しっとりとした作風をメインとしてきたMELLOWの最新作は映画撮影を軸に集まった若者たちの青春物語
BugBug.NEWSの表紙イラスト連動企画でもおなじみ『True Colors -memories of the abyss-』。少年少女の心の揺らぎをしっとり文学的に描くMELLOWとしては明るい青を基調としたイメージで描かれている本作の魅力を、BugBug11月号ではMELLOW代表の東条氏に直撃インタビュー!! その一部を特別にここでお見せしよう。
▲MELLOWのディレクターであり代表、そして楽曲担当でもある東条氏にお話を伺ったぞ
デビュー6年5作品でブランドカラー確立
──MELLOWさんは2020年に『Petrichor -ペトリコール-』でデビュー以降、今回の『True Colors -memories of the abyss-』まで、コンスタントに5作品をリリースしてきていますね。
東条:新しいブランドなので定期的に出さないと忘れられてしまう、認知されないのではないかと思ったので。それと新作を出すと、過去作品も動くようになりますからね。その辺りを考えて、このペースでの発売になっています。
──そんなMELLOWさんですが、これまでの4作品でブランドカラーも確立されていますよね。
東条:『ペトリコール』では手探りな部分もあったのですが。2作目の『アサガオは夜を識らない。』からは方向性もまとまってきているのかなと思っています。
──これは何かきっかけがあったのでしょうか。
東条:『アサガオは夜を識らない。』から原画家がまうめんさんになったのが大きかったと思います。この絵柄だったら現在MELLOWで作っているような作風も上手くいくのではないかと思い、この路線に固まっていったんです。
──ユーザー目線からですと、しっとりしたシナリオに美麗なグラフィック、そして物語を盛り上げるサウンドワークというのがMELLOWのイメージだと思うのですが、それも原画家のまうめんさん起用があってこそだったんですね。
東条:もちろんシナリオライターによるところも大きいですよ。垂花さんとはMELLOW設立前から繋がりがあるんですが、『ペトリコール』ではサブライターで参加してもらったのが、さらに本腰を入れていただいて『アサガオは夜を識らない。』からはメインでシナリオをお願いしています。原画のまうめんさんとシナリオの垂花さんという軸が確立したことで、ご指摘いただいたようなMELLOWのブランドイメージというのが確立したわけです。サウンドについても二人の作り出す世界に合わせるように作っていますから。それが良い感じにマッチしているので、サウンドへも高い評価をしていただけていると思っています。
▲MELLOWは創業から5年で5作品、さらにCS機への移植版も含めると1年に1本以上のペースで濃厚なシナリオ系作品をリリースしている
ブルーライト文芸的な作風で若いファン増加
──そんなMELLOW作品と言えば、いわゆる「ブルーライト文芸」的な魅力があると思うのですが。
東条:これについてはシナリオの垂花さんが好きなジャンルだということもあるのですが、自分が王道の学園ものが得意ではないということもあるんです(笑)。なので作っていくとブルーライト文芸的な作風に寄っていくんだと思いますね。まあでも、垂花さんの世界観でキャラがみんな明るいですっていうのも違和感がありますから(笑)。そうなると、音楽の面でも美少女ゲームサウンドのど真ん中からはズレている楽曲作りになっているのかなと思いますね。結果、MELLOWらしさが生まれ他のメーカーさんと差別化されているんじゃないでしょうか。
──これまでの作品を見ると、市場の売れ筋を意識することなく、自分たちの作りたいものを作っているという、インディーズ的というか、1990年代の美少女ゲームメーカー的な印象を感じるんですよ(笑)。
東条:それはあるかもしれませんね。運よく受け入れてくれるユーザーさんがいてくれるおかげで、5作品目を制作することができている感じです。
──実際、ブルーライト文芸の読者層は20歳前後なのですが、MELLOWのユーザー層はどのあたりになっているのでしょう。
東条:ユーザーアンケートなどを見ると最終的に25~34歳がボリュームゾーンというところに落ち着くのですが、発売直後の早い段階に届くアンケートでは18~24歳が最も多いんですよ。発売直後にプレイして、しかもアンケートまで送ってくれるような熱心なファンは、若い層が多いのかもしれないですね。
──若い層に刺さる作風なんでしょうね。
東条:そうかもしれません。自分は今年35歳を超えてしまったんですが(笑)、ライターは25~34歳のゾーンに入っているので、そこが上手くいっているのかもしれません。『アサガオは夜を識らない。』から企画は垂花さんが出してきて、自分がそこに手を加えていく形になっています。
▲少年少女たちの不安定な心を描く垂花氏によるシナリオと、まうめん氏による儚げなグラフィックがばっちりハマって、MELLOWの「ブルーライト文芸」的テイストを生み出している
震災&コロナを想起させるリアルと地続きの新作
「True Color(色と感情)」が作品の通底的テーマ
──最新作の『True Colors』の企画はどのようにたてられたのでしょう。
東条:まず前作の『スカイコード』がおかげさまで好評をいただいたので、この作品と関連性を付けるのがいいかなと思いました。『スカイコード』は空なので今回は海をフィーチャーしよう、ということから、海を連想するものを盛り込むのがテーマになりました。そして公式HPにも記載させていただいているんですが、東日本大震災や新型コロナウィルスといったものを想起させる要素を盛り込んで、より現実との地続きを感じられるような作品をと考えました。
──東日本大震災と新型コロナウィルスは美少女ゲーム業界にも大きな影響を与えましたよね。
東条:特に自分とライターの垂花さんは宮城県出身で、東日本大震災は当事者として経験しました。そこに向き合った作品を作ってみようと思いました。新海誠さんも『すずめの戸締り』を作りましたし、いい時期なのかな、と。
──タイトルの『True Colors』はどういった意味なのでしょう。
東条:これは文字通り読めば「本当の色」となるわけですが、「本当の性格」「本性」という意味もあります。ネガティブな意味では「本性を表す」というような使われ方をするわけで、「色と感情」という二面性を持たせようと考えました。サブタイトルの「memories of the abys」はモチーフの海からの連想と、人間の深い部分にある感情といったものをイメージしています。
──意味深なサブタイトルになりましたね。
東条:そうですね。サブタイトルを付けた理由としては、「True Colors」だけだとシンプルすぎるので、二次元コンテンツらしいタイトルをと考えたというのもありますけどね(笑)。実は『True Colors』というタイトルは僕の方から出したんですが、普段は僕のアイデアに塩対応なシナリオライターがこのタイトルは気に入ってくれたみたいでした(笑)。
▲メインヒロインはふたり。ほたるは主人公を引っ張っていくような生命力を感じさせる子で、水萌は美少女ゲームヒロインらしいキャラデザインだが「色々大変なキャラになっています」とのこと
絶妙のキャラ配置はシナリオ執筆の中で誕生
──『True Colors』にはサブキャラにも印象的なキャラクターが登場します。群像劇はMELLOW作品の魅力の一つですが、毎回キャラ配置が絶妙です。このキャラ配置の設計はどのようにされているのでしょう。
東条:これは実は、あらかじめキャラクターの配置や相関図を確定するのではなく、シナリオ作業と同時に作られていくんです。うちの悪いところなのですが、最初の企画段階で作ったプロットが最後まで残っていることがないんですよね。もちろんシナリオライターがキャラの配置を考えてシナリオを書いてくれているんですが、例えば『True Colors』だと「色と感情」という大きなテーマがあって、それを物語の中で表現するために何度もプロットを変えていますから。ある意味エンディングだけ決まっていて、そこまでどのように物語が展開していくかは、開発も終盤にならないとディレクターにもわからないですね(笑)。
──それでは突然キャラが増えたり、登場予定のシーンなのにそのキャラが出なかったりも?
東条:うちだとあるんですよ(笑)。今回は当初春のシーンがあるということで春服の立ち絵差分を作ったんですけど、結局使わなかったです。きっちり描いてもらっているので、資源を無駄にしてしまった感じですね(笑)。
──それは塗りまで終わっていたんですか?
東条:終わっていました(笑)。塗りまでした素材を使わないって言うのはMELLOWの中でも初めででしたね。でもまうめうさんと垂花さんは相性がいいので、そこで揉めたりしないのは助かっています。
▲物語と同時進行でデザインされたというキャラクターたち。映画というきっかけに集まった彼らがどんな物語を紡ぐのか
すんなり決まった絶妙のCVキャスティング
輪郭線の太さと彩度の高さでCGはポップに
──さて、これもキャラデザインの一部ではあると思いますが、各キャラのCVも発表になりました。こちらはどのように決めていかれたのでしょうか。
東条:毎回キャスティングをお願いしている事務所さんに、今回もオーディションを主導してもらいました。ほたるが風鈴みすずさん、水萌が冬峰小鈴さん、そして薔薇が小波すずさんとメインどころが決まったのですが、小波すずさん以外はMELLOWでは初めてお願いする方なんです。各キャラに何人か候補の方を出していただいたんですが、純粋に声だけを聴いてすんなりと決まりましたね。
──先ほどキャスティングはすんなり決まったと言われていましたが、MELLOW作品では大体スムーズに決まるものなんですか?
東条:いえ、ここまでスムーズに決まる方が珍しいですよ。まあ今回はスケジュールが押していたということもあるんですが(笑)、MELLOW作品って、作風から普通の美少女ゲーム的なお芝居をしてもらうと、ちょっと大げさに感じてしまうところが少なくないんです。キラキラしたり賑やかだったりが合わず、押さえた演技が欲しいところが多い。そこが難しいですね。
──グラフィック面では新たな取り組みはありましたか?
東条:これまでの作品よりも彩度を高めにしています。特に前作の『スカイコード』がかなり彩度を抑えめにしていたので、そこは印象に残るかもしれません。『スカイコード』は夜のシーンが多かったのですが、『True Colors』は夜が少ないんですよ。そういうこともあって全体的に彩度が高めになっているということもあります。あとは光と影の演出。室内などは思いっ切りメリハリをつけています。
──その他、絵の部分でなにかありますか?
東条:これは塗りとは違うのですが、今回線画の輪郭線がこれまでより太くなっています。これは立ち絵でも一枚絵でも同じなのですが、『スカイコード』と比較して明らかに太いです。この輪郭線の太さと彩度の高い塗りのおかげで、ビジュアルはデフォルメが効いてポップでアニメっぽい印象が強くなっているかもしれません。
──輪郭線を太くしたのは、どういった狙いがあったのでしょう。
東条:これについては、まうめんさんが自主的に取り組んでくれました。どんな意図なのが詳しくは聞いていないんですが、色々考えて取り組んでくれたおかげで、作品に合ったグラフィックになったと思います。これまでの作品のCGより、美少女ゲームファンに馴染みのあるCGになっているのではないでしょうか。
▲これまでのMELLOW作品に比べてアニメ塗りっぽいコントラストが高めのグラフィックで描かれていて、海が舞台の本作に合っている
OPムービー再生数はゆずソフトのOPから流入!?
楽曲などのプロモ展開のほか海外展開も視野に
──ここからはプロモーションにも関わってくることになりますが、今回もOPムービーが公開になっています。主題歌もMELLOW作品では評価の高い部分ですが、今回はいかがですか?
東条:そう言っていただけるとありがたいですね。YouTubeの再生数はこれまでの作品の中で一番良いです。でもアナリティクスを見ると、『ライムライト・レモネードジャム』(ゆずソフト)のOPムービーからがすごく多いんですよ。おこぼれをいただけました(笑)。新作美少女ゲームの動画ということで、レコメンドされたんですかね?
──まあ、流入経路はともかく、沢山の方に見てもらえたのは嬉しいじゃないですか(笑)。
東条:もちろんですけど、ゆずソフトさんのあのアニメを見た後にうちのムービーをと思うと複雑ですね(笑)。今回の主題歌「コントラスト」は、作品に合わせてサウンドも明るめにしているので、よりポップになっていると思います。『ライムライト・レモネードジャム』が9月発売で『True Colors』は11月発売なので、流れでムービーを見て気になった方はこちらもお願いします(笑)。
──MELLOWさんはこれまで大体1年に1本ペースで新作をリリースされてきていますが、今後の展望などはいかがでしょう?
東条:新作はもちろんなのですが、翻訳が上手くいくのであればこれまでの作品の海外展開を考えてもいいのかなと思っています。もちろんベタ移植ではなく、海外展開に合わせての書き下ろしなどを用意することも考えています。
──海外展開という話が出るのも、国内での美少女ゲーム市場が厳しいという状況があるから。特にシナリオ系作品は作品によって動き方が変わってきますよね。そんな中でシナリオ系作品を作り続けるモチベーションはなんでしょう。
東条:それしか作れないんですよ(笑)。自分もユーザーとして美少女ゲームを遊んできましたし、キャラ萌え作品の方が売れているというのも理解してはいるんですが、自分の中でキャラ萌えに対する解像度が低いんですよ。むしろ自分の解像度が高いシナリオゲームに逃げているとも言えるんです。うーん、一つあるのは、シナリオ系作品であれば自分の中で良し悪しがジャッジできるんです。だからシナリオに特化した作品を作ることしかできないんですが、『スカイコード』で沢山暖かい反響をいただけて、『True Colors』も同じように受け入れていただければと思っています。
▲予想外の理由でYoutubeの再生数が増えたものの、純粋にクオリティの高い東条氏によるサウンドトラックも同時発売。作品に合わせてこれまでのMELLOW作品より明るくポップな方向性になっているとのこと
これまでよりポップな絵柄だがそこにあるのはMELLOWらしい物語
これまでと異なる明暗をはっきりさせコントラストの効いたビジュアル、明るめのサウンド、そしてそこに込められた喪失とそれを乗り越える若者たちの青春物語。本作はMELLOWらしさをより多くの人が楽しみやすくなっている、年末に向けての期待作の一作だ。
少しでも気になる人は体験版をプレイしてみよう!! そしてもっと本作を知りたくなったらBugBug本誌のインタビュー全文も読んで欲しい。メインヒロインに込めた思いなど、ここに掲載できなかったお話も載っているぞ。
▲発売は11月予定。あと一ヶ月程度なので気になっている人は早めに予約しておこう
True Colors -memories of the abyss-
MELLOW
2025年11月28日発売予定
AVG、DVD、18禁、Win10/11
パッケージ版:8,250円(税込)
ボイス:あり、アニメ:なし
原画:まうめん、さかむけ
シナリオ:垂花、由比燈汰
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