モノクロ5ページに渡って語り尽くしてもらった『瑠璃櫻』制作秘話をダイジェストで紹介!!
Lump of Sugarとスミレ──。一見シンクロしなさそうな両ブランドがコラボして制作する『瑠璃櫻』が今年始めに発表され、業界で注目を集めている。孤独の中で彷徨う少年と、死に場所を求めた少女による交流を軸に、「生きる意味」をテーマにした重厚なストーリーが描かれていく、全年齢向けAVGである本作。それぞれの得意分野で力を発揮し、相乗効果でより魅力的な作品を生み出すのがコラボの醍醐味だが、実際にはどのように制作されているのか? 絶賛発売中のBugBug4月号では、両ブランドの代表によるクロストークが実現。興味深いコラボ・プロジェクトの全貌を直撃した内容を、ダイジェストでお届けするぞ!!
▲今回のクロストークに登場していただいたお二人はこちら。それぞれブランド代表も務めているのだ
実は最近までお互い交流はなかった!?
──今回はLump of Sugarさんとスミレさんのクロストークということでお話をお伺いします。本日はよろしくお願いします。
かわうそP:よろしくお願いします。
雪仁:よろしくお願いします。
──今回は両ブランドのコラボで『瑠璃櫻』を制作されるわけなんですが、今までLump of Sugarさんとスミレさんで、ブランドとしての交流はあったんですか?
かわうそP:実は最近までありませんでした。今回は、共通の知人の紹介で出会ったのがきっかけです。
──そうですよね。あまり一緒に何かしているのを見たことがない気がします。
かわうそP:ゲームの制作時に他社さんにヘルプをお願いしたりされたりということもあるんですが、スミレさんとはなかなかそういうお付き合いもなかったんです。
雪仁:Lump of Sugarさんは広報活動なんかでも顔が広いイメージがありますよね。うちは「すごいなあ」って思って見ていました(笑)。
──それがご紹介あって、今回一緒に制作することになった、と。
雪仁:そうです。なので、完全に今回の『瑠璃櫻』で交流が始まった感じなんです。その時は丁度うちも「次に何を作ろうかっていう状況で、その方にも相談していたんです。スミレはスタッフがシナリオ中心で、現在は社内に原画家もいるのですが、その当時はいなかったので、そのあたりの話をしていたんです。その時に「Lump of Sugarさんも丁度次の企画を考えているんだけど、シナリオが外注なんだよねというお話を伺ったんです。もしかすると何か面白いことができそうだなってことで、繋いでもらったんです。
──確かにそう聞くと、このコラボは両ブランドの強みがうまい具合に噛み合っているんですよね。
かわうそP:Lump of Sugarといえばやはり萌木原ふみたけのキャラデザインと原画、そしてグラフィックですし。
雪仁:なにせ代表がシナリオライターですから(笑)。なのでちょうどいい組み合わせだったんです。
▲特集記事中で『瑠璃櫻』の作品内容を紹介したカコミ。重厚なシナリオと世界観に期待が高まるのだ
これまでのブランドに対するお互いの印象は?
──ちなみに今回お仕事をするまで、それまでお互いのブランドに対してどんな印象を持っていましたか?
かわうそP:もちろんスミレさんのことは存じ上げてはいましたし、タイトルでいうと『僕と恋するポンコツアクマ。』のイメージがとても強かったですね。作品の方向性としても、うちとそれほど離れていないとも思っていたので、「よいメーカーさんだな」と思っていました。なので、最初にお話をいただいた時から、コラボで作ることに不安はなかったです。これがクロバコ系ブランドさんだったりすると考えちゃったかもしれないですけどね(笑)。むしろ何か面白い化学反応が起きるのかなあという期待感があって、最初から前向きにコラボを受け止められました。
雪仁:Lump of Sugarさんは自分たちがブランドを立ち上げた時には、すでにブイブイ言わせてる大先輩でしたからね(笑)。正直言うと、「コラボって言ってもうちが下につく感じなんじゃないかな」って思いもあったんですよ。実際に実績を比べたら、そうなってもおかしくないじゃないですか。まあ、自分としてもLump of Sugarさんにご挨拶できること自体嬉しいことだったですし、コラボが決まった時も、おこがましいじゃないですけど、正直「いいのかな?」という感じではありました(笑)。
──ブランドの歴史を考えると、そうなってしまいますよね。
雪仁:ただ、実際お会いしてみると、かわうそPさんはご覧の通りとても丁寧な方で、制作中もずっとこちらを立ててくださるので、ホッとしました(笑)。
かわうそP:立ち上げた時期は違えど、今のこの時代、この状況で美少女ゲームを作り続けているのは本当にすごいことですからね。スミレさんはもちろん、現在頑張っているメーカーさんには等しくリスペクトがありますから。
──なるほど、いい感じなのが伝わってきます。そんなLump of Sugarとスミレのコラボですが、『瑠璃櫻』は公式サイトで突然発表された印象がありました。
かわうそP:あ、そうですよね(笑)。最近のLump of Sugarは新作の発表が唐突だってよく言われるんです(笑)。
──雑誌からすると、そろそろ突然っぷりに慣れてきました(笑)。それはともかく、今回のコラボ発表時のユーザーさんの反応は如何でしたか?
かわうそP:SNSなどを見ると、「Lump of Sugarとスミレって繋がりあったの?」と驚いている方が多かったのかなと思いますね(笑)。大体お手伝いをしたメーカーさんの名前って、ゲームのエンドクレジットに掲載されるけど、そこで見たこともないでしょうから。だから皆さんびっくりされていたみたいですね。
雪仁:うちの作風はLump of Sugarさんよりちょっと下品なもので(笑)、「なんでLump of Sugarさんと?」というような反応が多かったですね。ただ、Twitterのインプレッションなど反応の数という意味ではすごく多かったです。単独でのタイトルよりかなり多かったので、注目されているなということは実感しました。
▲それぞれのブランドを紹介するカコミも掲載。こちらはLump of Sugarの紹介で、さすがの作品数で名作も多いのだ
テーマの新鮮さはコラボ企画ならでは!!
──さて、今回の『瑠璃櫻』という企画は、コラボが決まった時点である程度構想があるものだったんですか?
雪仁:これはスミレの次回作とは別で考えていたものなのですが、自分の中でやっていみたいと思っていたものがあったんですよ。それが「古き良きビジュアルノベルをやってみたいということでした。今は立ち絵も動かして、アニメのようなテンポ感で、というのが多いんですけど、逆にビジュアルノベルの形式で、一本の映画のようなものをできたらいいなと思っていたんです。それを最初に「何かやりたいものはありますか?」という話になった時にお伝えしたら、「いいじゃないですか」と乗っていただいて。
──ビジュアルノベルというと、古い人間からしたらLeafさんなどがやられていたような、画面いっぱいに文章が出る小説っぽいものを想像してしまうのですが、小説というよりは映画っぽく見せていこうと。
雪仁:そうですね。映画のように見せる、という部分にこだわりました。UIの作り方もちょっと変えていて、映画のスクリーンに見えるような絵作りを意識しています。テキストは字幕のような見せ方を意識しています。影響を受けたのは『ナルキッソス』なんですよね。ああいう綺麗で映画のような没入感のあるものを自分も作りたいと思っていたんです。
──スミレさんからそういうお話があった時はどう感じられましたか?
かわうそP:萌えゲーというジャンルとは離れてますし、かなりシナリオ重視の作品になるなと思いました。これはおそらくLump of Sugarでは作れない作品だろう、と。その新鮮さがコラボ企画ならではだと思いましたので、その企画をベースにして、話し合いを進めさせていただきました。
──時代モノというのも、雪仁さんの最初の構想にあったんですか?
雪仁:実は最初に構想したものはまた違うものでした。まだ自分の頭の中にあっただけの頃の話なんですが、もっと荒廃した未来世界をイメージしていたんですよね。それがLump of Sugarさんと作るのが決まった時に、萌木原ふみたけさんの絵をどう活かそうかということを最初に考えたんです。そうすると、やっぱりケモミミの女の子に巫女装束は外せないだろうと。それを最初に持っていた構想と照らし合わせて、アレンジしていったのが、今回の『瑠璃櫻』の世界観なんです。
かわうそP:確かに現代和装もあるんですが、より映えるのは時代モノでもあるんですよね。そういった部分は打ち合わせを重ねながら決めていきました。
──ただ、スミレさんはもちろん、Lump of Sugarさんの作品を改めて見ても、意外と時代モノってないんですよね。和装は出てくるんですが、逆に未来の話だったりして。
かわうそP:実はそうなんですよ(笑)。和装ヒロインはお馴染みだと思うのですが、いわゆる時代モノの企画というのはこれまでなかったんです。そこは新鮮さを感じていただけるんじゃないかな。私たちとしても今回の企画では時代モノのほうがマッチすると考えていたので、違和感なく制作に入れましたね。
▲こちらはスミレのブランド紹介。姉妹ブランドのSoireeや皐月もシナリオが評価が高くて要チェックだ
新作に登場する二人の主役キャラクターについて直撃
──そんな中でミコトとサクラというキャラが生まれてきました。このキャラについてお聞かせください。
雪仁:自分はこのテーマに沿って、主役は二人というのをイメージしていたんですよね。そして対比になるような二人がいいと考えていたんです。主人公のミコトは不死の呪いを受けているキャラクターで、生きることを諦めている。ヒロインのサクラは短命の宿命を受けていて、生きる意味を探しています。明るくて可愛い女の子と暗くて斜に構えた少年、正反対の主人公二人が交差する物語—交差した先の結末というのを描きたいと思って、対比させることを重視したキャラクターとして作りました。
──では二人とも主役なんですね。
雪仁:ゲームとして視点がどうか、ということはありますが、二人とも主役としてイメージしています。
──デザイン面について、意識された部分はいかがですか? 先にミコトからうかがいましょう。
かわうそP:萌木原の方が忙しくインタビューに参加できていないので、今私があまりどうこう言いづらいのですが(笑)、古い時代の設定なので、そこをはみ出さないように意識していましたね。その中で自分たちらしさを如何に取り込むか、というところを気をつけていたようでした。結果的にスミレさんからもOKが貰えたので、良かったのではないかと。
──Lump of Sugarさんから上がってきた絵をご覧になって如何でしたか?
雪仁:いやもう、「これだよね」と(笑)。初稿を見た時から、自分たちが萌木原さんに期待することに応えてもらったなと思いました。
──サクラについてはどうでしょう。
かわうそP:サクラについては大きく任せていただいたこともあり、ケモミミで和装というので、描きやすかったのではないかと思いますね。まさに萌木原の得意分野ですから(笑)。
──Lump of Sugar作品ですと通常は4~5人のヒロインをデザインされますよね。今回は一人ということで、そこでの難しさなどはあったのでしょうか?
かわうそP:シナリオ重視の作品ですし、あまりキャラデザを派手にしてしまうと、かえって物語を邪魔してしまうのではないか、ということで、あまり派手にはしないというのは心がけていたと思いますね。
──雪仁さんはサクラの絵が上がってきた時は、いかがでしたか?
雪仁:さっきと同じになってしまうんですけど、期待通りでした(笑)。思った通りのものが来てくれたぞと。でも確か、最初は髪の色が違ったんですよね。
かわうそP:いくつか案は出させて頂きましたね。
雪仁:その中で白が一番映えていたんですよ。ならばサクラの髪が白い理由をシナリオに盛り込まなきゃと考えました。萌木原さんの絵からインスピレーションをいただいて、それをシナリオに落とし込む……これも先程かわうそPさんが仰しゃられたような化学反応の一つかと思います。神秘的な部分もキャラのコンセプトにありましたので、そこも自然に表現できたと思います。
▲記事中では『瑠璃櫻』の細かい注目点を深掘りするカコミも掲載。これ以外にもカットイン演出、PV、背景グラフィックについて紹介しているぞ
UIや演出や音楽もお互いの得意分野を活かして作成
──その他、UIなどのデザイン面でこだわった部分というのはありますか?
雪仁:今回は「映画を見ているような気持ちになれるUI」を考えました。言ってみればシンプルなんです。16:9の画面の上下に黒帯を入れて、テキストは字幕のように黒帯の部分に表示する。システムのボタンなども極力画面を邪魔しないように配置する。そういう、映画っぽく見せるところにこだわりたいというのは要望として出させて頂きました。
──いわゆる美少女ゲーム的なUI……テキストボックスがあって、その上下に各種ボタンがあって……というのではなく、ですね。
雪仁:そうです。それを使ったうえで、CGの表示の仕方でも様々な演出を入れました。そのため、普段Lump of Sugarさんが作られないようなサイズのCGをお願いしたりもしたんです。大きく見せたい部分では上下の黒帯が外れて全画面になったり、絵をスクロールさせたり。そこは自分から指示を出させていただきました。中には「使うかわからないけど、演出で使うかもしれないから作ってくれませんか」みたいな素材もあったんですが、それにも快く応じていただけました(笑)。
かわうそP:普段とは違う比率のCGだったので、正直グラフィッカーも慣れてない様子だったんですけど、最初の段階で映画っぽく見せたいというのは承知していましたから、こちらとしても最大限、絵の方で貢献できるように気をつけていました。
雪仁:さらに演出用のCGについても、今回は多数用意していただきました。もちろんその分グラフィック枚数は増えるんですけど、お願いするたびにかわうそPさんが「大丈夫ですよ」って言ってくれるので(笑)。
──具体的にはどういうCGでしょう?
雪仁:キャラではなくモノが映るカットみたいなものですね。例えば回想シーンなどで読み手にイメージをしやすいようなシーンカットだったり、アイテムCGだったり、とかですね。そういったものをたくさん発注させていただきました。
かわうそP:結果的にCG点数は増えました(笑)。ただ、映画のように見せるという演出意図は把握していましたので、そういった絵的にイメージできるものが必要になるというのも理解していました。ですから、そこはできる限りお応えできようにしました。
──この話を伺った後にゲームをプレイすると、『瑠璃櫻』がより面白い作品に感じられそうですね。
かわうそP:ぜひ意識していただきたいポイントです。
──そしてスミレさんといえば音楽です。今作でのこだわりを教えて下さい。
雪仁:普段のタイトルだとあまり使うことがないんですが、うちで音楽をやっている水城新人が、実は壮大な雰囲気の曲が得意なんですよね。それが今回の『瑠璃櫻』ではハマりそうだなというのはわかっていたんです。その通りテーマソングもAiRIさんのヴォーカルとあいまって、力強い壮大なバラードになっています。
かわうそP:素晴らしいの一言ですよね。主題歌にしても劇伴にしても、すごく作品に合っていて、本当によかった。やはり自社で作られている良さなのかな、と。やはり内部にクリエイターがいると、作品の理解力が違うじゃないですか。今回の音楽は、少し聴いただけですぐにそれを感じましたね。
▲先週末にはついに体験版を公開!! YouTubeでプレイ動画も見られるので、是非チェックしてみよう♪
両ブランドファンのみならず全美少女ゲームファン注目な徹底クロストークはBugBug4月号にて!!
モノクロ5ページに渡ってビッシリ語ってくれた両ブランド代表。お互いにリスペクトしつつも、それぞれの得意分野を活かした作品作りがなされている実態が、よく伝わったかと思う。コラボ企画ならではのレベルが高いクオリティが楽しめそうで、今から期待が高まるのだ。なお誌面では今回紹介した以外にも、PVやグラフィックについて、コラボでの役割分担や新たに発見した事、読者とファンへ一言…等々、盛り沢山な内容でまだまだ掲載。お互いのブランドのファンはもちろん、美少女ゲームファンなら絶対に楽しめる興味深い内容が満載なのだ。絶賛発売中の『BugBug』4月号を読み込んで、実際に『瑠璃櫻』をプレイするまでテンションを高めてほしい。
瑠璃櫻 プロモーションムービー
▲PVは映画のCM動画を見せられるかのようなインパクトで必見。主題歌を歌うのはAiRIさんだ
瑠璃櫻(るりざくら)
Lump of Sugar×スミレ
2023年4月28日発売予定
AVG、DVD/DL、一般、Win8.1/10/11
パッケージ・通常版:3,300円(税込)
パッケージ・豪華版:16,500円(税込)
DL版:3,300円(税込)
ボイス:あり、アニメ:なし
原画:萌木原ふみたけ
シナリオ:雪仁