20年続いたALcotブランドの解散宣言──最終作『Clover Memory’s』とブランド設立時のレアなお話しを語っていただいたぞ!!
現在、クラウドファンディングと共に開発が進められているALcot最新作『Clover Memory’s』。ALcotはこの作品を最後にブランド終了を発表。ALcot20周年記念作品であり、最終作となる本作へ込めた想いを、BugBug5月号ではブランド20周年の歩みと共に、代表の宮蔵氏&シナリオの空下元氏の二人に語っていただいた。カラー6ページに渡って語られた生々しくリアルな言葉、その一部をここで紹介しよう。
▲本来クリエイターだがそれまで作ってきた作品を残すために代表となった宮蔵氏と、2008年の『ENGAGE LINKS』からALcotでメインライターとして活躍してきた空下元氏にインタビュー!!
5年後にゲーム作りが
できるか考え畳む決断を
──最終作と聞いて驚きましたが、今作を最終作にすることは最初から考えてたんですか?
宮蔵:イエスでありノーであるという感じなんですが…最初は普通に作る気でいたんですよ。ただ、丁度コロナが流行っていた頃に大きく体調を崩して寝込んでしまった時期がありまして。
──お身体を壊されてしまったんですか…。
宮蔵:今はまだゲームを作ったりイベント行ってみたいなこともできるんですが、あと5年後にはどうだろうと考える機会があり、これは無理かもしれんと思ったんですよ。5年経った時に今と同じカロリーを持ってゲームを作れるかって言ったらおそらくノーだなと思ったんです。ゲームを作るってものすごくカロリーを使うので、そのカロリーがなくなったときに惰性でゲームを出したところで、ユーザーさんにも失礼だなって思いましたし…。あと惰性で作り続けるのは個人的にも嫌だなって。なのでこの辺でゲーム制作の表舞台から身を引こうという決断をしたんですよ。
──なるほど。
宮蔵:それで会社はどうすんだという話になり、スタッフのみんなに「全部渡すからこのまま続ける?」って聞いたんですが、全員が嫌だって(笑)。宮蔵が代表じゃなきゃ嫌なのか、単純に会社を運営するのが嫌なのか…。私も分かるんですけど、みんな生粋のクリエイター気質なんですよね。
──『Clover Memory's』の企画自体はずいぶん前から動いていたんですよね?
宮蔵:実はキャラソンのクラウドファンディング(以下、CF)以前からコツコツ進めていました。当時から今回CFを使うことも検討していましたので、キャラソンのCFはその試金石でもありました。予想外に長期化してしまい、その難しさも肌身で知ることもできたので、やって正解だったと思っています。本作の為に色々準備することもできましたしね。
▲いずれCFで作品を作ることを見据え、資金石の意味も兼ねて行った『Voices』のCF。『Clover Memory's』のCFではこの時の経験が大いに役立った模様
──リターンも色々予定されてるんですよね?
宮蔵:リターンの中身はあおなさんの描き下ろしの本作のヒロインが集合したピンズとか、あとはあおなさん描き下ろしの万年カレンダー。これも『Clover』シリーズヒロインが登場するカレンダー。それから20周年記念のメモリアルブック。宮蔵が語るALcotの起こりから、解散に至るまでのストーリーを綴ったものとか。お付き合いのあった絵描きさんのゲストイラストとかの入ったコースになりますかね。
みんなの“自分の中の正史”を壊さぬよう
あえて前作のメインキャラは語らずに
──本作のお話もお伺いできればと思いますが、『Clover Day's』の世界観、雰囲気などを継承しているとのことですが、詳しく教えていただけますか?
宮蔵:過去作からサブキャラクターは継投されます。例えば西園寺先生とか凛先生とか登場します。舞台も同じ学校で同じ地域、なので前作の10年後っていう時間だけが流れている世界観です。ただ解像度がフルHD対応になるので、背景とか全部描き下ろしにはなりますけれど、どこかで見たような景色が作品中にも色々と現れると思います。
──前作をプレイした人は、違和感なく楽しめそうですね。
宮蔵:ええ、安心してそのまま遊べるかなと。でも10年後となると色々と違う部分も出てきますよね。前作から登場のサブキャラクターも、当然新規に描き下ろしているので多少違いは出てくるかもです。あと制服の仕様が若干変わったりしてますね。
── そういう細かいところはブラッシュアップされてるって感じなんですね。ちなみに前作のメイン系のキャラは出てこないんですか?
宮蔵:それは出さないですね。AVGって結末が人によって違うじゃないですか。なので例えばですが、自分の中の正史は玲亜とくっついた白兎の世界観なのに、新作では莉織とくっついたのが正史になっているような表記をしてしまうと、俺の中での正史は違うのにな…というようなパラドックスが起きちゃいますよね。そういうのが嫌なので、プレイする人には、お気に入りのキャラがいて、自分の中ではそれが正史なんだよって思っていて欲しいなと。なので誰ともくっつかなかったサブキャラサブヒロインたちは普通に登場します。けどメインヒロインたちのその後は作中ではほぼ語られないです。
▲作品世界は『Clover Heart's』『Clover Day's』から地続きなので、成長した姿で再登場するキャラも多い
活動終了にかけて作品のテーマは
学生生活最後の1年を描く“卒業”に
──今作のストーリーが気になりますが…W主人公でもありますし。
宮蔵:どこまで話していいんだろう(笑)。固めきれてないので下手に喋っちゃうとライターに怒られちゃうし…。でも基本的にはハッピーエンドになりますよ。ただ卒業ということで若干ビターな一面が出るかもしれませんが、基本的には綺麗な読了感で終われるような作品を目指してます。
──よかった、一安心です。最終作で最後だからヒロイン全員アレしちゃいましょうとかなったらどうしようかと…。
宮蔵:そう言うのはウチのカラーじゃありませんので安心してください(笑)。…せっかくなのでライターも呼びましょうか(笑)。ちょっと待ってください…。
空下元:空下元と申しますよろしくお願いします。今回の企画とシナリオ担当です。
──よろしくお願いします。では改めて、本作のストーリーについて、空下さんからもお話を伺えればと。
空下元:テーマが卒業いうことで、学生生活最後の1年を通して主人公とヒロインの成長を描くという王道青春モノですね。卒業というのが、要は活動を終了しますっていうのとかけて、かつ学園モノの最後の記念になる話を書けたらいいなっていうところでもありまして。
▲双子の主人公、それぞれのストーリーが交錯する構成は『Clover Heart's』でも特徴的なポイント。本作もそれを引き継いでいる
メイドが巨乳じゃないって言ってたので
そこは巨乳にしようと私は反対しました
──今作に登場するキャラクターについて、一言ずつ作中のポイントや魅力などをお話いただけますか?
空下元:まず、ユナという双子の姉。主人公の弟の方との物語が描かれるんですが、彼女は見た目からツンツンしそうな感じなんですけど、ツンツンしてるが故に友達がいなく恋人もできない。その辺のナイーブなところが弱くて可愛いくて魅力になります。あと、キャラデザがあゆま紗由さんなので胸がでかい(笑)。双子キャラで胸がでかいのはALcot初なので。
──(笑)。では二人目はヒナですかね。
空下元:ヒナは主人公の兄の方と対になっているキャラクターですね。この子はALcot伝統のふわふわしてて可愛いワンコ系妹って感じです。
──次は花音かな?
空下元:花音さんはシリーズでおなじみのメイドさん枠なんですが、今回初めてそのメイドさん枠で攻略対象になったところが注目すべき点ですね。今まではサブキャラで攻略対象ではなかったので。この子も胸がでかいですね。
──(笑)。胸の大きさって最初の段階で決めてたんですか?
空下元:割と最初から決めてました。
──その辺決めたのはどなたが?
空下元:どうでしたっけ? 私が決めたんですよね。
宮蔵:ほぼ決まってたような気もしますけど…。メイドが巨乳じゃないって言ってたので、そこは巨乳にしようよって、私は反対しました(笑)。会社的には貧乳が多いブランドですけどね。
▲双子の兄弟というW主人公と対になる立ち位置の双子の姉妹ヒロインだ
記念になるものを作ろうと気合を入れました
──しかも彼女、武闘派なんですか?
空下元:メイドさんなんですけど、本業が要人警護…双子姉妹についてきたボディーガードさんで、あのメイド姿は仮の姿です。メイドさんが銃を撃つのがカッコ可愛いので、そこは外さないようにしようと。
──わかります。では4人目の真心ですかね。
空下元:主人公の兄の後輩にあたり、異文化コミュニケーション研究会の副会長さん。この子の魅力は見た目でもわかるように引っ込み思案なんですけど、根がHというか、スケベなところがあって、言葉の端々がちょっと妄想してるみたいなところがあります。そこが可愛いんですが。ちなみに胸は脱いだら凄いタイプですよ。
──では最後の七海ちゃん。
空下元:最後の七海は弟側の幼なじみ。この子が一番ちっちゃくて一番ぺったんこ(笑)。凄い元気のある熱血系で、この子とのやり取りは漫才のようなノリツッコミみたいな感じです。あと割と主人公たちを引っ張ってく感じですね。
──キャラクターが多くて、賑やかな物語になりそうですね。さて、最初の方に宮蔵さんにお話を伺ったのですが、今回で最終作というお話が出たときってどうでしたか?
宮蔵:最初は20周年になりそうだから、それに耐えられる企画にしようかっていうのが先だったんですよね。
空下元:ですね。それでこの流れなら『Clover』かなって考えてる時に最終作かもみたいな流れがあって、そこでテーマを卒業にしようと。記念になるものを作ろうと気合を入れました。
▲みんな魅力的なメインヒロインたち。もちろんここに紹介していないサブヒロインたちも魅力的
20年前は同人バブルだったからよかったものの
そうじゃなかったらALcotなかったですよ
──ALcotの20年間の出来事などをお伺いできればと思いますが…。20年となるとブランドや作品作りの在り方、また業界の変化なども随分ありましたので、ぜひ印象に残っていることをお話いただければと。まずはブランド立ち上げの辺りからとか?
宮蔵:なかなか難しいですね、語ってはヤバいようなところもありますし(笑)。20年って短いようで長いので…実は立ち上げはそんな美しい話ではないんですよね。どちらかというと、業界残酷物語的な側面がでかいんですよ。『月陽炎』っていうのをすたじおみりすで作らせていただいて、ファンディスクが出るぐらいまで好評だったんです。それで社員として次やりませんかっていうお声掛けはあったんです。でも給料面で折り合いが付かずお断りさせていただきました。高卒の初任給並みだったので(笑)。みんな貯金切り崩しながらやってましたからね。ただ、二次創作の同人チームを商業デビューさせてくれたこと。これはとてもありがたかったです。薄給ではありましたが、人件費を調達してくる力は持っていませんでしたし。切り抜きが入ったチラシや販促等(当時賞もとっていました)、色々頑張ってくれたことは今でもとても感謝しています。
──そんなことになっていたんですね。
宮蔵:それで次どうするって話になり、まだ同人バブルでうちのサークルも体力があったのでお金を出しつつもう1本何か出しましょうっていうんで作ったんですよ。その作品を回しつつ、次の企画を練ってそれで出たのが『Clover Heart's』だったんです。企画を進めていてどうやって作ろうかというときに、名前を伏せさせていただきますが、とある方からウチで作らないかと声をかけていただいて。
──なるほど。
宮蔵:渡りに船で、給料も月に16万ぐらいもらえるって話だったので何とか成り立つなと。でも2ヶ月ぐらいでその会社、来月から給料出ないかもしれないって(笑)。もう開発止めるしかなくて困っていたら、彩牙の代表の方がウチで作りなよって。それで立ち上がったのがALcotなんです。同人バブルだったからよかったものの、そうじゃなかったらALcotなかったですよ。
──想像以上に凄いことになってますね、しょっぱなから…。
▲ALcotのデビュー作にして大ヒット、多くのファンを得た『Clover Heaert's』だが、その誕生まではここでは書ききれないほど波乱の連続だったようで…
ALcot20年間の秘話はCFのお返しの
メモリアルブックに書く予定です
──ちなみに一番売れた作品ってのはどれになるんですか?
宮蔵:『Clover Heart's』になるんじゃないかな。あの頃は全盛期っていうのもありましたし、一番古いタイトルでもありますから。移植とか含めても20000本以上は出てたんじゃないですかね。正しい本数は分からないですけど。
──途中で姉妹ブランドのALcotハニカムもできましたよね?
宮蔵:これ私もうろ覚えなので…という前置きをしつつのお話になりますが、自分らが本家のALcotのラインをやることになって、今までやってたチームのボスはどうするんだという話が出てハニカムが作られた気がするんですよね。でも、途中でそのボスもゲーム制作をやめちゃったんで、その後どうするかっていう話がこちらに向けられて…。で、そっちも俺が面倒みんの? って(笑)。どうしようかなと悩みつつ、おるごぅる先生との出会いとかもあり、外注さんを使って本件とはちょっと違った方向の作品を作っていこうと。
──ALcotを畳むとき、ハニカムブランドはどうするか決めてるんですか?
宮蔵:ハニカムは閉鎖しないです。なので何か思いついたときにハニカムのブランドでっていうのはあります。何か作るカロリーがあるときに使うかも…ですね。
──それにしても20年もやってると色々とありますね。
宮蔵:そうですね。この辺の詳細の話はCFのお返しのALcotのメモリアルブックに書く予定なので、ぜひご支援くださいと(笑)。
▲『幼なじみは大統領』でそれまでのALcotと違うコミカル路線・新本シリーズを確立できたが、これを出せるまでに社内的には色々あったようで…その内容は本誌で確認してほしいが、メモリアルブックではさらに詳細な話が載ると聞いて驚き!!
ALcotとしての活動は終了となりますが
最後の幕引きを皆さんと一緒に楽しみたい
──『Clover Memory's』の発売に向けて、CF以外の予定が決まってたら教えていただけますか?
宮蔵:決まってるものはないですが、やりたいものはあります。これもCFになりますが、ALcotの解散ライブやりたいと思ってます。それと前回作ったヒロインのキャラソンアルバムのVol.2、これも出したいなと。あとはALcotの全部が入ったコンプリートボックスですか。ファンならもう全部持ってんじゃないの? って聞いたんですけど、それでも全部入ったまとめボックスはコレクションとして欲しいって話があったんで、コレクターボックスみたいなものを作りたいなと思ってます。
──ちなみに、初期の作品は今のOSでも動くんですか?
宮蔵:動きますよ。正式対応の確認が取れてないので表立っては言えないんですけど、前にWindows8用のパッチを出したんです。このパッチを入れればWindows10とか11でも動くはずです。あと今DL販売してるものはパッチが当たっているので、そのまま動くと思います。
──おお!! ということは今購入しても普通に遊べるんですね。ぜひ今作の発売前に、過去作を遊んで欲しいところですね。それでは、最後にBugBugの読者の方々に一言ずつメッセージをいただけますか?
宮蔵:20年間ずっと追いかけてくれて本当にありがとうございます…と。ALcotとしての活動は終了となりますが、最後の幕引きを皆さんにと一緒に楽しみたいというか、盛り上げたいというか、華々しく笑ってお別れができればと考えておりますので、CFの応援よろしくお願いいたします。
空下元:CFはファンのみんなと一緒に作っていく物という意味合いも強いので、一緒に『Clover Memory's』を盛り上げ、一緒に共犯になろうぜみたいな意気込みで応援してくれると嬉しいです。
『CloverMemory's』ティザームービー
▲BGMが『Clover Heart’s』のピアノアレンジ…ALcotのファンにはこれだけでもう泣ける
そんなヤバいことまで話していいの!? とドキドキなインタビューを読んで、CFにも支援しよう♪
ここに掲載したインタビューはBugBug5月号に掲載された6ページの内容の一部だが、ALcot20年の歴史を振り返るお話ではさらに具体的に、本来シナリオだった宮蔵氏が当時の代表と衝突してチーム分裂した話や会社消滅の危機などを経て代表を継ぐことになった経緯が、業界の闇的な話や予算・本数などの数字と共に生々しく語られて、かなりヤバい。それだけにALcotファンには興味深く面白い話なので、ぜひBugBug5月号で読んでみてね!! そして『Clover Memory’s』のCFが成功するよう、欲しい人はしっかり支援しようネ★
▲記事内では、これまでの作品全てをALcot Historyとして紹介しているのでそちらも見てね!! それにしても、この画像で断片的に読める部分だけでも、話してる内容のぶっちゃけっぷりが凄い