美少女ゲーム黄金期の熱気をクリエイター視点で描く全美少女ゲームファン必読のコミックの見所を直撃!!
Leafで数々の名作を手掛けてきた人気絵師・みつみ美里氏と甘露樹氏の二人が原案を手掛け、『神のみぞ知るセカイ』などの人気作で知られる若木民喜氏が漫画を描く、コミック『16bitセンセーション』。1990年代の美少女ゲーム業界をクリエイターの視点から描き、当時の業界内部事情が赤裸裸に語られる内容で、美少女ゲームファンの間で話題沸騰。元は同人誌だったが、KADOKAWAより2020年9月に商業コミック版も刊行されたのだ。その待望の第2巻『16bitセンセーション 2 私とみんなが作った美少女ゲーム』が、先日11月6日に遂に刊行!! そこで今回は若木民喜氏にインタビューを敢行したぞ。全美少女ゲームファン必読の内容になっているので、読んで興味を持ったら、是非コミックスも楽しんでほしい!!
▲こちらは第1巻の冒頭部。美少女ゲームなんて何も知らないヒロイン・メイ子がひょんなことから美少女ゲームメーカー「アルコールソフト」で働くことに!?
『16bitセンセーション』とはどんな作品?
──『16bitセンセーション』の第2巻が11月6日に発売されました。みつみ美里さんと甘露樹さんは、原案としてクレジットされています。そもそも若木さんとお二人とは、どのような繋がりなんですか?
若木:きっかけは『神のみぞ知るセカイ』のアニメです。甘露さんとみつみさんのお二人とも、アニメのエンドカードを描いていただけたんです。その時に挨拶をさせていただいて……そこから続いていますね。その関係性の成果が『16bitセンセーション』なんです。
──そうだったんですね。そこからいろいろお話するような関係になって、そこで出てきたエピソードをまとめたのが『16bitセンセーション』なんですね。
若木:僕から見ると、そういうことになっていますね。
──そんな『16bitセンセーション』ですが、かなり生々しいエピソードが満載ですよね(笑)。考えてみると、美少女ゲーム業界にいた人間がこれを描くと、いろいろ面倒くさいことになりかねないなあとも思ったのですが、取材者として若木さんがワンクッション入ることで、漫画として成立しているようにも思えます。
若木:そこがこの作品のミソでもあるんですよ。当事者が描くと実際のネタもとがなにかとか特定できるのではないかって気にしなきゃいけないじゃないですか。そうなるとやっぱり描きにくい。その点、僕は美少女ゲームに関してはいちユーザーでしかないわけですから。そういう人間が描く自由さというのはあるんですよ。
──ああ、なるほど。確かに話は聞いたとはいえ、若木さんが描くことで、登場人物もフィクションとして受け止められますよね。
若木:そうなんです。聞いた話をできるだけ盛り込みつつ、オリジナルのストーリーとして描いていくのが『16bitセンセーション』なんです。
▲カラー口絵は、みつみ美里氏と甘露樹氏の描き下ろし。とらのあなではこのイラストのB2タペストリーを使用したグッズセット付き限定版もあるぞ
物語は『同級生』がリリースされた1992年からスタート
──ところでこの作品は1992年からスタートしています。この年から物語を始められた理由を教えてください。
若木:これもね、1巻のアオリでは「美少女ゲーム黎明期」ってなってますが、本当は黎明期でも何でもないんですよね(笑)。まあ、単純に言ってしまえば『同級生』が発売された年だからです。「美少女ゲームが美少女ゲームとして成立した年」と言うんでしょうか……今の美少女ゲームに繋がる最初の一歩を踏み出した年だと思うんです。
──確かにそうですね。美少女ゲームにとって『同級生』は本当に大きな作品でした。でも、この時期ってみつみさんたちはゲームを作っていましたっけ?
若木:そこはちょっとズレがあるんですけどね。やはりその重要性を考えて1992年から始めたんです。うーん……それを考えると、やっぱり1巻で終わらせるのではなく、そのあとも描いていこうと考えていたんでしょうね。
──そんな1992年、若木さんはすでに美少女ゲームを遊ばれていたんですか?
若木:そうですね……考えてみると、僕が美少女ゲームを遊び始めたのも1992年かもしれない。僕、大学生になってすぐにパソコンを手に入れたんですよ。
──買われたんですか?
若木:いや、親戚の家に使っていないパソコンがあったので、それを持ってきちゃった(笑)。あの当時って「パソコンはいろいろできる」って買ってはみたものの、どうしていいのかわからなくて放置されていたパソコンが多かったじゃないですか(笑)。それを自分の部屋に運んだのが多分1992年でした。
──『同級生』発売と若木さんのパソコン入手が重なった1992年だから連載開始……なかなかに運命的ですね(笑)。
若木:運命的かどうかはわかりませんが、確かに印象に残る年ではありましたね。
──運命的と言えば、KADOKAWAから『16bitセンセーション』1巻が発売された翌月に、FANZA GAMESから『同級生』のリメイク版発売が発表されたんですよ。
若木:ああ、そうですよねえ。あれもリメイクする理由は何だろう?と思ったら、制作した人が『同級生』のファンだからって言うんですもんねえ(笑)。もちろん他にも理由はあるんでしょうけど、インタビューでそう言ってしまうくらい、『同級生』は当時のエロゲーユーザーにインパクトを与えた作品だったんですよねえ。
▲今年2月に発売して大ヒットした『同級生リメイク』。BugBug本誌でコミカライズも絶賛連載中!!
第2巻の鍵になるソフトは『ToHeart』
──『16bitセンセーション』第2巻の見どころといえば、どこになるでしょう。
若木:2巻は1996年から1998年までなんですが、美少女ゲームがだんだん時代の真ん中に近づいてくるところを描こうと思っていました。だってこんなに美少女ゲームが受ける時代が来るなんて、1990年代前半には思っていなかったわけですよ。その中で『新世紀エヴァンゲリヲン』があってインターネットが普及してという時代の流れの中で、知らず知らずのうちに時代の真ん中に流されていったって感覚があったと思うんですよ。どんどん勢いを増しながら変化の階段を上っていった時代で、しかもそこにDOSからWindowsへの移行も重なったわけでしょ。ものすごく重要なことが起きていた時期なんですよ。
──そんな中で美少女ゲームも大きく変わり始めていく時期ですよね。2巻の76ページのコラムで若木さんが「女の子の「ダンジョン化」~「ToHeart」が開いた現代ギャルゲー~」というコラムを書いていらっしゃいますが、これはぜひじっくり読んでほしいと思うんです。
若木:当時、DOS時代からPCゲームを遊んでいた人たちの中には、「ゲーム性のないエロゲーはゲームと言えるのか」みたいに思っていた人も多いんですよ。でも今思えば、この進化は、より美少女ゲームの制作を大変にしたわけです。だってそれまでは1作に1本のストーリーでよかったわけですよ。その中に女の子ごとのエッチがあった。でも『ToHeart』では女の子一人一人に別のストーリーがあるわけです。これがスタンダードになって、キャラの数だけストーリーが必要になったってことは、やはり作る側にとっては大変になったと思います。ただ、この進化によって、美少女ゲームのヒロインの魅力の幅が広がったのは間違いないですよね。そしてそれがのちの美少女ゲームのスタンダードになったと考えると、やはり『ToHeart』が業界に与えたインパクトは大きかったと思います。
──その意味では、1巻の鍵になるソフトが『同級生』であるのなら、第2巻は『ToHeart』ということですね。
若木:そうですね。そういう美少女ゲームの時代を感じてもらえればと思いますね。エロゲーが儲かるようになってきた時代ですからね(笑)。ここから5年くらいは右肩上がり。まだまだ行きますからね(笑)。
▲みつみ美里氏と甘露樹氏が関わったLeafの超名作『こみっくパーティー』が世に出た舞台裏も明かされる!? ちなみに作中では『こみっくパラダイス』というタイトルで登場
若木氏と美少女ゲームの出会いは『アソコン』!?
──現在、若木さんはビッグコミックスピリッツで『結婚するって、本当ですか 365 Days To The Wedding』の連載もされていますよね。その中で取材も大変な『16bitセンセーション』を同時に進めていくのは大変じゃないですか?
若木:そうですね。でも、同人誌だけじゃなく単行本も出ることで、より多くの人の目に触れることもできますからね。やっぱり、誰かが美少女ゲームを線でつながないといけないと思うんです。もちろん今までそういう企画がなかったわけではないのですが、多くはエロゲー作品を並べるだけじゃないですか。『16bitセンセーション』では、美少女ゲームの歴史と、時代性を含めた美少女ゲームという文脈を一緒に描きたいと思っているんです。
──まずます今後が楽しみになってきました。それほど美少女ゲーム愛にあふれる若木さんですが、美少女ゲームとの出会いはどこだったのでしょう?
若木:一番最初は雑誌のアソコンですよね。中学生の時のパソコンが欲しくてしょうがなくて、そんなときにアソコンを読んでエロゲー……当時もエロゲーと言っていたのかな?(笑) まあ、存在を知って、「これは絶対にやらなきゃ!」と思ったのが出会いです。そのあと、高校生になって親戚の家のパソコンで遊んだんですよね。
──最初にプレイしたゲームは覚えていますか?
若木:最初……多分『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?』(光栄マイコンシステム)だったと思います。ただ、当時はなんだかよくわからなかったんですよね。面白かったという意味では『フェアリーズレジデンス』(チャンピオンソフト)でした。
──ああ、わかります。
若木:エロゲーにハマった作品はしっかり覚えています。天津堂の『マーシャルエイジ MARTIAL AGE』ですよ。これは当時、めちゃくちゃ面白かったです。女の子の裸を見るだけなら、その前からいくらでもあったんです。でも、女の子に会うまでの経緯が楽しいというのはこの作品でした。あとは『同級生2』です。これはオープニングが素晴らしかった。ゲームが始まってタイトルが出た瞬間に、あんなに感動した作品はそれまでなかったんです。もちろん今の美少女ゲームのOPとは比較になりませんけど、あの時期にあのOPというのは本当にすごくて、「早くこの女の子たちに会いたい!」って思いましたね。
──ああ、わかる気がします。
若木:でしょう。しかも『同級生』の経験があるから、「きっともっと面白いんだ」ってワクワクして始めるんですよ。そこにあのOP。さらにスタートしてからのセーブポイントの多さ(笑)。「長く遊べそう」って言うのが、面白さの基準になっていた時代でしたからね。
▲若木民喜氏が『ビッグコミックスピリッツ』 にて連載中の『結婚するって、本当ですか: 365 Days To The Wedding』もコミックス最新刊・第5巻が11月11日に発売されたばかりだ
若木氏が今後の美少女ゲーム雑誌に期待することを直撃!!
──そんな90年代から美少女ゲームを応援しているBugBugです(笑)。ところが2021年の今、美少女ゲーム雑誌が『BugBug』と『メガストア』だけになってしまいました。
若木:いえいえ、僕はね、まだ美少女ゲームの紙媒体が残っていることがすごいと思いますよ。インターネットが情報発信のメインになってきている時代でですよ、紙媒体は情報発信速度でインターネットにはかなわないわけじゃないですか。しかもそういう時代に生き残っているのが『BugBug』と『メガストア』というね(笑)。やっぱり「エロが強い」ってことなんですね。
──確かにエロ系としてずーっと続いてきた2誌ですね。
若木:実は今、手元にBugBugがあるんですが、『奴隷姫騎士と奴隷侍女とのスローライフ』なんて、むちゃくちゃそそるじゃないですか。もう、この広告を見ただけで、BugBugを買っちゃいましたよ(笑)。実はこの原画の柾見ちえさん、Pixivで追っかけているんです(笑)。
──そうなんですね。今度Waffleさんにお伝えしておきます(笑)。若木さんが今後の美少女ゲーム雑誌に期待することなどはありますか?
若木:いやもう、生き残っているだけですごいですから、これ以上望むことはないですよ。むしろ、どうやって生き残っているのか伺いたいです(笑)。本当にすごいです。
──ではでは、今度編集長に取材できるように調整いたします。
若木:ありがとうございます。
▲第2巻ではメイ子のライバルキャラである女子大生社長も登場。身体を使って出版社に表紙や特集を捩じ込んだりも。…ウチはそんなオイシイ話、来た事ねーんですけど!?
12月3日発売のBugBug1月号では今回掲載していない若木民喜氏へのインタビューも掲載!!
新刊『16bitセンセーション 2 私とみんなが作った美少女ゲーム』についてはもちろん、当時のオタク事情や美少女ゲームへの熱い想いなどもたっぷり語ってくれた若木氏。実はインタビューではもっと色々語ってもらっていて、それ等は12月3日発売の『BugBug』1月号にて掲載予定だぞ。作中に登場する会社や人物のモデルについての話や、今後の美少女ゲームに期待する事など、美少女ゲームファンなら気になる話題が満載♪ 絶賛発売中のコミックスをジックリ読み込み、さらにディープなインタビューを楽しみにしよう!!
▲各専門店での特典にも注目。特にアニメイトのPC98風疑似ジャケットは、実際に昔のケースに入れられるという、古参ゲーマーなら懐かしくて涙がチョチョ切れるアイテムだ
▲第1巻も絶賛発売中。巻末のアリスソフトの原画家・MIN-NARAKE氏と若木氏との対談も必読!!
16bitセンセーション 2 私とみんなが作った美少女ゲーム
著:若木民喜
原案:みつみ美里(アクアプラス)、甘露樹(アクアプラス)
KADOKAWA
2021年11月6日発売
A5判、192P
紙版:1012円(税込)、電子書籍:911円(税込)











