みんな知ってそうで知らないHアニメが出来るまでのお話を、ルネピクチャーズのプロデューサーに聞いてみたぞ!!
BugBugでは本誌のアニメ紹介コーナーやBugBug.NEWSの記事、そして専門誌DVDBugBugなどで積極的に紹介しているHアニメ。ゲーム原作だったり漫画原作、時にはオリジナル…レーベルにより様々な作品があるが、それらはどのように決まり、どう動いて作られているかはあまり知られていない。BugBug11月号では『エロアニメ最前線』としてその裏側を、美少女ゲームブランド・ルネの系列でもある人気ブランド、ルネピクチャーズさんに伺ったぞ!! ここではその内容に一部を特別に公開しよう。
▲評価の高いルネピクチャーズ作品をリリースしてきた敏腕プロデューサーの城疋氏。今回のインタビューでその人気とクオリティの秘密がわかるかも!?
OVA制作は2008年からスタート
現在は王道とNTRの2レーベル体制
──ルネピクチャーさんがOVA制作をスタートしたのはいつからですか?
城疋:2008年からですね。それ以前はAICさんと組んでいて、「ひまじん」というレーベルで販売をやっていました。BugBugさんで表紙を担当されていた黒田和也さんが参加された『そらのいろ、みずのいろ』とか『戦乙女ヴァルキリー』の初代作品とかですね。その後AICさんは販売も独立して手掛けるようになって、うちも新しい制作会社と組んで制作から販売まで見るようになった。それが2008年からということです。
──そこから現在に至るまでコンスタントにOVAを制作されていますね。公式サイトを見ると9レーベルがラインナップされています。
城疋:現在動いているのは「ばにぃうぉ~か~」と「あんてきぬすっ」だけですけどね。この両レーベルでは制作から販売まで手掛けています。
──それぞれどのようなレーベルなのでしょう。
城疋:もともとは「ばにぃうぉ~か~」から様々なOVAをリリースしていたんですが、一時期からNTR作品に拒絶反応を示すお客様が増えてきたんですね。それで2018年に「あんてきぬすっ」というレーベルを立ち上げて、そちらでNTR作品を販売するようにしたんです。その第1弾が『それでも妻を愛してる2』です。
──やはりNTR作品は評価が分かれるんですね。
城疋:そうですね。まあ弊社としては美少女ゲームの方でもNTR作品を発売しているので、そういう反応には慣れていたんですけどね(笑)。
──一方で「あんてきぬすっ」の作品に対して高く評価しているユーザーもいるわけですね。
城疋:そうですね。
▲同じレーベルにNTR作品があると拒絶反応を示すお客様がいたため、別レーベルにわけたとのこと。どっちも好きな人がいるので、棲み分けだね
こだわりは原作ファン満足の原作再現度
ジャンル人気の推移も作品作りの指針に
──そんな「ばにぃうぉ~か~」と「あんてきぬすっ」両レーベル作品の支持率が高い要因はどのあたりにあるとお考えですか?
城疋:原作再現度の高さですね。これはアダルト・一般を問わずなんですが、やはりアニメ化する際に原作を改変されるのを嫌う人って多いじゃないですか。もちろん大人の事情や、むしろ良かれと思っての原作改変もあるのですが、弊社としてはできるだけ原作を忠実にアニメ化するように取り組んでいます。
──「原作に忠実に」とはいえ、どのジャンルを原作にするかというのでも難しさは異なってきますよね。
城疋:そうですね。例えば成年漫画であれば単行本を出来るだけ忠実にアニメ化できるようにと考えます。同人漫画を原作にする場合は人気があってもボリュームが少ないケースが多いので、ある程度シリーズが続いている作品でないとOVA化が難しいというのはあります。なのでやはり成年漫画原作が多くなっていますね。
──美少女ゲーム原作というのはいかがですか?
城疋:こちらはルネ作品はもちろん、BISHOPさんなど他社ゲームを原作にしています。ただ、ゲームの難しさというのは、やはり原作再現の部分にあるんですよ。と言うのも漫画であればコマの繋がりを表現することで、原作再現度の高いアニメにすることができます。一方でゲームは、イベントCGの間をテキストと立ち絵で繋いでいますよね。そこをアニメで表現するために、監督さんが演出をいろいろ試みることになるわけで、ユーザーさんが考える原作の展開とギャップが生じてしまうことも少なくないんです。弊社がOVA制作のテーマに「原作再現度の高さ」を掲げている以上、原作選びとしてゲームより成年漫画や同人漫画が多くなってしまうのは、やむを得ない所でもあります。
──なるほど。原作再現度をいかに重視しているかということですね。
城疋:お客様の傾向を見ても、OVAの場合はレーベル買いというお客様は少数派なんですよ。「自分の好きな漫画原作のアニメが出る」ということで買ってくれる―つまり原作のファンアイテム的な感覚で購入される方が多いんです。そうなると、より原作再現度というところを意識せざるを得ないというのはありますね。
▲原作ファンの期待に応えようとすると、ゲーム原作は漫画原作に比べて難しい。でも出すからにはファンも納得できる作品にしていきたい
「巨乳」「女子校生」「人妻」
は原作選びのキーポイント
── 一口に成年漫画とはいっても、様々な傾向やジャンルがあります。特に原作選びで中止するポイントを教えてください。
城疋:「アニメ化した際に原作の良さを引き出しやすいか否か」があります。言い換えるなら、ヒットしていても絵柄が個性的過ぎてアニメとして再現しにくい作品は避けています。例えばキャラや背景の描き込みがすごかったり、登場キャラが多過ぎたりとかですね。表情や衣装などのキャラデザインが個性的すぎる作品も難しいですね。
──ジャンルなどで重視するところはあるのですか?
城疋:販売サイトで人気の検索ワードというのはありますね。FANZAさんで言えば「巨乳」「女子校生」「人妻」というのは上位に来るので、その要素は原作選びのキーポイントにしています。
──「人妻」というのはOVAだけでなく実写でも人気のようですね。
城疋:そうですね。弊社のOVAでいえば『催眠性指導』というシリーズが人気なのですが、女子校生ヒロインがメインのシリーズなのに一番売れたのが女子校生ヒロインの母をメインにした『催眠性指導 #4 宮島椿の場合』だったんですよ。
──以前はファンタジー系が人気だったですし、人気ジャンルの変遷もあるんですね。
城疋:その頃は美少女ゲームでも『ランス』シリーズとか『ロマンスは剣の輝き』とかファンタジー系作品が人気だったですからね。最近ではファンタジーというより異世界ものが人気ですよ。現代ものだと「非日常にエロが入って来る」というような作品が人気のようです。
──もちろん定番人気もあるんでしょうけどね。
城疋:それがまさに「巨乳」ですね(笑)。これはずっと変わらない人気ジャンルです。
▲「人妻」好きを公言する人はあまりいないように見えるけど、実際に売れているジャンル。声に出さないけど好きな人は多いのだ
世代やライフスタイルに合わせたOVA鑑賞
根強く残るパッケージOVAユーザーの層
──さて、そんなアダルトOVAですが、ユーザー層としてはどの世代が多いのでしょう。
城疋:パッケージとDL・ストリーミング系でメインの世代層は異なってきます。パッケージはやはり40~50代、DL・ストリーミング系の方は20代が多いですね。特に20代を中心とした若い層になると、DVDプレイヤーを持っていないという方が多いし、レンタルも利用したことがない人が多いんです。
──持っているPCにドライブがないという方も多いですか?
城疋:はい、そういう方も多いですね。そんなお客様にはぜひDLでご購入下さい、という感じですね。
──美少女ゲームだとDLでは様々なセールで安く購入できる時もありますが、OVAでも同じですか?
城疋:はい、そういうセールもあります。実際パッケージとDLでは、発売初月の数字というのはあまり違いがないんですよね。パッケージOVAを購入する層というのは今でも一定するいらっしゃいます。ただ1年後を見ると、数字は大きく違ってくる。ここはセールが大きく影響してきますよね。特にDL販売サイトによっては「お気に入り」に登録しておくと、セールの時にお知らせが来たりするじゃないですか。それで購入する人たちというのもかなりいらっしゃるんです。
──販売後の後伸びという点でDLの方が大きいということなんですね。
城疋:もちろん人気作品になればパッケージでも後伸びはするんですよ。リピートも定期的に入ります。ただ、店舗さんから言われるのは「5本入荷して4本売れても、1本残ったら売り上げはトントン」ということ。3800円(税抜)のOVAだと仕入れ価格が5~6割。そのまま売れば4割は店舗に入るわけですが、店頭割引があるので、店舗の取り分は1~2割程度なんです。そうなると5本中1本残ったら確かにトントンですよね。
──そうなると、自然と入荷数は絞られてしまうわけですね。
城疋:そうなりますね。もちろん弊社作品でも「5本入荷予定だったけど問い合わせが多いので増やします」というタイトルもあります。最近は地方のAVなんかを販売しているロードサイド店で弊社のOVAが動いたりしているので、パッケージがダメということはないんです。
▲『ばにぃうぉ〜か〜』『あんてきぬすっ』の2ブランドで、昨年から今年にかけてこれほどのタイトルがDVDパッケージとDL版の両方で発売され、息の長い人気となっている
クオリティは地上波アニメ以上
エロシーン動画は劇場版レベル
──そういった状況を踏まえてもやはり最近ではDL販売の方がシェアは増えていますか?
城疋:そうですね。最近はDLが逆転しています。きっかけは2011年の東日本大震災で、ロードサイド店が潰れたり、自粛ムードで外出が控えられたりしましたよね。その時にDMMさん―今のFANZAさんがDL配信に力を入れたおかげで、一気にDL販売が数字を伸ばしてきました。そして2020年からのコロナ自粛で、一気に伸びた感じですね。
──その分パッケージOVAの売り上げが下がっていった感じですか。
城疋:いえ、そこが美少女ゲームとの違いなんですが、ここのところパッケージOVAのセールスは横ばいなんですよ。
──それはどういった理由なのでしょう。
城疋:結局はパソコンの普及率ですよね、美少女ゲームユーザーは当然パソコンを持っていて、しかもその大部分はネットに繋がっている。だからDL販売も近しい存在なんです。でもOVAパッケージのユーザーは先ほど言ったようにDVDプレイヤーやゲーム機しか試聴環境がない人が多い。ネット環境がない人もいることを考えると、結果的にパッケージ購入者は一定数いらっしゃるわけなんです。ここは固い層ですね。
──では美少女ゲームと違ってDL限定のOVA作品は作りにくい状況ですか?
城疋:そうですね。FANZAさんと連携して、DL先攻配信という作品はありますが、DL限定という企画はありませんね。もちろん制作依頼をいただいたこともあるのですが、弊社は制作から販売までできる体制なので、現状ではそこに乗ることはないかな、と。
──しかもクオリティへのこだわりが強いわけですから、外からのオーダーはない方がいいですよね。
城疋:そうですね。実際、弊社のOVAのクオリティは地上波アニメ以上の作品も少なくないんです。エロシーンの動画枚数は劇場版レベルで、一部では「ばにぃうぉ~か~はエロアニメ界のufotable」みたいなことを言われたこともあります(笑)。
▲Hアニメは普通のアニメのように止め絵の会話で尺を伸ばせず動きのあるHシーンが売りなので、動画枚数が地上波アニメ以上の作品も少なくないそうだ
脚本や設定画、絵コンテなど
原作者にチェックしてもらいます
──声優さんのキャスティングへのこだわりなどはありますか?
城疋:原作がゲームの場合は基本ゲームと同じキャストになります。漫画原作の場合は、ここでも重要視するのは原作再現度の高さを維持できるか。実は弊社では、脚本や設定画、絵コンテなど、制作の節目で原作者さんに必ずチェックしてもらうようにしているんです。キャスティングについても現場で候補を決めた後、最終的に原作者さんに確認しますし、演技への要望も伺っています。
──かなり原作者と連絡を取り合って制作しているんですね。
城疋:もちろんです。原作者さんが納得しないまま進めてしまうと、結果的にお客様がガッカリしてしまうんです。というのも原作者さんが一番ファンの声を聞いているケースが多いですから。
──そうなると、原作再現度を高めるためには、作品はもちろん、原作者のことも知っていく必要がありますね。
城疋:そうですね。時々制作スタッフに原作者ファンがいたりもするんですよ。こういう時は一番すんなりいくんですよね。ただ、毎回そういう訳にはいかないので、原作者さんとは密に連携をとって、原作再現度を高める努力をしています。
──原作者から「この声優を使ってほしい」というような要望があったりはするんですか?
城疋:もちろんあります。特に単行本特典でドラマCDがついているケースなどでは、そのドラマCDのキャストで、というお話をいただくことが多いです。時々ドラマCDに出演された声優さんの都合が悪くてキャスティングできない場合もあるんですが、そのケースでも必ず原作者さんに事情を説明させていただいて、改めて声優さんをご提案するようにしています。
▲原作者の石を出来るだけ尊重し良好な関係をもって完成度を高めていくのが、ルネピクチャーズ品質のポイント★
お客様からの要望が結構届いておりまして
その中からアニメ化作品を決めている状況です
──ゲーム制作との連動について伺います。OVA制作のノウハウを、美少女ゲームのオープニングムービー制作や、作中のアニメーション導入などはお話が出たりするのでしょうか。
城疋:アイディアとしては昔からあるのですが、いかんせん3分くらいのアニメーションでもかなりの制作費がかかってしまうので実現はしてないです。可能性としては原作をOVA化する際に同時にゲーム化してゲームの方にOVAのシーンを組み込むという手段もあるのですが、原作者さんがお忙しい事が多いので美少女ゲームの原画を受けていただくスケジュールを確保するのが難しいですね。
──なるほど。こういうことは軽々に伺ってはいけませんね(笑)。
城疋:いえいえ、アイデアとしてはありますし、お客様も気になるでしょうからね。
──さて、数々の名作を作ってきたルネピクチャーズですが、今後はどのようなOVA作品を作っていかれるのでしょうか。
城疋:現在、お客様から「この作品をOVAにしてほしい」という要望が結構届いておりまして、その中からアニメ化作品を決めている状況です。これは今後も続けていこうと考えていますが、その一方で「こういうOVAはなかったよね」と言ってもらえるようなアニメ作品にも挑戦したいですね。お客様のニーズにこたえる作品と実験的な作品を分けて制作していきたいと考えております。
──それは楽しみですね。
城疋:「JK」「巨乳」「ハーレム」は王道ですが、そこにハマらない面白い作品も、成年漫画や同人作品に存在します。もちろんそれが既存のファンのみなさんに受けないこともありますけど、そういう方には改めてばにぃうぉ~か~の王道OVAを楽しんでほしいですし、変わり種にハマった人には飽きられないように挑戦的な作品を作り続けたいですね。
▲売れセンの王道をキープしつつ、お客様からのアンケートを参項に新しい切り口を探る実験的作品にも挑戦していきたいとのこと。今後も楽しみ♫
本誌とあわせてたっぷりサンプル動画が見られるDVDBugBugも要チェックだ!!
城疋氏による原作となる作品を選ぶ基準やパッケージ販売の実情など、業界的なお話がたっぷりでこのお話を聞くだけでちょっと事情通になった気分!? ここに掲載した他にも、昨今の物価上昇を受けての価格判断や、販促展開の話、家庭の事情でアダルトビデオを見ることが難しいお客の話など、思わず「えっなにそれ面白そう聞かせて」と言いたくなるような話を、BugBug11月号ではカラー6ページを使って掲載!! もちろん9月27日に発売されたDVDBugBug VOL.41でもサンプル動画を多数掲載しているので、そちらもあわせてぜひ見てみよう!!
▲付録のDVDでオイシイところが見られる『DVDBugBug』でもルネピクチャーズのHアニメを猛プッシュ!! 最新号のVOL.41は発売されて間もないのでぜひチェックしてね
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