キネティックノベル大賞受賞作『ホーリーアンデッド』!! その誕生の経緯や見どころを聞いてみた
ビジュアルアーツの展開するキネティックノベルスの新作は、キネティックノベル大賞で大賞を受賞した『ホーリーアンデッド』。
キネティックノベルのみならず小説の書籍化、コミカライズと幅広く展開してく本作は一体どんな原作で、どんなゲーム化なのか。BugBug12月号ではカラー6ページで関係者に直撃インタビュー!! ここではその一部をお見せしよう。
▲本作の中心となる原作者、ディレクター、プロデューサーの三名にお話を伺ったぞ!!
「小説家になろう」に掲載された人気小説が
第1回キネティックノベル大賞で大賞受賞
──まずはばーどさんのプロフィールをお聞きしたいと思います。今回の『ホーリーアンデッド ~非モテでぼっちの死霊術士が、聖女に転生してお友達を増やします~』の原作小説を執筆されたとのことですが、そもそもどのような経緯で小説を書くようになったのでしょう?
ばーど:そもそも文章を書くこと自体小さい頃から好きだったんです。中学生の頃から大学ノートに小説っぽいのを書いていました。
──あくまで個人の趣味で書かれていたんですね。
ばーど:そうです。その後も自分の趣味として書いては個人のHPで公開していたりしたんですが、当然誰も見る人はいませんでしたね。その頃から小説の新人賞に応募したりしていたんですが、第一次審査でサクッと落選したりでしたね。
──それが今では小説家デビューです。転機と言うか、きっかけはあったんですか?
ばーど:「小説家になろう」という投稿サイトがあることを知りまして、それで自分も投稿するようになったんです。
──「小説家になろう」からデビューした小説家も増えていますよね。やはり影響の大きな場所なのでしょうか?
ばーど:大きいですね。先ほども言ったように、個人HPで公開してもほとんどの人の目には止まらないんですよ。でも「小説家になろう」ならどんな凡作でも何人か読んでくれる。これは凄いサイトだなって思いました。
──確かに見てもらえるというのは大事ですよね。それで著作しながらキネティックノベル大賞に応募したわけですか。
ばーど:「小説家になろう」って、様々なコンテストが開催されているんですよ。ちょうど『ホーリーアンデッド』を書いている時にキネティックノベル大賞の開催を知りまして、『ホーリーアンデッド』はTVアニメをイメージして書いていたこともあって、「キネティックノベル大賞のコンセプトに合っているな」と思い応募したという流れですね。
▲「小説家になろう」サイトで新たな才能を発掘すべく行われた第1回「キネティックノベル大賞」で受賞した本作。今後も新人の登竜門となるかも!?
メディア展開が前提だからこそキャラ重視
──こういう作品が第1回に間に合ったというのは、ビジュアルアーツ的にも大きかったでしょう。
豊泉:小説部門は開催初期は、キネティックノベル化を意識した選考を行っており、『ホーリーアンデッド』は、まさにそれにふさわしい作品です。ですが「小説家になろう」に掲載されている応募作品は、構成や展開として小説書籍などには向いておらず、またキネティックノベルのシナリオとしても難しいものでした。そのことから、キネティックノベル大賞の外部協力をお願いしている小説家の箕崎准さんにもアドバイザーとして参加いただき、キネティックノベル化に繋がる書籍化を進めました。
──ところでばーどさんは応募当時、ビジュアルアーツをご存じでしたか?
ばーど:もちろんです。イメージとしては「Keyの親玉」(笑)。なので「うわ、すげえな」って思いました。
豊泉:『ホーリーアンデッド』が大賞を受賞した理由として、一番はキャラクターが立っていることでした。見た目と性格のギャップに面白さを感じたこともあって、ここをもっと広げていけばキネティックノベル化できる作品だと思いましたね。物語の展開を見てもアニメにして面白そうだというのもありました。
山本:僕は選考委員に入っていなくて受賞が決まった後に読んだんですが、「これまでのビジュアルアーツにないものだ」と思いました。「これをキネティックノベルにしたら今までにない新しい風が吹くぞ」と思いつつ、これをもし自分がゲーム化するならこうしたい、こう見せたいということを考えましたね。
──当時はすでにディレクターをすることが決まっていたんですか?
山本:いえ、まったく(笑)。自分ならこうするって思いながらも「これを作るのは大変だろうなあ。誰がやるのかなあ」と思っていたら、こっちにお鉢が回ってきたんです(笑)。
▲魅力的なキャラクターが多いことが本作の魅力。だがそれは低価格タイトルで出す上での悩みにもなったようで…
ビジュアルアーツに新風吹き込む可能性も
──既存のビジュアルアーツになかった新しさというのは、具体的にどういったところでしょう。
山本:作品そのものが明るくて優しくて楽しい物語ですよね。それまでのキネティックノベルはもう少し湿っぽい作品が多かった。そこに新しさを感じたというのはありますね。
──なるほど。
山本:それともう一つ、『ホーリーアンデッド』の主人公・ユリィシアって今っぽい女の子なんですよ。自分が好きなものに一途で他は気にしない。何かに熱中している女の子の像が推し活女子に重なったんですね。でもそういう主人公やヒロインってこれまでのビジュアルアーツ作品にいなかった。これをどうゲームに落とし込んでいくか、自分ならできるかなと思っていたところに、本作のディレクターの話が来たんです。
ばーど:普段直接感想を言ってもらう機会が少ないので恥ずかしいですね。ありがとうございます。例えばなろう系小説の場合、ヒロインが好きな相手は主人公になりますよね。でもユリィさんは美少女博愛主義者で男に興味がない。つまり物語の中で「誰かのものにならない美少女」なんです。だから読者の皆さんは安心して推せますよね…っていうキャラクター像が生まれた時、これはいけるかもって思いました。
山本:だから従来の恋愛系ノベルゲームの文法では語れないんですよ。ゲームの公式HPを作る時にも「どの女の子が攻略ヒロインなんですか?」って聞かれても、そもそも攻略ヒロインなんていないんですから(笑)。第1巻部分で登場する主要キャラは男の方が多いですしね。ノベルゲーム化するのは難しいだろうけど、キネティックノベルであれば作れるかな、というのはありました。加えて基本的になろう系の文法で作られている原作なので、新しいファン層を獲得できるとも思っています。
▲短いながらも心に強く残るストーリー性の高い作品群。それゆえにちょっと重いイメージがあるキネティックノベルだったが、今回そこに新たな路線が加わる
ノベルゲームならではのテンポいい会話が魅力
──そんな『ホーリーアンデッド』ですが、原作書籍は何巻まで発売されているのですか?
ばーど:現在2巻までですね。ネットにアップしたボリュームで言えば全部で6~7巻分になると思いますが、そこは書籍用に精査する必要があります。基本的に「小説家になろう」ってユーザーの目離れが非常に早いので、こちらも短いスパンで更新していかなければいけないんです。『ホーリーアンデッド』は1日おきくらいのペースでアップしていたので、内容をじっくり吟味する時間がないんです。書籍化にあたってはかなり手を加えていますし、これからも精査していきたいと思っています。とはいえできれば最後まで書籍化したいと思っていますね。
──ゲーム化はどこまでになるのですか?
山本:現在制作しているキネティックノベル版は、1巻と2巻のゲーム化ということで進めています。とはいえ原作小説は1巻分で区切りよく終わっているんです。なので2巻まででも中途半端な感じはありませんね。むしろ1巻と2巻のエンディングがあるので、1本でクライマックス2回って感じで楽しんでもらえると思います。
──そんな『ホーリーアンデッド』ですが、キネティックノベル版はどういったストーリーになるのでしょう?
山本:物語的には小説版を踏襲したものになります。ただスポットの当て方が少々違っていて、小説版は聖女に転生したネクロマンサーが繰り広げるすれ違いの物語になるのですが、キネティックノベル版はよりコミカルに振っていて「ボッチの死霊術師が聖女に転生したせいで、本来なら有能なのに残念聖女になってしまう」といった感じになります。
ばーど:『ホーリーアンデッド』は明るくて楽しいお話を書きたいと思っていて、暗いエピソードは入れていないんです。その意味ではゲームがポップになっていてPVのノリも大好きなんです。
▲小説版よりもより明るく楽しいノリになったキネティックノベル版。違いを楽しむのもまた一興🎵
こだわりのOPムービーは公開したら必見!!
山本:「キネティックノベル」と銘打っていますが、それで美少女ゲームのユーザーに構えてほしくなかったんです。でも『ホーリーアンデッド』は絵柄もポップなので、低価格のノベルゲームを楽しむくらいの気持ちでプレイしてほしいんです。
──確かにこれまでのキネティックノベル作品だと「感動的なドラマを楽しもう」みたいな気持ちがあって、「気軽に」という感じにはならないかもしれません。
山本:そこはぜひティザームービーも見てほしいですね。公開から1カ月で既に3万回再生されていてなかなか好評です。私がコンテを切ったんですが、1分弱の動画に17回リテイクを出しました。制作チームはよく作ってくれましたよ。
──ティザーPVではあまり目立ちませんが、バックで流れているラップっぽい曲、あれは主題歌になるのですか?
山本:そうですね。今OPムービーを作っていますが渾身の出来になっていますよ。もちろんコミカルでありながら、ビジュアルアーツやKeyの持つ純愛っぽさなども盛り込んであります。明るくてポップだけど、それだけじゃない主題歌とOPムービーに仕上がっていると思います。
ばーど:先ほど執筆している時に自分の中でアニメ版『ホーリーアンデッド』を流していたって言ったじゃないですか。もちろんOPとEDもあって、OPはちょっとカッコいい曲で、EDはキャラがダンスするようなコミカルな曲だったんですよ。このOPはまさにイメージしていたEDそのままですね(笑)。
山本:実は歌詞にもこだわりがあって、最初にお話しした「今風の推し活女子」を意識しているんです。ぜひ女の子がSNSで踊ってみた動画を上げてくれないかなと思っています(笑)。
▲原作者のばーど氏もアニメ化したイメージを描きながら執筆していたというだけに、OPムービーにはとても力が入っているぞ
演出強化に30種類以上の表情差分を用意
キャライメージピッタリのCVにも注目
──色々お話を伺ってきましたが作品の楽しさは十分伝わってきました。となるとやはり大事なのは主人公のユリィシアですね。
山本:今回キャラクターデザインにアニメ業界で実績のある野口孝行さんをお招きしました。というのも、書籍版のユリィシアのキャラデザインは重厚で趣深い感じなんですね。それ自体は素晴らしいんですが、ゲームではよりポップ感を出したかった。そこで野口孝行さんの繊細な線でキャラクターデザインをしてもらい、塗りをアニメ風に仕上げることで、書籍版のキャラクターデザインの良さを残しながらよりポップなユリィシアを作り上げることができたんです。しかもそのポップさが表情豊かなキャラにしても違和感なく楽しめるようになったんです。セリフは小説と同じでも、目が光ったり無関心な表情になったりという表情演出で、よりキャラクターを魅力的に描けるようになりました。
ばーど:小説、コミック、ゲームと様々な方が関わっている『ホーリーアンデッド』なんですけど、ユリィさんというキャラの共通認識ができているんですよね。これだけ沢山の方に好きでいてもらえるキャラになったというのは嬉しいです。
山本:そして本作ではユリィシアとして登場しているシーンと、中身のフランケルが出てくる部分があって、小説でもそこの描き分けは上手く出来ているんですよね。だからゲームでもセリフだけをフランケルにするのでは面白さが伝わらないと考えています。
ばーど:転生してもフランケルは基本的に変わっていないんです。ただ美少女に転生してしまったから、美少女としての価値観が加わったくらいなんです。
山本:そういう部分を演出するために、30種類以上の表情差分が必要だったんです。書籍だとイラストの点数が限られるので、やっぱりいい顔の絵を入れたいじゃないですか。でもゲームだともっとコミカルな表情を盛り込むことができますから、そこはこだわったところですね。だから小説ファンの方がゲームをやると、ユリィシアの印象が変わると思います。
▲様々なメディア展開で広がる『ホーリーアンデット』の世界だが、主人公であるユリィシアのキャラが共通認識としてぶれないので、切り口が異なってもどれも違和感なく楽しめるぞ
【発売日決定】ゲーム版『ホーリーアンデッド』ティザーPV【CV:長谷川育美/桑原由気】
キネティックノベルに新風を巻き起こす本作の魅力をBugBug12月号でチェック!! 続く新たな才能のデビューにも期待★
BugBug12月号にカラー6ページに渡って掲載されたインタビュー全文では、低価格作品に収めるには魅力的な要素が多すぎる本作を成功させるための努力──海外展開や発売に向けてのプロモーションなど戦略的なお話も多く、興味深い内容となっている。
そして「キネティックノベル大賞」からこうしてキネティックノベル、小説の書籍化、コミカライズ…と展開していく実例は、これからデビューを目指す人たちにとっても勇気をもらえる話だろう。ぜひBugBug12月号本誌で全文を読んでモチベーションを上げて欲しい。
▲転生系の作品ながら、復讐も悪意もない明るく魅力的な世界が描かれる。低価格作品とは思えないほどリソースを注ぎ込んで作られているの要チェックだ!!
ホーリーアンデッド
~非モテでぼっちの死霊術士が、聖女に転生してお友達を増やします~
キネティックノベルス
2024年12月20日発売予定
AVG、DVD/DL、全年齢、Win10/11
パッケージ・通常版:1980円(税込)、パッケージ・豪華限定版:10780円(税込)、DL版:1980円(税込)
ボイス:あり、アニメ:なし
キャラクターデザイン:野口孝行
原作:ばーど(キネティックノベルス刊)
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