デビューから20年ものベテランでありながら人物像が語られることは少なかった保住圭氏はどんな人物なのか!?
BugBug11月号の『クリエイター列伝EX』では、保住圭氏を紹介!! 保住氏は「イチャラブ恋愛模様を描かせたら右に出るものなし」とファンの評価も高いシナリオライター。過去に漫画家を目指していた時期もあったそうで、実はイラストも上手いし漫画原作もこなすマルチクリエイターでもある。そんな保住圭氏に、20年に渡って仕事を続けていたベテランシナリオライターとしての極意を直撃インタビュー!!
▲恋人になってからのイチャエロち高い評価を受けているシナリオライター・保住圭氏。今回のインタビューでは、氏のこれまでの歴史を振り返ってもらったぞ
「普通」にやってきて重ねた20年
実は職人気質のシナリオライター
──保住圭さんは今年でシナリオライターデビュー20年になりますね。おめでとうございます。
保住:ありがとうございます。よく生きてこれたなって感じですね(笑)。実は僕、今まで営業をかけたことがないんですよ。いただいた仕事を続けてきたら20年って感じ。なのでクライアントさんのおかげですし、いただいた仕事を真面目にやってきて良かったなあと思っています。
──しかも20年間、毎年のように複数作品が発表されているんですよね。
保住:そうですね。多分デビュー以来、新作が発売されなかった年はなかったんじゃないですか。
──これを続けてこられて、やはり大変なこともあったと思いますが……。
保住:正直、毎回毎回「今回が一番大変だ」って思いながら書いていますけどね(笑)。ただ自分の場合はやることが明確になっていますし、自分に何を期待されているかも理解していますから、そこを押さえながら書いている感じですね。だからやっぱり「普通に仕事をし続けていたら20年経っちゃった」って感じなんです(笑)。
──そんな感覚なんですね。
保住:確かにものを作ってきたわけですが、自分のことを「クリエイター」とは思っていないんですよ。どちらかと言うと「職人」。オーダーに応えて書いているわけですから。そもそも自分のIPでもないですから。
▲今まで営業をかけたことがないという保住氏だが、ここ2年だけでもこれほどの作品に関わっている。その腕を見込んでの依頼は止まらない
漫画志望のはずがシナリオライターへ
ベースは王道少女漫画と一般文芸!?
──とはいえファンから見ればいまや美少女ゲームのシナリオライターを代表するお一人だと思います。そんな保住さんがシナリオライターになるきっかけを教えてください。
保住:長いですよ(笑)。
──ぜひぜひ(笑)。
保住:もともと小説も漫画も描くタイプだったんです。でもいろんな事件があってオタクへの差別感情が強い時期だったので、ひっそりそういうことをしていました。いわゆる「隠れオタク」ですね。でも大学に入って「さすがに表立って活動してもいいかな」と思って漫研に入り、漫画家を目指していたんですね。でも漫画を描く中で、頭の中に浮かんでくるビジョンに手が付いていかないことにイライラしてしまって。そんな時に、後にとらのあなでイラストを描くようになるむっく先生──高校の同級生だったんですが、彼から「自分が絵を書くからきみがシナリオを書いてゲームを作ろうよ」と誘われたんです。
──そんな人脈があったんですね。それで書かれたんですか?
保住:はい。と言っても100kbくらいのシナリオですけどね。ただ結局その企画は、むっく先生が忙しくなってしまうことでお蔵入りしてしまうんですけど、「せっかく書いたなら、どこかのメーカーに送ってみれば」と友人に言われて、それでLeafさんに送ってみたんです。
──そこでも友人からのアドバイスですね。
保住:結構流されるままなんですよ(笑)。それでLeafさんの一次選考に通って、大阪で二次試験を受けたのですが、結局不採用になってしまいまして、それでもその時期に書いたシナリオをいろんな会社さんに送ったところ、お仕事をいただけたというわけなんです。
──ちなみに大阪に住まれていたのはいつくらいでしたか?
保住:ちょうど2000年。『こみっくパーティー』発売後で、シドニーオリンピックを新大阪の駅で見ていました(笑)。
▲元々漫画家を目指していたが、高校の同級生だったむっく先生の誘いをきっかけにシナリオの道へ、そしてまた友人のアドバイスで美少女ゲームメーカーに応募し、Siriusから声をかけてもらうことに
チームで作る意識芽生えた人気作FD
仲のいいチームで大きな成長も
──そんな保住さんのデビュー作は2003年の『まいにち好きして』(Sirius)ですよね。
保住:Leafさんがダメになった後にシナリオを送った会社の一つですね。「企画はあるから」と声をかけていただけました。そこから『魔法はあめいろ?』、『めいどさん★すぴりっつ! ~わたしの中にいるあなた~』と3作続けてやらせていただきました。
──そして2006年には『はぴねす!りらっくす』(ういんどみる)に参加されていますよね。人気作のFDから参加というのは大変だったのではないですか?
保住:実はこの作品で初めて他のシナリオライターさんとお会いしたんです。
──え、そうなんですか?
保住:Siriusではシナリオ統括をやらせてもらったりもしたんですが、基本的に上がってきたシナリオを修正するだけだったので、直接お会いすることはなかったんですよ。だからライターを初めて3年目で初めて他のライターさんと会いました。
──じゃあ、最初はご自身の引き出しの中にあるものだけで書いていたわけですね。
保住:デビューまで結構プレイしていたので、そこで得た蓄積と、あとはユーザーさんの反応のフィードバックですね。もともと自分の中にドラマツルギーがあったんですが、『魔法はあめいろ?』あたりで、どうやら美少女ゲームユーザーには受けないものもあるぞ、と気付いたんです。ならば受けた部分に先鋭化していこう、と。いわばセルフブランディングですね。それが「くっついた後の恋愛描写」なんです。それがあって、ういんどみるさんからも声をかけてもらったんだと思いますよ。
──なるほど、とても納得できる流れですね。そのういんどみるさんでは先ほども言われたように、複数ライターさんとのお仕事でした。これは上手くいったのですか?
保住:そのあたりはセロリさんや高嶋栄二さんにいろいろと教えていただきました。3人で飲みに行ったりサウナに行ったりで、一晩中話をしましたね。それでキャラの解像度を高めていったり、お二人の書きたいことを理解したり。とてもいい雰囲気で仕事をさせていただきました。
▲チームでの作業は始めてだったと言う保住氏だが、ここでの経験がその後のシナリオライターの仕事に大きく良い影響を与えたとのこと
序盤からこんなにイチャイチャしてたら
最後までテンションが続かないから
──そんな保住さんはこれまで60作品以上の美少女ゲーム作品を書かれています。その中で転機となった作品を教えていただけますか?
保住:今までに出て来ましたが『はぴねす! りらっくす』に『ましろ色シンフォニー -Love is Pure White-』、それと『こいびとどうしですることぜんぶ』。それと自分自身は制作に関わっていないんですが、『カミカゼ☆エクスプローラー!』(クロシェット)ですね。
──『はぴねす!りらっくす』については先程少し語っていただきましたので、改めて『こいびとどうしですることぜんぶ』についてお聞かせください。
保住:自分にとって名刺となった作品となれば、やっぱり『こいびとどうしですることぜんぶ』ですよね。「保住圭はこういうシナリオを書いています」というね。
──やはりユーザーの反響も、いわゆる「保住圭らしさ」への評価だったのですか?
保住:そうですね。ゲーム全体のストーリーへの評価よりも、「つきあったあとの女の子の様子が可愛い」という方が大きかったんです。ならばそこを突き詰めていこうというのを改めて強めることができる作品でした。
──それまでも恋愛描写は得意とされていた部分ではありましたよね。
保住:そうですね。『はぴねす!りらっくす』は本編後のお話だから、つまりは各ヒロインと主人公が付き合った後のシナリオじゃないですか。そう考えて書いたら、セロリさんから「序盤からこんなにイチャイチャしてたら最後までテンションが続かないから、もうちょっと抑えめのスタートで」って言われました(笑)。なるほどって思いました。つまり『はぴねす!りらっくす』を一つのパッケージと捉えての作り方を教えてくれたんです。セロリさんとは今も交流がありますが、恩人の一人ですね。
──話を『こいびとどうしですることぜんぶ』に戻しますが、さきほど名刺になったと言われていましたよね。
保住:この当時はたくさんの関係者に「保住さんといえば『こんぶ』ですよね」と言われました。「恋愛描写なら安心して任せられる」と思ってもらえたのはこの作品でしょうね。
▲ユーザーの評価から自分の強みを自覚し、それをより突き詰めていくことで『こいひとどうしですることぜんぶ』は保住氏の名刺代わりの作品となった
美少女ゲームの方程式へ挑戦し
業界全体の転換点となった人気作
──『ましろ色シンフォニー -Love is Pure White-』はいかがでしょう。
保住:あの頃のぱれっとさんも『もしも明日が晴れならば』や『さくらシュトラッセ』と人気作を発売されていました。その中でぱれっとの和泉つばすさん初ライン作品で一番たくさんシナリオを書かせていただいた。その意味で大きな作品ですね。
──内容的な意味ではどうでしょうか?
保住:『ましろ色シンフォニー -Love is Pure White-』は当初から少女漫画的な構成を考えていました。当時は主人公を中心にした放射状の人間関係を持つ作品が多かったんですが、それを崩したかった。なので本作では人物の中心にいるのはヒロインの愛理なんです。それと当時多かった「なぜかモテる主人公の恋愛」ではなく「モテるに足る主人公」や「この男の子とこの女の子が運命的につながる恋愛」を描きたかったんです。言い換えれば「ヒロインも主人公を攻略する」。もう、こういうゲームの時代になってもいいだろうと思いました。
──今聞いてもワクワクしてきますね。
保住:美少女ゲームって、実は「恋愛をちゃんと描かない」んですよ。『ONE』や『ToHeart』の段階で既に確立している手法なんですが、ヒロインは必ず問題を抱えていて、主人公はそこに必ず首を突っ込んで二人で解決する。このことがメインになってしまい、そのついでに二人は恋愛したりセックスしたりするんです。
──つまり多くの美少女ゲームは「恋愛」をテーマにしていないということですか?
保住:自分はそう思っています。未だにこの手法で作られている作品がほとんどですよね。それだけ凄いメソッドということですが、そろそろ卒業しなきゃいけない気はしています。
──『ましろ色シンフォニー -Love is Pure White-』は恋愛を中心にした作品、ということでしょうか。
保住:主人公もヒロインも色々抱えているんですが、その中で恋愛を進めていくことで、物語が進んでいく。その辺りが上手く描けた作品だと思います。ここまでド直球の恋愛作品って、当時中々作れなかったと思うんです。そこに挑戦してくれたぱれっとさんには感謝していますね。
▲恋愛ゲームは実は「恋愛」をテーマにしていない、と保住氏の鋭い指摘。そんななか、『ましろ色シンフォニー -Love is Pure White-』は恋愛することを主軸に物語が展開してゆく挑戦的な作品だった
キャラの立ち位置と生い立ちが決まれば
物語は生まれる——保住圭のドラマ作り
──そんな保住さんですが、お仕事をやる上で大事にしているところをお聞かせください。
保住:何度も言っていますが、クライアントさんが求めているものを書くことです。逆に「保住さんのやりやいことをやってください」と丸投げでくるブランドさんとは噛み合わないですね。だって美少女ゲームって結局はメーカーさんのIPなわけで、そこで無責任に「好きなようにやる」なんてできるわけがない。そういうのができるライターさんもいますけどね。僕は仕事の最初に、必ず「どんな作品にしたいのか」を伺ってから企画も作ります。
──保住さんの物語作りのこだわりなどがあればお聞かせいただけますか?
保住:僕はキャラクターを作り込むんですが、属性では考えないんです。まずは作品のコンセプトに合わせてキャラの立ち位置を考え、その後になぜそうなったかの生い立ちなどを考えます。そうなると行動原理が決まってくるので、自然と物語は決まってきますよね。だから僕はストーリーは考えていないとも言えます。よく「保住のシナリオにはヤマもオチもない」って言われますけど、言われなくても分かっていますよ(笑)。そういう物語の作り方をしていないんだから。でもキャラは生き生きと動いているでしょって。
──そう言われると、「確かにそうだよなあ」と納得してしまいますね(笑)。
保住:その中で敢えてこだわるとするなら、「このルートを読んでいる時は、そのヒロインが一番可愛い」と感じてもらえるということですね。
──あくまでヒロインが主であり、ドラマは従である、と。
保住:もちろん物語を終わらせる必要があるので、終結に向けてのドラマは必要です。でもそのために唐突に事件を起こしたりシリアスな展開にしたくはないですね。
▲物語のために用意されたキャラクターではなく、魅力あるキャラクターたちの物語を描くのが保住氏のドラマ作り。最新作の『恋し彩る正義浪漫』も楽しみ!!
自分の得意分野や求められるものを客観的に判断しオーダーに応える職人、保住氏をBugBug11月号でもっと知ろう
いかがだろうか。恋人同士のイチャラブをたっぷり描くことに定評のある保住氏だが、その仕事の姿勢はとてもクレバーであることがわかると思う。シナリオライターには様々なタイプの方がいるが、保住氏ほど「作品はメーカーのものであり、自分の仕事は依頼主の期待に応えること」というスタンスを明確にしている職人タイプは珍しいかもしれない。BugBug11月号では保住氏の関わった他のタイトルに関するお話や仕事に関する考え方、作業スタイルなども7ページに渡って語ってもらっているぞ。多くのメーカーからひっきりなしに仕事の依頼が来るプロフェッショナルの姿は一読の価値あり!!
▲元々漫画や小説も書いていたという保住氏はさまざまなメディアでもその才覚を発揮しているぞ
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