美少女ゲームの費用や販売方式についてお話しします
みなさん、ごきげんよう! ネクストンの「まついさん」です。
今日はゲームの予算や販売方式に関することを書こうと思います。
ゲームの予算、昔と同じものを作ろうとすると当然費用は増加していきます。
①絵の費用はあがったの?
ノベルゲームの場合は絵が中心になりますので画面の大きさに関係します。
今も昔もウィンドウモードで起動すると同じような大きさに感じますが、PC画面も進化し、大きな絵をギュッと凝縮して表示するようになりました。
これが「解像度」といわれるものです。
一定の面積に何個の粒があるかの話と思ってください。
例えば縦800×横600で表示されていたものが1600×1200になった場合、面積でいうと4倍の差があるので、昔のゲームを今のPCで表示する、4分の1くらいに表示されます。
つまり、単純に書いて塗っての面積が4倍になっている…ということになりますね。
とはいえ制作時間も4倍になるわけではありませんが、昔より時間はかかる作業にはなりますので、当然1枚にかける時間、つまりコストは上がっていきます。
②エロゲに限ったことではありませんよ
桁違いという例になりますが、ソーシャルゲームの予算増加は劇的です。
モバゲー時代のソシャゲでいうと某ロワイアル的な怪盗ゲームを筆頭に急に流行しました。
当時は1000万円かからない予算で数億円の売上がでるゲームが作れるというゴールドラッシュでした。
聞いたことない会社が急に社員が数百人になっていて、ソシャゲ化の許諾依頼とかよくきたものです。
しかし、ガラケーからスマホが一般的になったとき、スマホに対応した「アプリ型」のゲームを作れない会社は、一斉に崩壊していきました。
ポチポチするだけの単純なカードバトル型にも限界がきました。
プラウザからアプリに変わったことで開発費はドカンとあがり、その後もグラフィックやシステムに費用が増え、今だと開発費は3億~ではないとソシャゲは厳しいと言われています。
web広告やサーバー代、更新する素材費用、色々込みで月数千万は維持費がかかるのが当然というのが今のソシャゲです。
数億円の初期費用をこれらの維持費を払いつつ回収できるのはいつのことやら…。
ソシャゲの世界も中々に厳しいということですね。
③フルプライス? ロープライス? どっちを作る?
まず、エロゲ会社は社員が少ないです。
非正規雇用が多いとかそういうのではなく(笑)、外注さんを多く使うからです。
簡単に説明すると、エロゲはベルトコンベア式の開発です。
企画を考える→プロットを作る→原画・シナリオの発注書を作り、ライターや原画に渡す→原画が終われば彩色→ゲームを組む→デバッグ
こんな流れになりますので、自分の仕事が終わると「指示待ち」が発生します。
新作が発売した後はライターが次の企画を考えるまで原画とCGは空くなぁ…となります。
(ライターがスクリプトをやったり、原画・CGも描きおろしグッズを作るなどの別作業はあります。)
ということであまり社員として常駐雇用をすると、空いてる時の仕事を用意しなければなりません。
人数が少なければ、そんなことを考える余裕もありません。
また、ボリュームも増えてきたので、昔は10ヶ月で作れたものが1年、1年半という開発時間が必要とされるようになり、その結果、フルプライスが作りにくいというのもあります。
また、原画を外注で探す場合、フルプライスだと相当な拘束期間を必要とします。
並行作業だとさらに時間がかかります。
例えば単純に月10枚のイベントCGが描ける原画の場合、80枚で8ヶ月、それとは別にキャラデザと立ち絵で2ヶ月、さらに別作業としてパッケや特典の描きおろしで2ヶ月とすると、専従してもらっても12ヶ月フルに入ってもらわないといけません。
外注の原画さんだと、同人活動や他社さんの仕事も請けながら…となりますので、完成はいつに…となります。
開発1ラインしかない会社だとその1本で会社の命運が懸かることになります。
これは相当な賭けになりますので、複数原画にすることで作業を早めたり、CG枚数の少ないロープライスに関心を持ちます。
ロープライスやミドルプライスだと18枚~50枚ぐらいなので、いい作家さんに頼みやすくなります。
では必ずしもロープライスがいいのか?というと、そうではありません。
シリーズ物を出したり、ファンディスクをつくったりすると「分売だ!」と言う人もいます。
お話の全体が決まっていて続きもので出すならばその指摘ももっともですが、単にタイトルを冠するだけのシリーズやファンディスクは違うと思います。
だって、分けるべきベースとなるものがそもそもないのだから…。
パッケージで考えると、低価格の1、2、3と連続で出すのはマイナスです。
3回音声収録して、3回マスターアップ作業をして、3回デュプリ(パッケージとして製品化)しないといけないので、当然、その部分の費用がかさんでしまいます。
また売上本数的なものをいうと、フルプライスの方が多くなるとは思います。
店舗特典の有無が予約数に影響しますし、店舗の取り扱いもフルプライスの方が店内の露出が増えます。
多くの場合、ロープライスには店舗特典はつけられませんが、フルプライスにはつきます。
店舗特典は描きおろしを含めイラストはメーカーの無償提供ですが、それを受け取ってグッズ化するのは店舗の費用です。
つまり、タペストリーの印刷に1000円かかるとすると、流通会社からの仕入れ価格にタペストリー製作費を足して、
定価以内におさめる必要があります(「有償特典」だとそこが少し楽になります)。
皆さんへ提示される販売価格は、「お店の利益」、「流通会社の利益」、「メーカーの利益」、「製造費」で構成されています。
フルプライスでないと、店舗特典がつけられない(つけたくない)という理由はここになります。
ロープライスのいいところは、パッケージではなくDLにあると思います。
新作が出る際に旧作のセールができるからです。
以前にもお話しましたが、中古で販売してもメーカーには一切関係ありませんが、DLのセールはメーカーに売上が入ります。
販売価格もメーカー主導で決められますので、戦術的な展開が可能となります。
フルプライス主体のメーカーさんに相談されると、オール外注でもいいのでロープライスラインを一つ作ることを、僕はお勧めしています。
素早く動けるので作品ジャンルもニーズに合ったものが作れるのもメリットですし、ヒロイン一人とのお話に集中できるのもロープライスの魅力だと思います。
今、流行しているものを(例えば仮想世界の話とか)フルプライスでやろうと思うと2年後ですw
▲低価格作品ではネクストン系列のブランド・GLASSESは2020年に『メガスキ! 〜彼女と僕の眼鏡事情〜 星野優羽姫編』でいきなり税込980円&3作品連続発売でデビューし業界で話題を集めた。その後3作をまとめパッケージ版が発売され、女教師の2ndシーズンもリリースされるなど、大好評で現在もシリーズは続いている
とりあえずはこんなところで。
あまり費用の話は細かくは書けませんでしたので、またお話できればと思います。
まぁ、メーカーやタイトルによって制作費は異なりますので。
8800円から9800円と細かい変動はありますが、ゲーム自体の販売価格はあまり変わりません。
しかし、製造費は間違いなく昔より高騰しています。
1本の売上に含まれる、「お店の利益、流通会社の利益、メーカーの利益、製造費」のうち、製造費が増えています。
(もちろんお店や流通会社の人件費も上がることで利益は減っていますが、より顕著に影響があるのは製造費です)
製造費があがるとメーカーの利益が一番に影響してくるので、続けていくにはそれなりの工夫と、なにより、ゲームを買ってくださる皆さんが必要です。
我々にできることは、買ってくれたからには楽しんでもらう(色々な意味で)というだけです。
ゲームだけでなく、グッズやイベントなどを含めて楽しんでいただける「エンターテイメント」を提供できる企業になることを
弊社では考えております。
何か疑問に思ったことなどは、聞いていただけると答えられることならば答えますのでお気軽にどうぞ。
あまりSNSでの噂や考察などには振り回されないでね!
では、また次回!!
まついさん
BaseSon、あざらしそふと、Liquid、エムズトイボックス…等々、数多くの人気ブランドを抱える美少女ゲームメーカー・ネクストンの統括プロデューサー。精力的にリリースを続けるネクストンの中で事業のほとんどに関わっており、さらに広報やイベントの売り子など萬屋的な仕事もこなすなど、多忙を極めている。7月28日には『戦国†恋姫EX参 ~毛利家の絆編~』(BaseSon)と『僕色に染まる叔母』(だーくワン!)の2本がリリース予定。さらに8月25日には『ガルドマ -女子寮の管理人-』(あざらしそふと+1)と『TO・RA・WA・SE ~囚われの偽妃が夢みる初夜~』(だーくワン!)の2本がリリース予定と、マスターアップの連続で目が回る忙しい日々を送っている。
▲7月28日リリース予定の『僕色に染まる叔母』(だーくワン!)は、原画・吉野恵子氏×シナリオ・NATORI烏賊氏の豪華スタッフによる至高の官能エロスが味わえる逸品。しかも同日『戦国†恋姫EX参 ~毛利家の絆編~』(BaseSon)も同時リリースで、ファンも嬉しい悲鳴なのだ
関連記事 『ONE.』に関連することを話そう? みなさん、ごきげんよう! ネクストンの「まついさん」です。 いよいよ『ONE.』の予約も解禁されましたね。DLで買う方も相当数いらっしゃると思い ... 美少女ゲームを牽引するネクストンを支える“まついさん”氏が最新作や業界の最新情報をお届け!! 皆さん、はじめまして。(株)ネクストンの「まついさん」です。会社では色々な業務を行う「万屋 ...
【ネクストン・まついさんの万屋月報】統括プロデューサー“まついさん”氏による連載コラム第2弾!! 今回は話題沸騰中な『ONE.』のマル秘エピソードを大公開♪【第2回】
【ネクストン・まついさんの万屋月報】ネクストンの統括プロデューサー“まついさん”氏による連載コラムがBugBug.NEWS祝・3周年記念企画でスタート!!【第1回】