雅代さんだ
マガツバライ
light
2022年1月27日発売予定
AVG、ソフト/DL、一般、Nintendo Switch
限定版:10780 円(税込)、通常版:7480円(税込)、DL版:6800円(税込)
ボイス:あり、アニメ:なし
原画:すめらぎ琥珀、KeG、六時
シナリオ:高濱亮、森間まりも
▲BugBug12月号は紙版も電子書籍版も絶賛発売中。これ以外にもスクープ特集やインタビュー企画が満載なので、こちらの記事で確認してね♪